2020 Fiscal Year Research-status Report
Construction of high-speed magnetic property evaluation system under inverter excitation for high-speed high-power density motor core
Project/Area Number |
20K04509
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Research Institution | Nippon Bunri University |
Principal Investigator |
岡 茂八郎 日本文理大学, 工学部, 特任教授 (80107838)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 鉄損 / ステータコア / 電磁鋼板 / インバータ / PWM / 高調波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,以下について主に研究を行った。第一に,市販の汎用PWMインバータを用いて各種電磁鋼板で作られたリングコアのPWM励磁下の磁気特性を測定し,開発予定の高速PWMインバータの磁気特性測定に必要な追加すべき要件を把握した。極薄電磁鋼板製リングコアなどのPWM励磁下の磁気特性測定結果は,令和2年9月のICEM2020(スエーデン)において報告した。また,変調率の広い範囲で正確,かつ,低ノイズで励磁電流を測定するためにはカレントトランス型の電流計が必要であることもこれまでの実験から分かった。第二に,電磁鋼板等の磁気特性測定用に特化した高速単相PWMインバータを製作するための基本回路の検討・試作を行った。検討した基本回路は,①Hブリッジのスイッチングデバイス,②スイッチングデバイスのゲート信号作成方法などである。スイッチングデバイスは,高速IGBT,Si-MOS,SiC-MOSの3種を検討し,高速IGBTを用いた単相PWMインバータのHブリッジを試作した。また,Si_MOSあるいはSiC-MOSを用いたHブリッジは試作・評価中である。ゲート信号発生回路は,ファンクションジェネレータとコンパレータを用いる方法とディレイパターンジェネレータを用いる方法を検討しているが,最終的な高速単相PWMインバータ励磁装置にはゲート信号の作成の自由度からディレイパターンジェネレータを用いる予定である。第三に,実機の形状をしたアウターロータ型永久磁石直流ブラシレスモータ用ステータコアの磁気特性を測定する際の励磁手法である励磁コイル法と励磁巻き線法の試作・評価を行った。このステータコアの磁気特性を励磁コイル法と励磁巻き線法を用いて測定した結果は,令和2年12月のMAGDA29 in 大津と令和3年4月の電気学会マグネティクス研究会(Web)で報告した。以上が,本年度の研究実績の概要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記評価の理由は,第一に,現有のPWMインバータを用いて本課題で開発しようとしている高速磁気特性評価装置用の高速単相PWMインバータに要求される仕様を明確にし,それを実現する方法を設計・試作したことである。それらから得られた成果は,①目標としている変調周波数fm>1kHz, キャリア周波数fc>100kHzを満足するにはSiC-MOSを使用することが必要であり,②汎用性のある磁気特性測定装置とするためには柔軟なゲート信号を作成できる専用のゲート信号発生装置であるディレイパターンジェネレータを用いる必要があることが分かったことである。そのために,SiC-MOSを用いたHブリッジ部やゲート信号のレベルシフト部および,ディレイパターンジェネレータとのインターフェイス部の設計を終え製作中である。これらの電子回路は,SiC-MOS 以外のIGBTやSi-MOSを用いたHブリッジに付いても十分な予備実験を行ったうえで設計した。さらに,現有の磁気特性評価装置にディレイパターンジェネレータを組み込む駆動プログラムを製作中である。これらの進行状況から,高速磁気特性評価装置用の高速単相PWMインバータの開発はおおむね順調である。第二に,高速PWMインバータ励磁下の高速磁気特性評価装置を用いた高速高パワー密度モータステータコアの磁気特性評価に必須な,励磁コイル法と励磁巻線法を開発・評価し,正弦波励磁下での評価結果を学会や研究会で報告したことである。両手法はアウターロータ型永久磁石直流ブラシレスモータ用ステータコアの周方向の磁気特性へのかしめ,ボルト穴,圧延方向等の影響を明確に把握することができ,ステータコアのビルディングファクターの改善に資することができることが分かった。この励磁法の開発に関する研究も順調に進行している。以上の様に本研究はおおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は,高速PWMインバータ励磁部用のSiC-MOS 型Hブリッジ部の試作,ゲート信号作成用のディレイパターンジェネレータとのインターフェイス部の試作,および,駆動プログラムの改良を行った。しかし,この新規に試作した装置を使用して各種電磁鋼板のリングコアやステータコアを対象にしての新開発の装置の性能評価はできていない。そのため,令和3年度は,第一に,この装置を使用して実際の電磁鋼板の高速PWMインバータ励磁下の磁気特性評価を行いたいと考えている。さらに,高速PWMインバータ励磁下の高速磁気特性評価装置のさらなる改良, 特に,早い変調周波数やキャリア周波数に対応できることを主眼にして改良したいと考えている。その実現のために,高速PWMインバータ励磁下での正確な励磁電流を測定するためのカレントトランスの選定と購入を行い,装置の機能の向上を図りたいと考えている。これらによって,広い変調周波数fm>1kHz,キャリア周波数fc>200kHz,変調率0<m<1,Hブリッジ部の電源電圧などの励磁条件をプログラムで任意条件下での磁気特性評価ができる装置を製作する予定である。第二には,令和2年度に行ったアウターロータ型永久磁石直流ブラシレスモータ用ステータコア用の励磁巻線法を改良し,既存の励磁巻き線を利用する励磁法を開発したいと考えている。それは,ステータコアの外周にリング状の磁路形成用コアを設置し,既存の励磁巻き線を利用し,ステータコアの磁気特性を評価する方法である。これによって,モータ製造時の品質管理に利用できるように機能を拡張したいと考えている。第三に,近年のモータはさらに高速高パワー密度化しているため,これに対応した高速PWインバータとするためにGaNを用いたパワー素子も検討・試作する予定である。さらに,国内や国外の学会に積極的に参加し情報収集に努めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2019年12月に発生した新型コロナウイルスの全世界的な流行のため、国内外の学会や研究会などが中止、あるいは、Web会議となり旅費への支出がなくなったために、多くの未使用額が残った。 次年度使用金については,来年度もさらに研究を進展させるために必要なハードウエアの購入,および,資料収集のための学会参加や会議出席のために使用したいと考えている。
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