2021 Fiscal Year Research-status Report
深層学習を用いた光ファイバ伝送信号の抜本的な品質改善に関する研究
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20K04532
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
植之原 裕行 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (20334526)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光ファイバ通信 / 光信号伝送 / 歪補償 / 深層学習 / 畳み込みニューラルネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度において、人工ニューラルネットワーク(ANN)における非線形補償性能を得られるサンプル/シンボル数、学習データとして適切な符号の選択の目途を立てた。その情報をもとに、令和3年度は以下の検討を行った。 (1)EVMを評価基準とし、DBP法による非線形補償性能に対するANNの補償性能の改善効果を定量的に検証した。(2)引き続いて、2次元畳み込みニューラルネットワーク(CNN)による非線形補償性能の検討を行った。2次元のパラメータとして何を適用するか、について異なる組み合わせについての比較検討を行い、適切なパラメータの選択を行った。 以上の検討の結果、以下の結果を得た。(1)入力データのサンプリングレート4,同時入力シンボル数は1が最適との結果に基づきANNでの非線形補償結果を線形補償のみ、DBPと比較を行った。同じ平均光パワーの28Gbaud RZ-16QAM信号に対して、伝送距離1,000~10,000kmの受信信号に対する補償性能を、ANNおよびDBPについて比較検討した結果、すべての距離で目標EVM値(14.9%)を下回った上でANNが優れている結果を得られた。しかしながら、一部最終結論に至るには詳細検討がさらに必要であることもわかった。 (2)2次元CNNの畳み込み層の入力データ形式として伝送信号のI成分、Q成分をそれぞれ配列の縦軸・横軸に対応させることが、コンスタレーション上での時間変化を表現可能とした。また多数決法の導入が誤り率の改善に有効である結果も得た。その結果、非線形補償性能が高い入力光パワー条件において線形補償のみの場合と比較して得られる結果を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずANNを用いた非線形補償性能に対して、EVMを用いた定量評価を通して線形補償のみ、DBPに対する性能優位性を検討した。28 Gbaud RZ-16QAM信号( 1.4 /W/km, 100 km SMF伝送スパンごとにEDFAでの中継)に対してANN, DBPの補償性能,計算量の比較検討を行った.平均入力光パワー1dBmで伝送距離1,000 km~10,000 kmに対するANN, DBPの補償効果を比較した結果, PRBS 2^17-1信号を補償する場合には,すべての距離でANNが目標EVM 14.9%を下回りDBPより優位となり伝送距離5,000 kmで平均入力光パワー-5 dBm ~ 5 dBmに対するANN, DBPの補償効果を比較した結果, DBPと比較してn_neuron=320のANNはEVMを11.9%改善した. 続いて、2次元CNNによる非線形補償性能の得られる構成の検討、2次元パラメータの対応方法について検討した。2次元CNNの構成はVGG16を参考とし,畳み込み層のチャネル数,最後の出力数を調整した.また,入力データ形式には伝送信号のI成分,Q成分をそれぞれ配列の縦軸,横軸の値に対応させ,対応するピクセルに信号の時間情報を代入したものを使用した.これによってシンボル点のコンスタレーション上での時間変化をCNNで識別することを可能とした.次に、分類型2次元CNNを用いた光非線形補償器の特性に関する検証を行った.28Gbaud RZ-QPSK の条件下でAccuracyおよびBERの入力シンボル数依存性,識別シンボル数を変えた際の比較,BER改善を目的として導入した多数決法の有効性を検証した結果,効果の得られる入力シンボル数、識別シンボル数の条件を見出し,また多数決法によってBERが3~5分の1程度に改善したことが確認できた.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、CNNのアーキテクチャとして画像識別用のものを参照したため,非線形補償器に最適な層数などを検討する.テストデータ数を増やすことも有効な手段の一つととらえ、また多数決法をどこまで使うべきかどうかについても念頭に置いて検証を進める。 検討を進めるプラットフォームとしては、MATLABの畳み込みニューラルネットワーク・ライブラリを利用していたが、より多くのリソースが利用できると期待できるpythonに変更することを想定している。 また,現在非線形補償に広く用いられているDBPとの比較検討を行い、線形補償のみに対する優位性にとどまらず、CNNの非線形補償性能の優位性を検討する.優位となる光信号パワー、伝送距離などの条件を明確にする。 以下、今後の予定をまとめる。(1) CNNアーキテクチャの詳細検討:層数・入力データ数・テストデータ数変更による誤り率改善効果の側面からの最適化検討 (2) EVM・誤り率に対する他手法との差異検討:一般的な優位性の評価軸として、線形補償のみによる場合、DBPを比較対象とする。CNNによる性能改善効果が、特に高周波数利用効率向上に有効な多値変調方式に求められる高入力光パワー領域で得られる条件を明確化する。 以上より、光ファイバ長距離伝送におけるCNNの非線形歪補償効果の有効性とその条件を明らかにする。
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