2020 Fiscal Year Research-status Report
新規ハーフメタル三元遷移金属カルコゲナイドの作製とスピントロニクスへの応用
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20K04558
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金澤 研 筑波大学, 数理物質系, 助教 (60455920)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 磁性半導体 / スピントロニクス / 分子線エピタキシー / 遷移金属カルコゲナイド / ハーフメタル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、半導体スピントロニクスにおけるスピン流注入源等への応用が期待される遷移金属カルコゲナイド、主に分子線エピタキシー (MBE) 法を用いて作製されたMnTe、CrTe にCr、Mn、Fe、Co等の異種磁性元素をドープすることによって実現される新規物質系を対象として、その磁気特性および伝導特性の詳細を明らかにすることを目的として研究を行っている。 1年目に当たる令和2年度は、主にGaAs(111)A基板上にヒ化ニッケル(NiAs) 型構造をもつMnTeを母体としてFeを添加することで作製したMnFeTe薄膜を対象とした研究を行った。 その結果、Fe組成4.9%以下の試料においては、NiAs-(Mn,Fe)Teがそのc軸を成長方向として、結晶性良く形成されていることが示唆された。また、磁気特性の測定結果としては、母体となるNiAs-MnTeが反強磁性半導体であるのに対し、Feを添加することで局所的な強磁性領域が形成されていることが明らかになった。さらに磁場中伝導特性の測定結果から、Feを添加することで、特に薄膜垂直方向への磁場印加に対する異方性磁気抵抗効果が大きくなることが示唆された。 これらの結果は、反強磁性半導体であるNiAs型MnTeを母体として異種の磁性元素であるFeを添加することで、新たな磁気秩序を形成し、さらにはその磁化によって伝導特性を制御できるという可能性を示している。今後、さらに高い強磁性転移温度の実現を目指した試料作製方法の最適化や、本系における磁性発現、および、それが伝導特性に与える影響のメカニズムの詳細が解明されることで、半導体スピントロニクスへの応用への実現につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目に当たる令和2年度は、主にGaAs(111)A基板上にヒ化ニッケル(NiAs) 型構造をもつMnTeを母体としてFeを添加することで作製したMnFeTe薄膜を対象とした研究を行った。 その結果、反強磁性半導体であるNiAs型MnTeを母体として異種の磁性元素であるFeを添加することで、新たな磁気秩序を形成し、さらにはその磁化によって伝導特性を制御できるという可能性を示唆する結果が得られた。 さらに、新たな系として添加する遷移金属元素にCrを用いた系についての研究にも着手している。これについてはまだ十分な結果が得られてはいないものの、異種の遷移金属であるCrを添加することによる新たな磁気秩序形成を示唆する結果が確認されている。 今後、さらに高い強磁性転移温度の実現を目指した試料作製方法の最適化や、これらの系における磁性発現、および、それが伝導特性に与える影響のメカニズムの詳細が解明されることで、半導体スピントロニクスへの応用への実現につながることが期待される。 さらに、本年度購入したAVC社製高温セルの予備実験を行い、期待通りの性能を示すことは確認した。本装置が稼働することでCoの添加も行えるという準備が現状として整いつつある。 これらの結果を踏まえて、本課題は「おおむね順調に進展している」と、判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題の目的は、半導体スピントロニクスにおけるスピン流注入源等への応用が期待される遷移金属カルコゲナイド、主に分子線エピタキシー (MBE) 法を用いて作製されたMnTe、CrTe にCr、Mn、Fe、Co等の異種磁性元素をドープすることによって実現される新規物質系を対象として、その磁気特性および伝導特性の詳細を明らかにすることである。 今後はさらに母体と添加する遷移金属元素の組み合わせを変えることで、多くの三元遷移金属カルコゲナイドを作製し、系統的なな知見を得ることを目的とした研究を行う。 それらの基礎研究を並行し、特に今後は半導体スピントロニクスへの実際の応用を見据え、実際にそれらを磁性電極とした半導体デバイス構造を作製し、半導体へのスピン偏極キャリアの注入効率を評価する。評価法としてはスピン偏極LED構造および巨大磁気抵抗効果を利用した4端子非局所測定法を用いる予定である。 これらの実験を通じて得られた結果を、さらなる高機能材料の作製およびデバイス構造最適化にフィードバックさせることで、デバイスの高効率 (偏極率) 化を目指し、将来のスピントロニクス応用への可能性を調べる。 さらに、走査トンネル顕微鏡や透過型電子顕微鏡による原子スケールの観察手法や光電子分光法ややフォトルミネッセンス等の実験等も併せて行うことで、未知の部分が多い三元遷移金属カルコゲナイドの磁性発現メカニズムの詳細を解明する。
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