2021 Fiscal Year Research-status Report
有機半導体の溶融転写成膜における融液流動過程の解析
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20K04576
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
市川 結 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (80324242)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 有機薄膜トランジスタ / 有機半導体 / 薄膜作製法 / 溶融 / 転写 |
Outline of Annual Research Achievements |
メニスカス力の測定:溶融転写で成膜した有機半導体薄膜の表面には「へこみ」があることが分かっている。転写フィルムは薄いポリイミドフィルムであるため,メニスカス力によって「たわみ」が生じ、結果として転写膜の表面が「へこむ」ためであることが、ポリイミドフィルムの変形に対する材料力学的解析で明らかにしている。メニスカス力は、融液のメニスカス形状に依存するため、基板やフィルムに対する親和性を変えるため、アルキル鎖長のことなる6つの材料について、メニスカス力を求めた。アルキル鎖が長くなるとメニスカス力が増加することが明らかになった。また、鎖の炭素数の偶奇がメニスカス力に影響する可能性も明らかになった。 有機半導体融液がメニスカス力によって押し広げられていく様子の解析:基板と転写フィルムの間にある有機半導体が加熱によって融解すると、その融液は基板と転写フィルムの間を広がっていく。広がり過程は数十から数百秒で起こる。この融液が広がっていく様子をビデオカメラで撮影し、そのダイナミクスの解析を試みた。融液の広がりを、融液の外周にある気液界面であるメニスカス面を融液が通る流速を用いて解析した。流速は、広がり開始直後が最も速く、数秒で数分の1程度にまで低下するが、その後100秒以上かけてゆっくりと0になっていくことが分かった。数種類の材料について同様の解析を行い、材料によって流速変化が異なることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メニスカス形状の観察、メニスカス力の測定、これら2つの研究項目では、予定通りの進捗を得ている。また、有機半導体融液の広がりに過程の観察と解析で当初計画以上の進展が得られた。一方、分子配向測定と膜のひずみの評価では進展が得られなかった。以上から、全体としておおむね順調に進展していると考えている。メニスカス力の測定と、有機半導体有機液の広がり解析について、学会発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. メニスカス力の測定(2022年度):転写条件が与えるメニスカス力の解析に大きな影響を与えることが明らかになっているので、精密な条件設定を行い、メニスカス力を定量化する。さらに、非対称構造の分子も含めて多数の材料について、メニスカス力の違いを明らかにする。 2. 有機半導体融液の表面張力の定量(2022年度):メニスカス力は、架橋液体の表面張力できまるメニスカスの形状と関係づけられる。加熱溶融可能ないくつかの有機半導体について、融液の表面張力を求め、データを蓄積する。 3. 分子配向測定(2022年度):これまでに、転写成膜時の流動方向とリンクした面内配向が現れることを見出している。種々の条件で溶融転写を行い、転写膜の微小角入射広角X線散乱(GI-WAXS)測定を行い、転写成膜条件と面内配向の関係を明らかにする。用いている有機半導体は一次元性が高い分子構造であるため、流動による配向が起こっている可能性が高いと考えている。 4. 膜のひずみの評価(2022年度):転写膜には、メニスカス力に起因するひずみ、応力が残留する。また、加熱と冷却を行い成膜するため熱膨張率の違いに起因するひずみ、応力も残留する。メニスカス力は膜厚方向、熱サイクルは膜面内方向のひずみと応力の原因となる。膜厚方向は圧縮ひずみ、膜面内方向はひっぱりひずみと予想されるため、2次元GI-WAXS測定による面外および面内のひずみ評価を行う。ひずみは分子間距離に影響するためひずみとキャリア輸送特性の関係を解析する。
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Research Products
(3 results)