2021 Fiscal Year Research-status Report
脂質高分子膜を用いた味の時間的相互作用検出を可能とするマイクロ流体デバイスの開発
Project/Area Number |
20K04502
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
田原 祐助 信州大学, 学術研究院繊維学系, 助教 (80585927)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 味覚センサ / 味の経時変化 / 吸着 / マイクロ流路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,官能試験でしか評価できない味強度の時間変化を数値化するために,味物質の受容部として脂質高分子膜を用いたマイクロ流路型新規味覚センサの開発を目指すものである.味の時間変化を検出するために,味物質との静電相互作用や疎水性相互作用を引き起こす複数の脂質高分子膜と,味溶液をパルス状に送液することで膜との吸脱着時間プロファイルを膜電位変化から計測可能なマイクロ流路デバイスを開発する。本年度は昨年度に引き続き,マイクロ流路デバイスの最適化を行った。脂質高分子膜組成のポリ塩化ビニルの重合度が異なる膜のインピーダンス計測を実施した。また,昨年度に試作したマイクロ流路デバイスを用い,渋味用の脂質高分子膜を用いたタンニン酸溶液の測定を実施したところ,従来の味覚センサと同様の膜電位変化の計測に成功した。しかし,測定中に気泡が脂質高分子膜付近にたまってしまうことが原因で安定性,再現性が低いという結果となった。そこで,流路構造を大幅に変更することで解決を試みた。これまでは円形の脂質高分子膜の中心軸上に,膜の上側に参照電極を,下側に流路を配置する構造であった。参照電極の配置を,液絡を介することで膜の中心軸上から大きく横にずらすように配置した。これにより気泡の除去に成功し,安定した測定をすることが可能となった。また,タンニン酸に対する脂質高分子の経時的な膜電位変化を検出することに成功した。したがって,マイクロ流路型味覚センサの有用性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は,「やや遅れている」としたが,本年度の成果によってセンサの測定の安定性が大幅に改善されたため,当初の予定する進捗状況まで進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,引き続きマイクロ流路デバイスの最適化を行う。脂質高分子膜の味物質の吸脱着プロファイルを獲得するために,ソレノイドバルブを用い,サンプル溶液のパルス状のインジェクションを行っていく。また,標準サンプル測定から実サンプル測定へ移行する。サンプル候補は,コーヒーやワインといった人間が味の余韻を感じやすいものを用いる。また,統計解析により官能との相関を得られることを目指す。
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Causes of Carryover |
レーザー加工機を2020年度に購入することを予定していたが,学内の装置を利用することとした。その予算を本年度の物品費として電極や流路設計の改造に使用した。残りの繰り越し予算は,次年度のソレノイドバルブや送液ポンプの購入に充てる。
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Research Products
(3 results)