2021 Fiscal Year Research-status Report
ハイパースペクトルイメージングのための最適波長制御技術の研究
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20K04520
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
大寺 康夫 富山県立大学, 工学部, 教授 (20292295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高屋 智久 富山県立大学, 工学部, 准教授 (70466796)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マルチスペクトル・イメージング / マルチスペクトル・フィルタアレイ / フォトニック結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
開発したセンサの原画像からマルチスペクトル情報を抽出するために、以下に示す3つの手法を検討した。 ①マルチスペクトル・フィルタアレイ固有の透過スペクトルを考慮した色再現手法の検討。本研究では可視~近赤外波長域において到来スペクトルを正確に識別できるデバイスの実現を目指しているが、その前段階として、可視域に波長を限定して撮影した画像に機械学習を施すことで、RGBの色再現を試みる実験を行った。センサの波長依存性が鋭敏になることから、画素毎に推定モデルを構築した方が、推定性能の改善に繋がることを見出した。 ②吸光スペクトルの直接推定の検討。センサの輝度値と対象物体の吸光度とは本来非線形の関係にある。この関係を推定するのに、A)カーネル回帰分析を利用した直接非線形推定と、B)線形推定で反射スペクトルを推定した後に非線形変換で吸光度を求める手法2通りの手法を、果物を例にとって検討した。その結果、後者が精度的に有利であることを見出した。 ③センササイド分析の検討。対象スペクトルの推定を行わず、9~25チャンネルのセンサ出力に主成分分析を施して到来スペクトルの違いを検出することを試みた。自然物体の場合、反射スペクトルの主成分は高々6~8程度であることが先行研究であることが知られており、また本研究のマルチスペクトル・フィルタアレイの各チャンネルのスペクトル自由度は十分にこの数を上回ることが確認できたからである。人の肌を例に取り、血流によるスペクトル変化の前後での画像を撮影して解析したところ、低次主成分スコアが血流状態に応じて増減すること、安静時との差を明瞭に検出できることを実証した。 なお2021年度はコロナ禍の影響により県外機関での電子線描画実験ができなかったため、2020年度にまとめて試作しておいたセンサ群を利用して以上の実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前項において、①の色再現の検討においては多層膜干渉フィルタ特有の事情(干渉型でスペクトルが入射角に鋭敏であるため、画素又はブロック毎の補正が必要であること)を見出し、それを補正するのに必要な実験系(多色・大面積カラーチャートを用いた撮影系)と画像処理プログラムも構築するなど、1年間で大幅な進歩があった。 ②の非線形推定においては、吸光度のみならず、近赤外分光分野で重要な波長の二次微分スペクトルの推定可能性の検討まで進めることができた。フィルタアレイ型のマルチスペクトルセンサ出力から吸光度関連情報を抽出できた例は、代表者が知る限りこれまで報告されておらず、当該分野の先駆的研究例に位置付けていいものと考える。 また③については、通常生体の血流変化に伴うわずかな色味の変化はインタラクタンススペクトル経由で取得するところを、反射画像経由で検出できたことに意義があると考える。またセンサの直接出力(輝度値のセット)を主成分分析に掛けることで、計算量の削減にも繋がった。この成果はオンラインにて開催された12th International Conference on Optics-photonics Design & Fabrication で発表し、Student Poster Awardを受賞した。 さらに我々のマルチスペクトル・フィルタアレイを低コスト・マイコン向けのイメージセンサ(Raspberry Pi HQ Camera)に実装可能であることも実証した。この成果はOptical Review誌に掲載され(doi: 10.1007/s10043-022-00726-3. URL: https://rdcu.be/cH2oz)、我々のセンサ技術が広くIoT分野で利用できることをアピールできた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は前年度に実施できなかった、マルチスペクトル・フィルタアレイ用基板の電子線描画実験を実施したい。特に前項①②③すべてにおいて、2020年度に試作したフィルタアレイにおいては波長感度が幾分高すぎることが判明した。これをやや緩やかにするためには多層膜の総数を2~3層減らすことが必要で、そのためには基板から再設計・再作製することが必要である。なおフィルタアレイのチャンネル数としては16チャンネルほどで充分であることが分かったので、今後もこのチャンネル数を基本に試作検討を行う。 また多層膜の膜厚プロファイルについては、層数の減少と共にランダムさの度合いを調整する指針が立てやすくなる(自由度が減少する)。フィルタアレイを構成する16種類のフィルタの透過関数の特異値解析を、波長ごとに仔細に調査し、最適な膜厚分布を見出すことを目指す。 さらに前年度に、マイコン(Raspberry Pi)制御型のマルチスペクトルセンサに展開可能であることまで確かめたので、今後は計測機能を強化するために、本来応答が線形ではないセンサ特性の非線形補正を検討する。 また前項①で判明したように、当該センサの感度には画素依存性(センサ上の場所依存性)がある。これを前提としたスペクトル推定(センサ毎感度の評価実験系の構築)や、センササイド主成分分析の前処理(ある種のホワイトバランス調整)などを検討する。2021年度は大型カラーボードを用意して色の教師データを撮影したが、これでは手間がかかり、取得できる色の数も限られる。そこで液晶ディスプレイを用いて任意の色を表示・自動撮影する系なども構築し、色再現の精度向上を試みる。
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Causes of Carryover |
既存光学部品を一部流用できたこと、そして出張制限等に伴う試作実験計画の修正により調達する消耗部品を一部変更したことにより発生した。 翌年度分の助成金と併せて、主に光学部品の消耗品(ホルダー類、レンズ類)に使用する予定である。
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Research Products
(11 results)