2022 Fiscal Year Research-status Report
Signed formulation of dynamical systems synthesis incorporating asymmetry beyond preservation
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20K04536
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| Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
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Principal Investigator |
伊藤 博 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (70274561)
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| Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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| Keywords | 制御工学 / 非線形システム / 結合ダイナミクス / 安定論 / 非対称性 / 感染症ダイナミクス |
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| Outline of Annual Research Achievements |
電気電子・機械・生物・化学、社会等、あらゆる物事の運用では、構成モジュール毎のダイナミクスのゲインを調べ、各機能全体の調和が保たれる閾値までのゲインの余裕を計算するという手順が伝統的である。しかし、ゲインは解析を画一的、さらに、保守的にし、不可能という回答を導くことも多い。そこで、ゲインを値から関数へ拡張した非線形ゲインの数学的な定理が、最先端では活用されるようになった。一方で、現代社会はあらゆる物・事の情報を活用して結合する実践に突き進み、試行錯誤が現場で行われており、非線形ゲインの数学を使っても解決できないことも多い。そこで、本研究は，非線形ゲインの数学の基礎である保存変換を経由せず、ダイナミクスを非線形のまま合成しながら、運用・設計に保証を与える数理的道具を開発している。保存変換が前提としている対称性を排除する狙いがある。1年目は、複数・多様なエネルギ収支を不均一のままに各モジュールで特徴化し、非対称なダイナミクスの相補的に結合することで安定性を確保する数理的基礎なアイディアをまとめた。その創出と確認には、細胞内概日リズムのダイナミクスを役に立てた。社会ではCOVID-19が広まったことから、感染症モデルに取り組みんだところ、非対称相補性の活用が必須となる特徴を有することを発見した。2年目は、感染率が高いと分岐が起こり、分離モジュールから直接には解析できないことを突き止めた。分離解決不可能な非対称結合を成功させるため、微分不可能な混合離変換、リアプノフ関数厳密化、および、フィードバック準大域化という３つの数理道具の提案に至った。3年目は、非対称性によって平衡点移動が及ぼす影響を解析し、それに対処する積分型フィードバック、遅れに対する性能保証などの研究成果を得ている。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
闇雲に「世の中はすべて非線形」ではなく、非対称性が本質となる非線形性を効果的に処理する数理基盤開発という揺るぎない方針に基づいて、３年間の研究を行った。2020年度は本研究者に経験があった細胞概日リズムのモデルから本研究開始の基礎アイディアを整理した。非ゼロ平衡点により双線形性が生む非対称な結合が取り組んだ数理的本質の一つであり、それが世界に2020年から大影響を与えたCOVID-19などの感染症のダイナミクスと一致することを見つけた。2021年度は多くの感染症モデルに取り組み、感染症モデルとしての実用度と基礎理論開発のための本質凝縮度の両方から、SIQRと呼ばれるモデルが適切であるという結論に至った。各モジュールのエネルギー関数の選び方と結合方法などを試行錯誤した経験が様々な成果に繋がった。感染モデルのような双線形性が生む非ゼロ平衡点の安定性は分離型解決は不可能という数理的結論に至り、その打開策として、微分不可能な混合変換、リアプノフ関数厳密化、および、フィードバック準大域化という３つの数理道具を開発した。この成功は世界に類のない初の結果として制御理論および制御数学の世界一および一流の論文誌に採択され注目をあび始めた。2022年度は非対称性と平衡点の強い依存関係に焦点を当て、感染モデルには積分型のフィードバックを導入した結合法を提案した。また、それを数理一般論「保存変換からの脱却による非対称ダイナミクスの符号込み合成理論」として昇華させることも行った。非線形ゲインを符号付きにすれば従来不可能だったダイナミクスの合成に成功しただけではなく、符号付きでも解決できないさらに難しい課題も発見したことなど、うれしい悩みを得たところで2022年度を終了した。国際学会SICE2022で発表した成果は論文賞ファイナリストに、国内学会SICE制御部門マルチシンポジウムでは論文賞を受賞した。
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| Strategy for Future Research Activity |
2020年度に開発した符号付きの非線形ゲインによってモノトーン性の相補非対称を活用したダイナミクス結合理論と、2021と2022年度に感染症モデルへの具体的な取り組みから生まれた「双線形性において非ゼロ平衡点が生む非対称な結合」を数理道具を融合し、一般抽象化して2023年度は「保存変換からの脱却による非対称ダイナミクスの符号込み合成理論」としてまとめる。その一般抽象化は2022年度から始めており、主要な数理技術の編み出しに成功していることから、それらを仕上げて整理すること、成果として社会へ発信することが2023年度の二つの主要な活動となる。一つ目については、2020年度に開発した符号付き非線形ゲイン結合の研究の経験を用いて試行錯誤した感染症モデルの具体的な数理・論理的な蓄積が、2022年には半無限領域上の対数リアプノフ関数の結合というさらに飛躍した着想に結びついている。本課題研究の理論到達地点、つまり、整理地点は、「符号付き」から「半無限領域上」への飛躍に起こるダイナミクスの本質的違いを明らかにして、未開拓な「半無限領域上」に挑戦するための強固な土台を完成させることである。二つ目の活動に関しては、外国研究協力者への訪問、あるいは、招聘等により、本課題の研究成果を紹介するとともに、意見交換を通して、より魅力的な具体例や整理方向を決定するアイディアを探し出し、知見の拡大を力にして、既に得られている成果の一流の学術雑誌などへの掲載を目指すことである。国内でも講演会等によって成果普及活動を行う。
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| Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大が継続により、国内および国外学会発表の両方の出張活動が予定より減った。研究会は開くことができなかった。しかし、研究自体は、本課題計画時の予想を上回る成果が得られた。前年度から継続して、当初の想像を超える広い展開に成功している。外国研究協力者への訪問と招聘は、新型コロナウイルスによって断念したが、遠隔システムで意見交換を行ったため、旅費が未使用となった。これにより、感染症モデルの研究が予想以上の成果を収め、学会発表、受賞、論文誌掲載などとなった。。2023年度には国内外旅費を使った成果発表、普及・意見交換活動をするとともに、これまで実現できなかった外国研究協力者への訪問・招聘なども行う。
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