2020 Fiscal Year Research-status Report
飛行生物の運動データの特性抽出モデルに基づくバイオインスパイアード制御法の構築
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20K04529
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
河辺 徹 筑波大学, システム情報系, 教授 (40224844)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
合原 一究 筑波大学, システム情報系, 准教授 (70588516)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バイオインスパイアード制御 / 運動データ / 特徴抽出 / 飛行生物 / 数理モデル / モデル予測制御 / 人工移動体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,コロナウイルス感染症の蔓延により,飛行生物の動画像データの収集のためのフィールドワークがほぼできず,また,研究動向の調査や意見交換のための学会参加等の出張もできなかったため,これまでに収集,蓄積していたウミネコの動画像データを用いて,特に着地動作の数理モデル化にのみ焦点をあてて研究を進めた.データは,2019 年6 月に数日にわたって島根県隠岐の島にて,気象計(Kestrel 5500) を用いて風速,風向,気温,湿度を計測しながら,同期した2台のカメラで海上のブイに着地するウミネコを撮影したものである.この画像データに対し,個体追跡フレームワークUMATrackerを用いた個体追跡とDLT(Dilect Linear Transform)法による3 次元空間座標への再構成を行い,ウミネコの着地動作における位置座標や翼の角度を数値化した.ウミネコの翼は長く細い形状をしており,これは小さな抗力で大きな揚力を生み出す上で効率的な形状であるといえる.このため,ウミネコは着地飛行時には,この特徴を生かして,羽ばたきをあまりせずに,姿勢方向と翼の角度のなす角である迎え角を調整することで位置や速度を制御し,ブイなどの移動する目標値にスムーズかつ正確な着地を実現している.これらの特徴を踏まえ,ウミネコが迎え角を変化させることで,翼にはたらく揚力と抗力の大きさを調整し,進行方向への位置,速度,加速度を変化させている着地動作メカニズムの数理モデルを構築した.なお,このモデルは,着地動作の一連の挙動をモデル予測制御手法として拡張できるものである.この結果をNonlinear Theory and Its Applications, IEICEに英語論文として投稿し,採択された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナウイルス感染症の蔓延により,飛行生物の運動に関する動画データの収集のためのフィールドワークがほとんどできなかったこと,ならびに研究動向の調査や意見交換のための学会参加等の出張もできなかったことが大きな要因である.このため,昨年度までに収集し研究室で蓄積していた既存のウミネコの飛行動作の動画像データのうち,特に着地動作に着目して,飛行軌跡や姿勢角、翼の角度等を再解析し,迎え角の時系列変化とそれによって実現される飛行軌跡の対応関係を表す数理モデル化を行うにとどまった.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,昨年度構築したウミネコの着地動作モデルをモデル予測制御手法として拡張する.具体的には,予測モデルとして構築した数理モデルを用い,出力がデータ計測結果における迎え角のふるまいと一致するように評価関数を設定することで,ウミネコの着地動作における迎え角の決定メカニズムのための制御則を抽出し,モデル予測制御法の枠組みでの実現を検討する.これにより,ウミネコの着地動作における正確で動きのなめらかな動きを模倣した人工移動体の制御法としての構築を目指す.また,コロナウイルス感染症の状況次第だが,昨年度できなかった飛行生物の運動時の動画像データの収集のためのフィールドワークを行い,データの蓄積を進めたい.鳥などのデータ収集が難しい場合は,身近に存在する昆虫等の着地動作のデータの収集に切り替えるなどして,これらのデータ解析と特徴抽出を行い,昨年度の成果であるウミネコの着地動作の数理モデルとの比較検証等を行い,飛行動作ごとのモデリングならびに制御法の構築を進める.モデリングにおいては,モデル化誤差に対する補正機能を加えた学習型のモデリング手法も検討する。制御法の構築においては,モデル予測制御だけでなくILQ制御等の枠組みも基礎として検討を行い,制御法のロバスト化についてはスライディングモード制御を組み合わせる等の検討も進める.
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Causes of Carryover |
R2年度は,コロナウイルス感染症の蔓延により,動画データの収集のためのフィールドワークのための出張や,研究動向の調査や意見交換のための学会参加等の出張もできなかったため,出張旅費をほとんど使用しなかった.また,R3年度も見通しが不明であったため,購入予定だった高解像度カメラやデータ収集と解析のためのPCの購入を見送り,これまで研究室で蓄積してきた既存データと,同じく研究室で所有している既存PCに解析データの保存用ディスクのみを購入して研究を進めた.さらに謝金についても,フィールドワークが行えなかったことから,データ収集及び解析補助のための研究協力者となる学生への依頼がほとんどなかったことによる.
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