2020 Fiscal Year Research-status Report
A research on graph watermarking via graph spread spectrum techniques
Project/Area Number |
20K04467
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
宇戸 寿幸 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (90380261)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 電子透かし / スペクトル拡散 / コンテンツ保護 / グラフ信号処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、未知であるグラフ領域におけるスペクトル拡散符号の生成法を開発することにより,グラフ信号のための電子透かし技術における情報劣化低減・頑健性向上・情報量増大を具現化し,情報ハイディング技術の中核である電子透かしの高性能化・高機能化を実現することである.つまり、本研究課題では、これまでの時系列データに対するスペクトル拡散技術から複雑な信号間関係を有するグラフ信号を対象としたスペクトル拡散技術に理論拡張し,グラフ上での「グラフ拡散符号の生成手法」および「グラフスペクトル拡散に基づくグラフ電子透かし手法」を開発することを目指している。 この目的を達成するために、本年度はスミア変換に基づくグラフ拡散符号生成技術ならびに複数ヒストグラムに基づくメッシュ電子透かし技術の研究に取り組んだ。本年度の主な成果は以下の通りである。 1)スミア変換をグラフ領域に展開したグラフ拡散符号生成法の研究開発 - グラフ信号用途のフーリエ変換であるグラフフーリエ変換を活用して、線形変換であるスミア変換をグラフ化したグラフスミア変換の生成法を提案した。本提案により閉路グラフにおいて理想的な拡散符号を生成できることを明らかにした。この研究成果をまとめた論文を国際会議にて発表した。 2)分布の異なる複数のヒストグラムに透かし情報を埋め込む三次元メッシュ電子透かし法の研究開発 - 保護対象であるメッシュモデルから複数のヒストグラムを生成して、これらヒストグラムを取捨選択し透かし情報を挿入する電子透かし法を提案した。本提案により原モデルの変形を抑制した透かし挿入が実現できることを明らかにした。この研究成果をまとめた論文を国際会議にて発表した。 さらに、関連研究として、3)暗号領域での三次元メッシュ用途の可逆データ隠蔽法、ならびに、4)画像領域分割を用いた画像電子透かし法の研究開発にも取り組んだ。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の具体的な目標は、以下の3項目を明らかにすることである。(i)鋭い自己相関関数を有するグラフ拡散符号の生成法、(ii)頂点領域での生成グラフ拡散符号の埋め込み・検出法、(iii)グラフ周波数領域での生成グラフ拡散符号の埋め込み・検出法。 本年度は、主として項目(i)および項目(ii)の研究開発に取り組んだ。まず、項目(i)に関して、これまで独自に研究していた従来手法のスミア変換を発想起点として、グラフ領域での拡散符号の生成法の研究を進めた。具体的には、スミア変換の構成要素であるフーリエ変換および遅延成分のグラフ展開を図り、グラフフーリエ変換を採用して閉路グラフ上で拡散された符号を生成する手法を開発し、理想的な自己相関関数を持つことを実証した。一方で、閉路が2つ存在する閉路グラフ上では理想的な自己相関関数を持つグラフ拡散符号を生成できず、鋭くない自己相関関数しか有しないことも実証した。そのため、研究期間の2年目以降に、グラフ領域でのスミア変換の改良を検討し、より優れた自己相関関数と拡散度合いを併せ持つグラフ拡散符号の生成法を研究開発する。つぎに、項目(ii)に関して、グラフ信号の特殊形である三次元メッシュの頂点情報のみに透かし情報を埋め込む手法を開発し、複数のヒストグラムを利用することにより画質劣化を低減できることを実証した。 以上より、研究期間の1年目に3項目の中の2項目の研究開発を推進し、その成果が得られている。そのため、おおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
前項で記述した本研究の目標3項目のうち、項目(i)と項目(ii)の2項目の研究開発を進めているが、これまでに明らかにしている点以外に望ましいグラフ拡散符号の生成法やグラフ信号向けの電子透かし法が考えられるため、継続して研究を推進する。特に、閉路が1つのみで構成される閉路グラフ以外のグラフに対する拡散符号の生成法を探求し、グラフ電子透かしに適した情報埋め込み手法・検出手法の研究を推進していく。 一方で、研究期間2年目の本年から項目(iii)のグラフ周波数領域での電子透かし法の研究開発に取り組み、透かし情報の頑健な埋め込み手法を検討する。
|
Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響により旅費や学会参加費が抑えられ、若干の次年度使用額が生じた。研究成果を発表する件数を増加する等により次年度に使用する計画である。
|