2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K04566
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
宝田 隼 関西大学, システム理工学部, 准教授 (40637089)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 相転移メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は走査型プローブ顕微鏡の微視的な物性評価技術により強誘電高分子膜の分極反転及び相転移はどこから始まりどのように広がっていくのかを明らかにすることである. 本年度までにカンチレバーの接触共振により測定精度を向上させた.これにより従来のPFMでは信号が小さく分域構造が把握できない未分極領域においても分域構造を把握できる可能性を得た.本技術により従来のプローブ顕微鏡の弾性,圧電性測定より10倍以上の精度が期待できる. さらに接触共振型PFMを用いて強誘電高分子P(VDF/TrFE)の微少領域における分極度合を観察した.温度を増加させながらその場の環境下で観察することでその高分子の脱分極度合を解析した結果、粒子毎に異なる温度で脱分極が生じていることがわかった.観測領域における脱分極領域の割合分布を解析した結果、結晶化温度付近からある温度幅を持って脱分極領域が増えていくことがわかった.本結果は脱分極電流等の巨視的な測定結果を概ね一致する.これらのことから,相転移は粒子毎に生じ,粒子の集合体は結晶化温度付近で温度幅を持って統計的に相転移していることが考えられる.本研究成果により,本膜をメモリとして活用するための記憶密度,温度耐性等の指標を提供することとなり,未来のIoT社会の身に着けることのできるフレキシブルなデバイスが持つ膨大なデータを支える次世代のメモリとして活用することにつながる. また接触共振型PFMを用いて生分解性の高い高分子の粒子の電気圧力応答を観察した.高分子を熱処理する時間を増加させることで,粒子が大きくなり電気圧力応答も大きくなった.本高分子が圧電性を有することを示唆しており,巨視的に圧電性を発現させることで,生分解性が高く環境に配慮したセンサへの応用が期待できる.
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