2020 Fiscal Year Research-status Report
ミリ波帯における自由空間法の測定精度を決める要因の解明
Project/Area Number |
20K04514
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
平山 浩一 北見工業大学, 工学部, 教授 (30218820)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自由空間法 / 電磁ホーンアンテナ / 誘電体レンズ / ガウス形ビーム |
Outline of Annual Research Achievements |
材料の電気的定数である誘電率及び透磁率を測定する方法として、自由空間法はシート状試料の電気的定数を測定する方法として、非常にシンプルな測定法である。シート状試料に垂直に電波を入射させ、その反射係数と透過係数の測定から試料の誘電率と透磁率を決定する。試料はシート状で、ある程度(数波長以上)の大きさがあれば特定の寸法に加工する必要もなく、理論的にも実験的にも大変利点が多い。自由空間法は、ミリ波帯のように極めて高い周波数でも有効な測定法で、測定系が小型化されることが想定されるなど、むしろ実際の測定が容易になることが予想できる。しかしながら、測定法としては大変利用しやすい一方で、自由空間法は材料定数測定法としてはSパラメータ法の中でも比較的精度の低い測定法になっている。 本研究では、自由空間法に利点が多い一方で、他の測定法では測定が難しくなるミリ波帯、特に自動車用ミリ波レーダの動作周波数帯である75~80GHzに絞り、自由空間法の実際の測定系における電波の伝搬について理論的に詳細に検討し、自由空間法による材料定数測定の推定精度を決める要因を解明することで、推定精度の向上を図ることを目的としている。令和2年度においては、自由空間法の測定系における電波の振る舞いを詳細に検討した。具体的には電磁界解析を用いて、自由空間法における試料近傍での電磁界分布に関して、試料近傍で電磁界が誘電体レンズによってどの程度に収束されているか、焦点位置と試料位置との関係、およびレンズと試料による多重反射の状態を詳細に調べ、推定精度向上に必要と考えられる基礎的データを収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自由空間法の推定精度に関わる主な要因として、「電波のビーム伝搬特性」、「誘電体レンズの収束特性」、「レンズと試料との間での多重反射」があげられると想定している。 申請者の予備的な検討では、基本的なガウス形ビームとは形態の異なる高次のガウス形ビームも電力にして10 %以上含まれていることを見出すことができている。このことを踏まえ、自由空間法の測定系における電波の振る舞いを詳細に検討し、これが自由空間法における材料定数の推定精度に関する寄与を詳細に検討するものとする。 令和2年度においては、電磁界解析を用いて自由空間法における試料近傍での電磁界分布に関して、電波のビームの伝搬状態、誘電体レンズによる試料近傍での電磁界の収束状態、およびレンズと試料による多重反射の状態を詳細に調べて、推定精度向上に必要と考えられる基礎的データを収集することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者はマイクロ波回路の設計において、回路内の誘電体や導体の形状設計を、電磁界解析を利用した最適設計法を開発してきており、今後は電磁ホーン及び誘電体レンズを設計することで、自由空間法における推定精度の向上に関する検討を行う。 通常の円錐型電磁ホーンアンテナでは、形態の異なるビームの重ね合わせで構成されているが、電磁ホーンアンテナの形状を最適設計して、円形に近いガウス形放射ビームを作れることが報告されている。この設計方法に注目して、自由空間法に適するように、広帯域に良好な特性を有する誘電体レンズ付き電磁ホーンアンテナを設計し、自由空間法の精度向上を図る。誘電体レンズの形状を調整し、70GHz 帯で焦点距離が変わらないように設計する。電磁ホーン及び誘電体レンズの変更を合わせて、総合的に自由空間法における材料定数測定の推定精度を評価する。
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Causes of Carryover |
本研究課題で利用予定のソフトウェアの一部(MATLAB)に対して、大学全体でライセンス契約したことに伴い、負担が軽減されたため。令和2年度に購入したワークステーションの周辺機器を購入するために使用する予定である。
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