2021 Fiscal Year Research-status Report
新規ハーフメタル三元遷移金属カルコゲナイドの作製とスピントロニクスへの応用
Project/Area Number |
20K04558
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金澤 研 筑波大学, 数理物質系, 助教 (60455920)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 磁性半導体 / スピントロニクス / 分子線エピタキシー / 遷移金属カルコゲナイド / ハーフメタル / 遷移金属化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、半導体スピントロニクスにおけるスピン流注入源等への応用が期待される遷移金属カルコゲナイド、主に分子線エピタキシー (MBE) 法を用いて作製されたMnTe、FeTe、CrTeにCr、Mn、Fe、Co等の異種磁性元素をドープすることによって実現される新規物質系を対象として、その磁気特性および伝導特性の詳細を明らかにすることを目的として研究を行っている。 2年目に当たる令和3年度は、主にGaAs(001)基板上に成長したFeTe薄膜を対象とした研究を行った。その結果、成長温度が300℃以下の場合、主にマーカサイト型FeTe2が形成されていることがXRD測定から示唆された。また、その磁気特性は外部磁場に対し線形に応答し強磁性を示さなかった。一方、基板温度が約400℃の場合には、主にパイライト型のFeTe2が、その(211)面を成長面として結晶成長していることがわかった。さらにその磁気測定の結果から、パイライト型FeTe2が室温以上の転移温度をもつ強磁性を有する可能性が高いことが示唆された。また伝導特性の評価を行い、マーカサイト型FeTe2およびパイライト型FeTe2ともに、半導体的な伝導特性を有することを明らかにした。 これらの結果は、半導体基板上のFeTe薄膜の成長条件を制御することで、薄膜の結晶性および磁化特性を変化させ、さらには室温強磁性をもった強磁性半導体を非磁性半導体基板上にエピタキシャル成長できることを示している。今後、さらに良い結晶性を有したパイライト型FeTe2薄膜の実現を目指した試料作製方法の最適化や、本系における磁性発現メカニズムの詳細、および、GaAs基板領域へのスピン注入効率の評価等を行うことで、半導体スピントロニクスへの応用への実現につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目に当たる令和3年度は、主にGaAs(001)基板上に成長したFeTe薄膜を対象とした研究を行った。 その結果、FeTe薄膜の成長条件を制御することで、薄膜の結晶性および磁化特性を変化させ、さらには室温強磁性をもった強磁性半導体パイライト型FeTe2を非磁性半導体であるGaAs基板上にエピタキシャル成長できることを示唆する結果が得られた。 また昨年度から継続している実験として、反強磁性半導体であるヒ化ニッケル型MnTeを対象とした研究も行っており、その進展として反強磁性のMnTeと強磁性のパイライト型FeTe磁性層間に発生する新規磁気秩序に関する研究にも着手している。 今後、さらに良い結晶性や高い強磁性転移温度の実現を目指した試料作製方法の最適化や、これらの系における磁性発現メカニズム、および、半導体基板への偏極スピン注入の詳細を調べることで、FeTe薄膜の半導体スピントロニクスへの応用への実現につながることが期待される。また、昨年度購入したAVC社製高温セルの準備も整っており、本装置が稼働することでCoの添加も行えるという状況である。 これらの結果を踏まえて、本課題は「おおむね順調に進展している」と、判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題の目的は、半導体スピントロニクスにおけるスピン流注入源等への応用が期待される遷移金属カルコゲナイド、主に分子線エピタキシー (MBE) 法を用いて作製されたMnTe、CrTe、FeTeにCr、Mn、Fe、Co等の異種磁性元素をドープすることによって実現される新規物質系を対象として、その磁気特性および伝導特性の詳細を明らかにすることである。 今後はさらに母体と添加する遷移金属元素の組み合わせを変えることで、多くの三元遷移金属カルコゲナイドを作製し、系統的なな知見を得ることを目的とした研究を行う。 それらの基礎研究を並行し、特に今後は半導体スピントロニクスへの実際の応用を見据え、実際にそれらを磁性電極とした半導体デバイス構造を作製し、半導体へのスピン偏極キャリアの注入効率を評価する。評価法としてはスピン偏極LED構造および巨大磁気抵抗効果を利用した4端子非局所測定法を用いる予定である。 これらの実験を通じて得られた結果を、さらなる高機能材料の作製およびデバイス構造最適化にフィードバックさせることで、デバイスの高効率 (偏極率) 化を目指し、将来のスピントロニクス応用への可能性を調べる。 さらに、走査トンネル顕微鏡や透過型電子顕微鏡による原子スケールの観察手法や光電子分光法ややフォトルミネッセンス等の実験等も併せて行うことで、未知の部分が多い三元遷移金属カルコゲナイドの磁性発現メカニズムの詳細を解明する。
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