2021 Fiscal Year Research-status Report
近赤外分光法による認知機能の定量評価に向けた計測技術に関する研究
Project/Area Number |
20K04524
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Research Institution | Tokyo Metropolitan College of Industrial Technology |
Principal Investigator |
福田 恵子 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 教授 (70396266)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 近赤外分光法 / 脳機能計測 / 脳血流 / 皮膚血流 / 血流動態変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
近赤外分光法計測(NIRS: near infrared spectroscopy)による脳機能計測は高齢者の認知機能の評価をはじめとする広い分野で期待されている。本研究はNIRS計測において、みかけの脳活動を分離して認知機能に関する脳活動部位を把握し、認知機能の定量評価に向けた計測技術を確立することを目的とする。みかけの脳活動の分離と脳反応部位のより正確な把握に向けて、Ⅰ fMRI計測による信号領域の推定、Ⅱ NIRS計測による反応部位推定、Ⅲ 補正手段と解析法の3つの項目に取り組む計画を立てている。この中で、fMRI 計測は新型コロナウイルス感染拡大防止を受けて当面実施が困難である。そこで、fMRIについては先行研究による反応部位の推定例を参考とし、NIRS計測による計測と反応部位推定と補正手段と解析法の確立に取り組むことに研究計画を変更した。令和3年度はNIRSによる計測実験(若年層)と、解析法に関して取り組んだ。研究内容は以下の通りである。 (1)見かけの脳活動の分離に関して、補正信号の取得可能な装置の調整を行い、先行研究より前頭前額部での脳反応が予想される色文字の一致・不一致を判断するタスク実験課題を用いて計測実験を行った。見かけの脳活動の分離には拡散方程式近似に基づき生体の光学特性を3次元モデル化して大脳皮質の信号を抽出する手法を適用した。その結果、眉間近傍の頭部表面近傍の皮膚血流変化の影響(=見かけの脳活動の主要因)が低減できることを明らかにした。さらに、計測領域の拡大と補正効果の向上に向けた装置の改良を進めている。 (2)高年層を対象とした認知機能の評価のために、課題の難易度や被験者の主観を尺度とした多面的な評価手法を提案した。各種脳トレーニング課題を用いて若年層を対象とした脳血液量変化の計測実験を実施し、評価を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大に伴う研究協力者の学生の登校制限や在宅勤務が発生し、研究計画を見直した。また、安全性の確保のために計測実験が制限された。安全性に考慮して計測実験を年度途中から実施することができたが、全般的には進捗はやや遅れている。評価手法に関しては、頭表面座標と脳表の対応をとる手法の適用見通しが立ったことから、NIRS計測において反応部位の統計的な推定を行う。また、見かけの脳活動の補正手法については装置を改良して計測領域の拡大と効果の改善を図る。評価の際には、令和4年度は生体計測に比べて感染防止の観点で制限を受けにくい生体ファントムを中心とした実験を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度について、新型コロナウイルス感染拡大防止と予防の観点から、生体計測のNIRS実験は最小限の範囲で行い、評価手法の確立を図る。NIRS実験には主として先行研究からある程度反応部位が類推されている短期記憶に関する課題を用いた実験と脳トレーニング課題を用いた実験を行う。短期記憶に関するタスクではワーキングメモリのほか画像の言語化を図る角回においても反応が得あれることが予想されていることから、測定領域を拡大と被験者数の増加を図り、NIRS-SPMによる統計的な解析を行い、反応部位を推定する。 見かけの脳活動を低減する手法に関しては、生体ファントムを用いた実験を中心に行う。血液量の変化に見立てた光の吸収体を生体ファントム内に配置して、その位置による吸光度の変化を測定し、見かけの脳活動の影響を調べる。さらに、ファントム実験のデータをもとに補正手法を適用して評価し、補正方法の改善を図る。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス拡大に伴い、fMRI計測実験の中止となり関連する費用が発生しなかったこと、学会等がオンライン開催となったため旅費が発生しなかったこと、解析手法など中心に研究を進めざるを得なかったことなどから次年度使用額が発生した。今後、測定領域を拡大して実験を行うため、装置の改良の費用、生体ファントム実験のための実験用消耗品の購入費用に使用する。パーソナルコンピュータと解析・課題を呈示するためのソフトウエアを購入する。また、本研究により得られるNIRSの精度向上の効果を学会にて発表を行うための参加費や旅費及び論文の投稿料、英文書校正代などに使用する。
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