2023 Fiscal Year Research-status Report
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20K04494
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
三好 誠司 関西大学, システム理工学部, 教授 (10270307)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 統計力学 / 信号処理 / 適応信号処理 / 飽和特性 / 不感帯特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者はこれまでに適応フィルタの出力が飽和特性や不感帯特性を有するような適応信号処理システムの動的・静的ふるまいについて統計力学的手法を用いた解析を行ってきた。2023年度は、まず、飽和特性と不感帯特性を組み合わせた飽和不感帯特性を導入し、適応フィルタがこの飽和不感帯特性を有する場合の適応信号処理システムのふるまいについて理論的に調べた。適応フィルタが飽和特性を有する場合にはその飽和値に臨界値が存在し、飽和値が臨界値より小さい場合には適応フィルタは発散するが二乗平均誤差はステップサイズに依存しない値に収束すること、など興味深い多くの現象が理論的に明らかにされているが、飽和不感帯の場合にも臨界値が存在し、その値がちょうど不感帯の幅だけシフトすることを解析的に明らかにした。次に、適応フィルタの出力と未知システムの出力の両方に不感帯特性が存在する場合についても解析を行った。この場合には解析の過程で厳密に実行できない二重積分が現れるが、これを数値的に実行することにより、二乗平均誤差の動的ふるまい、すなわち学習曲線を求めた。計算機実験と比較したところ、適応過程の初期においては理論は計算機実験の結果を予測できるが、その後は大きな不一致が生じてしまうことが明らかになった。これは二重積分の数値的な精度によるものと考えられる。さらに、未知システムの出力に不感帯特性を有する適応信号処理システムの解析も行った。これは音響エコーキャンセラのスピーカがB級プッシュプル増幅器で駆動されるモデルに対応する。統計力学的な解析の結果、不感帯の幅が小さい場合や大きい場合には二乗平均誤差は小さくなることが明らかになり、二乗平均誤差を最大にする不感帯幅を求めるself-consitentな方程式を導出することにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、飽和特性や不感帯特性などの非線形性を含む適応信号処理システムのふるまいを統計力学的手法を用いて網羅的に明らかにすることを目標としている。2023年度は適応フィルタが飽和不感帯特性を有する場合の適応信号処理システムのふるまいについて解析し、特に、飽和不感帯の場合にも臨界値が存在し、その値がちょうど不感帯の幅だけシフトすることなど興味深い性質を明らかにできた。また、適応フィルタの出力と未知システムの出力の両方に不感帯特性が存在する場合についても適応過程の初期においては計算機実験の結果を予測できる理論を導出することができた。さらに、未知システムの出力に不感帯特性を有する適応信号処理システムの解析も行い、不感帯の幅が小さい場合や大きい場合には二乗平均誤差は小さくなることを明らかにすることができた。以上より、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで適応フィルタ出力部に飽和特性、不感帯特性、飽和不感帯特性が存在する場合、未知システム出力部に不感帯特性が存在する場合、適応フィルタ出力部と未知システム出力部の両方に不感帯特性が存在する場合などの解析を行ってきた。その際に用いられた解析手法は適応フィルタ出力部と未知システム出力部の両方に飽和特性が存在する場合や未知システム出力部に飽和特性が存在する場合にも適用できる可能性がある。さらには、これらの非線形性を組み合わせた非線形性が適応フィルタや未知システムいずれかの出力部、あるいは両方の出力部に存在する場合も解析できる可能性がある。これらの新しい取り組みにおいては解析的な計算が困難になることも予想されるが、その場合には数値的な計算をうまく利用することにより困難を克服できる可能性がある。今後はこれらの解析計算、数値計算を網羅的に行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:学内経費等の有効活用により、物品費を使用する必要がなくなった。 使用計画:2024年6月に新潟、同年12月に札幌、盛岡で開催される国内学会で成果の発表を行うための旅費として使用する予定である。
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Research Products
(20 results)