2021 Fiscal Year Research-status Report
白金酸化物積層膜の還元過程と高温情報センシング応用
Project/Area Number |
20K04571
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
島 隆之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 上級主任研究員 (10371048)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 酸化物 / 還元 / 情報記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
還元が容易な酸化白金(PtOx, x≦2)と熱的に安定な酸化物(SiO2やTiO2など)の各薄膜を積層した構造において、酸化白金の還元過程および還元前後の熱的安定性について評価を行う。コールドストレージ用途の光記録媒体において、記録保存の長寿命化に求められる仕様の学術的な理解を深めるほか、AI・IoT社会および低炭素社会の到来でニーズが高まる情報センシングへの応用を図る検討を行う。令和3年度は主に後者のガス検出を行う研究を実施した。ガスの種類としては、ニーズおよび容易に得られることを考慮して、エタノールガスを選択した。試料は、合成石英基板上に酸化白金と酸化錫(SnO2)の各薄膜をスパッタリング法で積層した後、600℃で1時間の熱処理を空気中で実施した。ガス検出の特性評価を行うため、電気回路を含む実験系を新たに構築した。令和2年度に準備した試料加熱時の光学特性変化を測定する装置を用いるなどして、作製した試料の光学特性や結晶性などの評価を行った。その結果、熱処理後は積層構造の酸化白金は還元して白金となり、酸化錫は結晶性のある状態となることが示された。酸化錫はもともとガス検出が可能な半導体材料として知られる。積層構造では還元した白金の触媒作用により、白金がない場合に比べて、ガス検出の感度が約3倍に向上することがわかった。得られた成果は論文としてまとめる計画である。令和3年度はまた、積層構造にレーザー光加熱を行うための装置の準備を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
社会情勢を鑑みて、情報センシングへの応用を検討する研究を優先して進めた。ガス検出の特性評価を行うための実験系構築と、成膜用スパッタリング装置の不具合により、研究の進展にやや時間を要したが、令和3年度内に酸化白金を含む積層構造が効果的となる成果を得るまでに至った。
|
Strategy for Future Research Activity |
レーザー光加熱を行う装置の構築を急ぎ完成させ、酸化白金を含む積層構造に記録および加工のパターニングを行うことから、残る情報記録および情報センシングに係わる研究を進める。試料表面に自動で焦点合わせを行う機構とXY軸移動ステージの組み合わせから、記録および加工の試験を系統的かつ広範囲に実施できるようにしていく。
|
Causes of Carryover |
次年度使用が生じた主な理由は、研究進捗状況の遅れから、レーザー光加熱を行う装置の構築に必要な物品等の購入を令和3年度は見送ったためである。同装置の構築のため、主に対物レンズやカメラ等の光学部品を購入するために使用する計画である。
|