2020 Fiscal Year Research-status Report
放射・散乱制御のための給電系および放射系の多周波数帯共用化に関する研究
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20K04475
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
出口 博之 同志社大学, 理工学部, 教授 (80329953)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ホーンアンテナ / 反射鏡アンテナ / リフレクトアレーアンテナ / トランスミットアレーアンテナ / 周期境界条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
多周波数帯直交偏波共用アンテナの利得を最も高くし得る最適な一次放射器として,突起付きグルーブを装荷したホーンを提案し,8 GHz帯と26 GHz帯を共用するホーンアンテナを設計して軸対称で低交差偏波な放射特性が両帯域で得られることを確認している.ホーン内部の突起を境に,喉元側のホーン構造によって主に高域側のモードが制御され,開口面側への回り込みが低減されている.一方,開口面側の構造によって低域側のモードが制御され,喉元側では高次モードの発生が抑圧され,その結果,両帯域の構造最適化が効率的に行われている.設計したホーンアンテナの有効性は,開口面分布および放射特性の主偏波・交差偏波成分の広帯域な評価によって検証している.また,リフレクトアレーアンテナにおける新たな多周波数帯共用化として,偏波変換機能を併せ持つリフレクトアレー素子とオメガ型リフレクトアレー素子を融合させた単位セルの構成法について検討し,27 GHz帯および33 GHz帯で良好な放射特性が得られるリフレクトアレーアンテナを開発している.さらに,トランスミットアレーアンテナにおける2帯域の共用化についても検討を加えており,リング共振素子と半波長共振素子を混在させた単位セルの構成法について提案している.素子間隔を一定とし,低域側ではストリップ導体1波長リング共振素子,高域側ではそのリング内部に配置したストリップ導体半波長共振素子を動作させ,地導体のスロットを介して受信側と送信側のこれらストリップ導体を各々,結合共振させている.設計例として,13 GHz帯と30 GHz帯の2帯域で動作するトランスミットアレー素子を開発し,これを基にして設計したトランスミットアレーアンテナの開口面分布(振幅、位相)ならびに遠方放射特性の評価によって提案するトランスミットアレーの有効性を検証している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・現在までの進捗状況(最大800文字): 給電系の周波数共用のための検討としては,反射鏡アンテナの給電系として用いる1次ホーンについて取り上げ,周波数が非常に離れた2つの帯域を共用化するための検討を行い,新たなホーンの構造を見出している.これにより,8 GHz帯と26 GHz帯を共用する低交差偏波特性を有する同軸突起付きグルーブを装荷したホーンを開発している.そして,電磁界シミュレーションによる詳細な検討によって,良好な特性が得られることを確認している.また,放射系の周波数共用のための検討としては,リフレクトアレーアンテナならびにトランスミットアレーアンテナを取り上げ,アレー素子の構成法について各々,検討している.両者ともに,これまでは一つの周波数帯域に対する広帯域化の研究がほとんどであり,周波数が非常に離れた場合には設計が困難であった.そこで,本研究では,このような課題を克服するため,新たなアレー素子について各々,検討を加えている.リフレクトアレーアンテナについては,広帯域な特性をもつ直交偏波変換クロス型素子ならびにオメガ型共振素子を用いて偏波切り替え機能を有するアンテナを開発し,2帯域共用特性だけでなく偏波特性も制御する方法について提案している.また,トランスミットアレーアンテナについては,リング共振素子と半波長共振素子を単位セルとする構成法を開発し,これについても2帯域化している.両者ともに,数値的な検討に加えて,試作したアンテナの実験的な検討によって,提案するアンテナの有用性を検証している.このように給電系ならびに放射系の両方に対して多周波数共用化の初期検討を行い,計画通りの研究成果が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
給電系の周波数共用のための検討としては,反射鏡アンテナの一次放射器として用いるホーンアンテナについて引き続き検討を行い,昨年度検討した2帯域共用から今後,多周波数共用化へと性能向上を図っていく.また,新たな検討として,リフレクトアレーアンテナの給電系として用いる1次ホーンアンテナについて取り上げ,リフレクトアレーの周波数特性を考慮して位相中心を制御するこれまでにない多モード一次ホーンの検討を行う.反射鏡は非常に広帯域なため,一次パターンの位相中心は周波数によって変化しないことが求められるが,オフセットリフレクトアレーでは利得低下の大きな要因として波面収差の問題があり,これを取り除くための検討を行っていく.放射系の周波数共用のための検討としては,多周波数共用のためのリフレクトアレー素子の最適化設計について検討を加えていく.例えば,低域側の帯域と高域側の周波数がn倍以上離れた場合,1:nの大きさの異なる2種類のアレー素子を配列する設計法を検討していく.つまり,帯域毎に主として動作する素子を考え,これらを混在して素子配列しようということであるが,そのときに生じる相互結合も考慮して各々の帯域の性能を抑えた最適化が必要となる.もう一つの方法は,開口面上の所定の位置,および全ての設計周波数において理想の反射位相の値を実現する任意形状アレー素子の最適化が考えられ,多周波数共用の実現に向けた検討を行っていく.
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Causes of Carryover |
設計したアンテナの制作料が想定した額とわずかに異なったため,次年度使用額(B-A)360円が生じた. R3年度は,ホーンアンテナ,リフレクトアレーアンテナ,トランスミットアレーアンテナの試作料として300,360円,研究成果を発表し,さらなる発展を目指して国内の専門家と本研究および関連する最新技術について議論するため学会に参加する旅費として160,000円,実験の補助,実験データの整理等,本学大学院博士課程(前期課程)の大学院生による研究補助の謝金(4人×7日)として140,000円,米国電気・電子工学技術者協会(IEEE)アンテナ・伝播国際会議(APS),電子情報通信学会アンテナ・伝播 国際会議(ISAP)等への学会参加費として,150,000円,その他(通信費,印刷費,研究成果投稿料)として50,000円,合計700,000円+360円=700,360円を計画している.
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