2021 Fiscal Year Research-status Report
心肺停止患者の心電図波形解析に基づく電気的除細動の効果予測システムの検証
Project/Area Number |
20K04555
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
大屋 英稔 東京都市大学, 情報工学部, 教授 (30361835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 和司 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 名誉教授 (90136531)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 除細動適用成否予測システム / 自己心拍再開 / 心室細動再発 / 特徴量抽出 / 電気的除細動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,これまでに申請者らが進めてきた心電図波形の高精度識別システム構築・検証(基盤研究(C),22560402,25420443)で得られた成果や知見をもとに,心肺停止患者の状態に応じて遷移する心電図波形と電気的除細動適用後の自己心拍再開や心室細動再発などの関連性を解析・検討し,その評価方法を確立・検証,すなわち心肺停止患者の心電図波形解析に基づく除細動適用成否予測システム(基盤研究(C),17K06505)における成果の実用化に向けた検証を行うことである.本研究課題で提案するシステムが実用化出来れば,心肺停止患者の蘇生率向上に貢献することが可能である. 令和3年度は,本研究課題の目的を達成するために,主として自己心拍再開例,非再開例(心静止等),及び心室細動再発例を解析してこれらを特徴づけるパラメータを検討するとともに除細動適用成否予測システムを構築し,その有効性を検証した.また,基盤研究(C)(17K06505)で得られた成果の検証作業を実施した.具体的には,これまでに集積されている心電図波形データを含め,種々の心電図波形データをウェーブレット解析し,自己心拍再開例や非再開例(心静止等)に関連した特徴量を統計的な手法を用いることによって,各特徴量が予測にどの程度寄与するのかを検証した.寄与率の高い特徴量を用いた際の除細動適用成否予測システムの有効性についても検証し,従来に比較して10%以上の精度向上を確認することが出来た.また,これまでに開発を進めてきた心電図波形の高精度識別システムについても再検証を行った,これらの成果の一部については,国内学会,および国際会議で発表し,また次年度も国内学会,および国際会議予定であり,更に成果をまとめて国際的なジャーナル論文に投稿予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は,本研究課題の目的を達成するために,主として自己心拍再開例,非再開例(心静止等),及び心室細動再発例の関連性の検討して除細動適用後の効果を予測するための特徴量を抽出・検証し,除細動適用成否予測システムを構築した.また,基盤研究(C)(17K06505)で得られた成果の検証作業を実施するとともに,その有効性を検証した. 具体的には,これまでに集積されている心電図波形データを含め,種々の心電図波形データをウェーブレット解析し,自己心拍再開例や非再開例(心静止等)などの心電図波形データの特徴を検討した.また,自己心拍再開時の心電図波形において,各症例における心電図波形を特徴づけるパラメータのうち,どのパラメータが予測性能に寄与するのかについて検討し,除細動適用成否予測システムの構築した.除細動適用成否予測システムの構築においては,各特徴量が予測にどの程度寄与するのかを統計的な検定手法を用いることによって検証し,従来に比べて10%以上の精度向上を達成した.更に,これまでに開発を進めてきた心電図波形の高精度識別システムについても再検証を行い,識別精度の改善を行った.なお,令和3年度に得られた成果の一部については,国内学会のみでなく国際会議においても発表した.更に,これまでに得られたをまとめ,権威ある国際会議や国際的なジャーナル論文に投稿している状況にあり,今後も本研究課題で得られた成果を継続的に発表してく予定である. 以上のような理由からおおむね順調に進展している状況にある.
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の主な目的は,これまでに開発を進めてきた除細動適用成否予測システム(基盤研究(C),17K06505)の検証を行うために,自己心拍再開例,非再開例開例(心静止等),及び心室細動再発例における心電図波形の解析を行い,新たな特徴量を検討すること,ならびに除細動適用成否予測システムの精度向上を図ることにある.具体的には,まずMIT-BIHデータベースやAHAデータベースなどのデータベースに記録されている心電図波形データや心電図波形データ収集システムによってこれまでに記録・集積された心電図波形データを解析し,自己心拍再開例や非再開例(心静止等)などの心電図波形データを特徴づけるパラメータの予測結果に対する寄与率を検討する.すなわち,心電図波形データを特徴づける新たなパラメータについても検討するとともに,心電図波形の状態がどのように遷移している場合に除細動が効果的なのか,あるいは心室細動が再発してしまうのかということに関連するパラメータについては,令和4年度も継続して行う予定である.また,現状の除細動適用成否予測システムは従来手法に比べて高い予測性能を保証しているが,「除細動成功」と「除細動失敗」の2つを予測するようになっている.令和4年度はこれらに加えて「VF(心室細動)再発」など,他の症例についても結果を予測できるように改良を行う.本研究課題に関連し,基盤研究(C)(22560402,25420443)において開発した心電図波形の高精度識別システムに関しては,サポートベクターマシンを用いた新しい手法を提案し,従来に比べて高精度,かつ高速に識別が可能となった.ただし,まだ改良の余地が残されており,継続して検討する予定である.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響で国内学会などがオンライン開催となったこと,また研究成果は出ているが,それらを整理してとりまとめることに時間を要したため,ジャーナル論文への投稿が遅れていることなどが次年度使用額を生じてしまった理由である.令和4年度は学会出張もあり,またジャーナル論文への投稿などに使用する予定である.
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