2021 Fiscal Year Research-status Report
放射・散乱制御のための給電系および放射系の多周波数帯共用化に関する研究
Project/Area Number |
20K04475
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
出口 博之 同志社大学, 理工学部, 教授 (80329953)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ホーンアンテナ / 反射鏡アンテナ / リフレクトアレーアンテナ / トランスミットアレーアンテナ / 周波数選択膜 / 周期境界条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
円形導波菅給電ホーンの多周波数共用化の検討として,12/14GHz帯,20/30GHz帯の両方で交差偏波成分を低くして回転対称な主ビームを得るため,低域側の周波数帯では主に通常の同軸グルーブ,高域側の周波数帯ではリングを装荷した特殊な形状の同軸グルーブによって各々,高次モードを制御する方法を提案している.電磁界シミュレーションによる検討の結果,ホーンの喉元側の同軸グルーブにリングを装荷すれば,高い周波数帯である30GHz帯で放射特性が改善できることを見出し,全体形状を最適化設計したところ,12/14/20/30GHz帯で良好な放射特性が得られ,円形導波菅給電ホーンの周波数共用化の見通しが得られた.また,誘電体を用いたホーンアンテナの多周波数共用化の検討として,ホーン内部に誘電体O-ガイドを構成するための電体チューブを装荷したホーンを提案している.12/14/20/30GHz帯を共用する誘電体チューブを装荷した低交差偏波ホーンを設計し,誘電体チューブがない場合では12/14/20GHz帯で動作し,誘電体チューブを装荷した場合には30GHz帯も含む所定の全帯域で良好な放射特性が得られることを開口面分布および放射特性の主偏波・交差偏波成分の広帯域な評価によって検証している.さらに,任意形状素子を用いた単層リフレクトアレーの多周波数帯共用化の検討として,14GHzから20GHzの周波数帯域と30GHz帯を共用する任意形状素子を提案し,これらの素子を用いて構成した単層リフレクトアレーを設計している.設計したリフレクトアレーアンテナの放射特性の評価によって低域側の帯域外である12GHz帯でも良好に動作することを確認し,本アンテナの有効性を検証している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
溝の方向が導波菅の管壁に垂直な通常のコルゲートホーンでは,コルゲート溝を見た入力アドミタンスが容量性となる周波数範囲を拡大させるためコルゲート溝にリングを装荷する場合があるが,本研究では従来とは異なり周波数の大きく離れた帯域で高次モードをより正確に制御するため,同軸グルーブにリングを装荷している.4段同軸グルーブホーンにおいてリングを装荷していない場合には,20/30GHz帯,あるいは12/14/20GHz帯の共用化までが限界であることを明らかにするとともに,リングを装荷することで周波数特性が改善できることを確認している.また,誘電体O-ガイドによって導波される電磁界分布は,誘電体内部だけでなく外部にも拡がりをもつため,位相分布が一様となる開口面分布を形成することができ,その際,誘電体の厚みは比較的薄い場合に良好な特性が得られることを確認している.そして,ホーン内壁の内径に比べてこの誘電体O-ガイドの内径を小さくとれば,主に高域側の周波数帯で動作させることができ,低域側の周波数帯では誘電体O-ガイドの内径は波長に比べて十分小さくなるため,誘電体O-ガイドのないホーンとしてほぼ動作させることができる.したがって,誘電体チューブを装荷していない構造で交差偏波成分の低減を図り,次に誘電体チューブを装荷して所定の全周波数帯に対して最適化を行えば,動作周波数帯の拡張が可能である.さらに,広帯域な一つの周波数帯域と,大きく高域側に離れた周波数帯域を考え,デュアルバンドで動作させる新たな単位セルの素子形状を検討している.このとき,広帯域な周波数範囲では直線的な反射位相特性を考え,大きく離れた周波数帯域では独立に任意の反射位相特性が得られる最適化設計を行い,リフレクトアレーアンテナを構成したところ,所定の複数の周波数帯域で良好な放射特性が得られることを数値的・実験的に検証している.
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Strategy for Future Research Activity |
開口面アンテナの給電系の多周波数共用化の検討として,一次放射器として用いるホーンアンテナの多周波数帯での設計を引き続き行なっていくが,良好な1次パターンを達成することに加えて,焦点位置の周波数特性の検討も行い,位相誤差を抑えた特性が得られるように考えていく.さらに,非常に離れた設計周波数帯に対する検討として,ホーンの全体的なプロファイルによって低域側の特性を制御し,ホーン内壁表面の不連続部の形状によって非常に離れた高域側の特性を制御することを考えており,このような特性を制御するために重要となるのは,基本モードからいかに所望の高次モードを励振できるかにかかっており,精度の良い電磁界解析を基にして多モードの最適化を行なっていく.また,アンテナ開口面を構成するリフレクトアレーの多周波数共用化の検討として,配列する単位セルの最適化設計を引き続き行なっていくが,さらにレンズのように透過波を放射させるトランスミットアレーについても取り上げ,多周波数共用のための単位セル形状を検討していく.両者ともに,多周波数共用化で達成すべき特性は,直交偏波の共用,交差偏波成分の低減の他に,直交偏波変換の検討も考えており,複数のシステムを共用化するときの設計の自由度を高くできる.さらに,直交する偏波を独立に制御する検討を行い,新たなマルチビームアンテナの実現を目指していきたい.先に単一周波数帯においては直交する偏波を独立に制御できることを確認しているが,複数の周波数帯への応用を検討したところ,リフレクトアレー素子における高調波電流成分によって特性劣化が見られ,このような不要電流成分の抑圧は今後の課題である.今後,多周波数帯で独立に偏波を制御する単位セルが得られれば,複数の周波数帯でも異なる位置に複数の焦点を持たせたアンテナの設計が可能となり,アレー給電系の新たな構成法の検討も行えることになる.
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Causes of Carryover |
アンテナの製作費用が予算支出計画の算出において,わずかな差異じたため,次年度使用額が生じた.次年度,試作アンテナの制作費用の一部として使用する.
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