2020 Fiscal Year Research-status Report
Antenna Pattern Multiplexing Based on Fusion of Variable Directivity Antenna and Signal Multiplexing Technology
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20K04468
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
齋藤 将人 琉球大学, 工学部, 准教授 (30335476)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 指向性多重アンテナ / 受信ダイバーシチ / 多入力多出力 (MIMO) / アンテナパターン / 符号分割多重 (CDM) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,アンテナの指向性形成に信号多重の概念を取り入れた,指向性多重アンテナにより,小型でありながら,複数の指向性アンテナが同一地点に同時に設置されたかのようなアンテナの実現を目標としている.本研究で掲げるテーマである(A)指向性多重アンテナにおける指向性形成法の研究と(B) 指向性多重化を実現する印加電圧の生成と実験による指向性の検証という面で研究成果について述べる. (A)指向性多重アンテナにおける指向性形成法の研究:指向性形成法として周波数分割多重の概念を取り入れた指向性多重アンテナを用いた場合における受信信号の合成方法および同アンテナに特有の干渉信号を抑圧する手法の提案を行い,計算機シミュレーションによる特性評価を行った.提案の一つは指向性多重アンテナにより仮想的なアンテナから得られた受信信号を,合成後の信号対雑音電力比が最大となる最大比合成に基づくダイバーシチ受信法である.指向性多重アンテナにおいては,一つの仮想アンテナに干渉信号が混入すると複数の仮想アンテナに干渉成分が影響を及ぼすため,受信品質の著しい劣化につながる.もう一つの提案は,混入する干渉成分全てを抑圧する平均二乗誤差最小規範に基づく干渉抑圧法である.研究成果は論文誌で発表を行った. (B) 指向性多重化を実現する印加電圧の生成と実験による指向性の検証:理論検討で導かれたアンテナのリアクタンス波形を生成するために必要な任意信号発生器,直流安定化電源,波形を確認するためのデジタルオシロスコープなど,機器の購入等により検証実験を行う環境を整えた.また,所有するアンテナ素子に対応する,印加電圧によりリアクタンス可変である無給電素子,無給電素子に直流と任意信号電圧波形を重畳した電圧を伝送可能な重畳器をそれぞれ2組製作した.対象とする地上デジタルテレビ放送波を受信し,スペクトルを確認する等,基本的な測定を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在まで(2020年度)の進捗状況について,本研究で設定したテーマ(A)指向性多重アンテナにおける指向性形成法の研究と(B) 指向性多重化を実現する印加電圧の生成と実験による指向性の検証,に分けて述べる. (A)に関する当初の研究計画では,少数(2,3 素子)のアンテナ素子による指向性多重アンテナを対象として,符号分割多重方式でリアクタンス波形を時間変化させることにより得られる指向性の解析を行う予定であった.また,導いた指向性を形成できる印加電圧波形の導出を行う予定としていた.予定通り,2素子および3素子のアンテナ素子数の場合に,符号分割多重方式に用いる信号波形として,直交符号の一つであるHadamard符号を重畳した波形をリアクタンス波形として,得られるアンテナパターンの解析を行った.当初の予定では,3素子アンテナを用いることにより,少なくとも3種類のアンテナパターンが得られることを想定していたが,現状検討した限りでは,2種類のパターンしか得られないことが分かった. (B)に関する当初の研究計画では,理論検討で導いた波形を指向性多重アンテナに適用し,想定された多重アンテナパターンとどの程度類似しているかを観測可能な実験環境を整えることを一つの達成目標としていた.電圧波形生成を行う任意信号発生器および直流安定化電源を用意することができ,印加電圧波形を確認するための,デジタルオシロスコープも導入した.指向性多重アンテナを構成する無給電素子と素子に直流と周期電圧波形を重畳した電圧波形を加える重畳器を新たに2組作製した.以上のように,実験・測定環境を整える所までが本年度の進捗である.進度が早ければ,作製した素子の動作確認を行い,スペクトルアナライザを用いて,印加電圧と形成されるアンテナパターンとの関係について検証を行うのであるが,そこまでは進めることができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
先に述べた現在までの進捗状況を踏まえて,今後の研究推進方策について述べる.本研究で設定したテーマ(A)指向性多重アンテナにおける指向性形成法の研究と(B) 指向性多重化を実現する印加電圧の生成と実験による指向性の検証,に分けて示す. (A)に関する今年度の検討では,現在の所,符号分割多重に基づく方法では,予想を下回るアンテナパターンしか得られないことが分かった.この点について,電磁界解析や指向性の計算プログラムの検証を行う必要がある.その上で,リアクタンス波形と生成されるアンテナパターンとの関係をより深く理解することが必要となる.そのためにも,現在検討しているHadamard符号とは異なる直交符号や準直交符号を用いた検討,符号を構成するパルス波形や受信機で用いるフィルタ形状,受信信号のサンプリングに関する検討,重畳する際における波形の変調法など,について網羅的に検討する.これらの検討で良い成果が得られない場合には,従来法である周波数分割多重法をより発展させる方向性について検討する. (B)に関して今年度は,測定実験を行う環境を整えるところまで実施した.今後は,はじめに,作製した無給電素子と重畳器が正しく動作しているか,動作検証を行う.正しく動作していない場合,原因を確かめ,修理を行う.無給電素子と給電素子を用いて,地上デジタル放送波を受信し,スペクトルアナライザを用いて指向性変化の確認を行う.任意信号発生器について,計算機上でデザインした波形を実際の電圧として出力する方法を習得し,理論検討で得られたリアクタンス波形を実現する方法を確立する.指向性多重アンテナをソフトウェア受信機に接続し,受信信号を取り込み,受信信号処理を施すことにより,多重された各指向性により得られる受信信号間の直交性を解析し,実際に得られる指向性の多重度を測定する.
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Causes of Carryover |
当初利用を予定していた旅費の支出が無かったため,予定以上に物品購入を行ったことから端数が発生したため. 次年度は,消耗品等の購入に割り当てる予定である.
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