2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K04553
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
古谷 栄光 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (40219118)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 筋弛緩度制御 / 薬力学モデル / 筋弛緩度指標 / ロクロニウム / スガマデクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,手術中の麻酔において,筋弛緩度を手術内容や進行状況に応じて適切なレベルに維持し,かつ覚醒時に安全に回復できる筋弛緩度制御を実現するシステムの開発を目的として,筋弛緩薬の効果を適切に表せる数式モデルとあらゆるレベルの筋弛緩度を統合的に表せる筋弛緩度指標の構成,および筋弛緩薬と筋弛緩回復薬の相互作用を含む薬物動態モデルの構築を行った.得られた結果は以下のとおりである. 1. 麻酔によく使われている非脱分極性筋弛緩薬のアセチルコリン受容体との結合などの作用機序を考慮に入れた筋弛緩薬の効果を表す数理モデルを構築し,筋弛緩度指標である四連刺激に対する反応に基づくTOF比やTOFカウント,テタヌス刺激後反応であるPTCの臨床データとの対応を確認し,パラメータを適切に選ぶことにより,おおむね対応関係が表せることを確認した.今後より詳細なモデル化と臨床データとの比較を行う予定である. 2. さまざまなレベルの筋弛緩度を表せる統合指標については,TOF比,TOFカウントおよびPTCを非線形に組み合わせることによって,線形に組み合わせるよりも臨床データとの適合性の高い指標が得られることを確認した. 3. 筋弛緩薬ロクロニウム,筋弛緩回復薬スガマデクスと両薬剤の複合体の薬物動態モデル,両薬剤の結合と乖離を表すモデル,およびロクロニウムの薬力学モデルを組み合わせて,ロクロニウムによる筋弛緩時のスガマデクス投与による筋弛緩度変化を表せるモデルを構築した.手術中の麻酔におけるスガマデクス投与による筋弛緩状態からの回復と再筋弛緩(再クラーレ化)を再現するためには,薬物動態パラメータと筋弛緩薬の効果部位への移行速度を適切に設定する必要がある.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筋弛緩薬濃度と効果の関係を表すモデルについては,筋弛緩薬の作用機序に基づく筋弛緩薬の効果を表す数理モデルを構築し,臨床データとの比較からおおむね妥当なモデルが得られている.また,さまざまなレベルの筋弛緩度を表せる筋弛緩度指標の検討については,測定方法の異なる複数の指標を非線形に組み合わせることで,線形の場合よりも適切な指標が構成できることを臨床データに基づいて確認している.さらに,筋弛緩薬ロクロニウムと筋弛緩回復薬スガマデクスの薬物動態と筋弛緩効果をシミュレーションできるモデルを構築している.
|
Strategy for Future Research Activity |
まず,筋弛緩薬の作用機序に基づくモデルについて,アセチルコリン受容体の筋弛緩薬による占有率と活性化率の時間的変動の詳細なモデルを構成し,四連刺激に対する反応の大きさの変化やテタヌス刺激後反応の変化などの電気刺激に対する反応の変化を表せるモデルを構築する.それと並行して,筋弛緩度指標を非線形に組み合わせた統合指標の統合パラメータを,より臨床データとの適合性の高い指標となるように調整する.そして,これらの結果を組み合わせて,筋弛緩度制御に利用できる筋弛緩度指標とするとともに,臨床データに基づいて個人差の範囲を明らかにする. また,これまでに構成した筋弛緩薬,筋弛緩回復薬およびそれらの複合体の薬物動態モデルのパラメータについて,再クラーレ化に対応する設定を検討するとともに,再クラーレ化を回避するための筋弛緩回復薬の投与方法を検討する. さらに,以上を踏まえてあらゆるレベルで筋弛緩度を維持できる筋弛緩度制御法を検討し,筋弛緩度制御システムの開発を行う.
|
Causes of Carryover |
今年度は,新型コロナウイルス感染症のため予定していた国際会議への参加やデータ取得のための出張ができず,データ解析のための人件費も使用しなかったが,研究協力者である香川大学医学部附属病院の白神豪太郎教授のご協力で取得されたデータの受領のめどがついたので,次年度に新たなデータの解析を進めるとともに,遠隔での議論や安全なデータ授受のためのシステムの導入に使用する予定である. また,次年度に交付を受ける研究費は,作用機序に基づく筋弛緩度変化モデルと統合筋弛緩度指標の検討,再クラーレ化を起こさない筋弛緩回復薬の投与方法の検討,および筋弛緩度制御法の検討のためのデータ取得と解析,成果発表のために使用する.
|
Research Products
(2 results)