2022 Fiscal Year Annual Research Report
新規ハーフメタル三元遷移金属カルコゲナイドの作製とスピントロニクスへの応用
Project/Area Number |
20K04558
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金澤 研 筑波大学, 数理物質系, 助教 (60455920)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 磁性半導体 / スピントロニクス / 分子線エピタキシー / 遷移金属カルコゲナイド / ハーフメタル / 遷移金属化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、半導体スピントロニクスにおけるスピン流注入源等への応用が期待される遷移金属カルコゲナイド、主に分子線エピタキシー (MBE) 法を用いて作製されたMnTe、FeTe、CrTeにCr、Mn、Fe、Co等の異種磁性元素をドープすることによって実現される新規物質系を対象として、その磁気特性および伝導特性の詳細を明らかにすることを目的として研究を行っている。 最終年度に当たる令和4年度は、主にGaAs(001)基板上に成長したCr添加MnTe薄膜およびMnTe/CrTe多層膜を対象とした研究を行った。その結果、Cr添加MnTeは400℃以上の成長温度の場合、NiAs型の結晶構造をもつ(Mn,Cr)Teが広範囲にわたって形成されていることがXRD測定から示唆された。また、その磁気特性は室温以上の転移温度をもつ強磁性を有することが示唆された。さらに伝導特性の評価から、Cr組成9.09%の試料で2Kにおいてヒステリシスを有する負の磁気抵抗効果が確認された。この頂点間の磁場はM-H測定における保磁力とよい一致を示しており、試料中を流れるキャリアの伝導特性が(Mn,Cr)Teの磁化特性の影響を大きく受けている可能性が高いと示唆される。またMnTe/CrTe多層膜では反強磁性半導体MnTe薄膜と強磁性化合物CrTe間に交換バイアス効果による磁化のピン止め効果が存在すること、並びに、異なる多層膜構造を用いることでその特性を変化させることができることを明らかにした。 これらの結果は、半導体基板上に強磁性遷移金属カルコゲナイドをエピタキシャル成長しその磁性を制御可能であることを示している。今後、試料作製方法の最適化や、磁性発現メカニズムの詳細、および、GaAs基板領域へのスピン注入効率の評価等を行うことで、半導体スピントロニクスへの応用への実現につながることが期待される。
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