2020 Fiscal Year Research-status Report
Inductive Coupling Estimation System Using Loop Current Model of Mounted Circuit Components
Project/Area Number |
20K04497
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
室賀 翔 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (60633378)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 電磁環境工学 / 近傍磁界計測 / 誘導結合 / クロストーク / 等価回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
プリント回路基板(PCB)の薄型・高密度化,高速・多周波数動作化に伴い,高周波素子や配線同士が電磁気的に結合しやすくなり,意図しない経路が各所で形成されている。その結果,誤動作や感度抑圧が発生している。本研究では,実装状態の素子や配線間の意図しない磁気結合を測定により把握するシステムの開発を目的とする。まず,実装状態の高周波回路素子,配線のインピーダンスおよび近傍磁界の同時測定を通して,各素子,配線の等価ループ電流モデルを構築する手法を検討する。ここで,等価ループ電流モデルは,素子,配線を流れる電流とグラウンドを流れるリターン電流から成る。次に,各素子,配線のループ電流モデル間の磁気結合の算出を通して,素子,配線間の相互インダクタンスを推定する手法を検討する。精確なループ電流モデルの構築のため,機械学習の利用を検討する。測定対象をマイクロストリップ線路として,システムのメソドロジを検証し,その後,実デバイスを模擬した受動,能動素子への適用可能性を検討する。 令和2年度は,測定対象を平行2導体マイクロストリップ線路(MSL)として,提案するシステムのコンセプトを検証した。平行2導体MSLのインピーダンスと近傍磁界の同時測定を通して,各MSLの等価ループ電流モデルを構築した。ただし,MSLの信号線幅および長さは既知とした。ループの方向は,MSLの幅方向の磁界強度分布を2次元マップ化し,そのマップから抽出したHOG(Histograms of Oriented Gradients)特徴量を用いてSVM(Support Vector Machine)を通して推定できる可能性を示した。さらにループ間の相互インダクタンスを算出することにより,MSL間の誘導結合を推定可能であることを実証し,提案するシステムのコンセプトの妥当性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は,測定対象を平行2導体マイクロストリップ線路(MSL)として,提案するシステムのコンセプトを検証した。 まず,平行2導体MSLのインピーダンスと近傍磁界の同時測定を通して,各MSLの等価ループ電流モデルを構築した。ただし,MSLの信号線幅および長さは既知とした。具体的には,近傍磁界およびSパラメータの測定結果から,各MSLを等価ループ電流モデルに置き換えた。等価ループ間の相互インダクタンスを算出し,誘導結合を推定した。推定結果を用いて平行2導体MSLの等価回路を構築し,回路解析によりSパラメータを計算した。算出結果は測定値とおおよそ一致した。以上より,ループ電流モデルを用いた誘導結合の推定および等価回路の構築が可能であることを実験的に示した。 次に,等価ループ電流モデル構築のために必要なパラメータ抽出のため,機械学習の利用を検討した。MSLの幅方向の磁界強度分布を2次元マップ化し,そのマップから抽出したHOG(Histograms of Oriented Gradients)特徴量を用いてSVM(Support Vector Machine)を実施することにより,ループの方向を推定できる可能性を示した。 さらに,ループ間の相互インダクタンスを算出することにより,MSL間の誘導結合を推定可能であることを実証し,提案するシステムのコンセプトの妥当性を示した。ただし,この検討では,相互インダクタンス推定のために,MSLの一部の寸法を既知として利用しており,測定を通したパラメータ抽出が今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は,等価ループ電流間の相互インダクタンス推定手法の確立を目指す。評価対象は単純な平行2導体マイクロストリップ線路(MSL)とし,MSLのループ電流モデル化を通してMSL間の相互インダクタンスを推定する手法を検討する。 まず,コイル型磁界プローブを用いて取得した1本のMSLの近傍磁界情報の機械学習を実施し,MSLを等価ループ電流モデル化するためのパラメータの抽出手法を検討する。ループ電流は,信号線を流れる電流とグラウンドを流れるリターン電流から成り,ループの方向,位置,大きさおよび巻数のパラメータをもつ。機械学習は,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)等を利用し,教師データは理論値とする。MSLの近傍磁界計測の測定値と,推定モデルの磁界分布を比較することによりその妥当性を検討する。 次に,MSLの近傍磁界計測のスキャン範囲および分解能と,ループ電流モデルの推定精度の関係の明確化を通して測定の簡便化および短時間化を検討する。平行2導体MSLの相互インダクタンスを推定し,測定値との比較によりその妥当性を検討する。 さらに,推定手法を用いて複数のMSL間の相互インダクタンスを推定し,測定値との比較によりその妥当性を検討する。磁界検出用プローブの位置や角度のずれに伴う測定ばらつきやプローブやケーブル等からの電磁結合の影響を明らかにし,精度向上のために測定系を改善する。
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Causes of Carryover |
当初購入予定であったマイクロ波システムアンプと同等の性能の安価な装置を購入したため,また,コロナの影響により旅費が発生せず学会も一部中止となったために次年度使用予算が生じた。引き続きコロナの影響が予想され,一部の実験が実施できない可能性がある。また,成果発表のための旅費も使用しない可能性もあり,本予算は令和3年度に電磁界シミュレータ環境構築のために利用する予定である。
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Research Products
(4 results)