2021 Fiscal Year Research-status Report
高Q値有機結晶ウィスパリングギャラリーモード共振器の狭線幅スペクトル形状の解析
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20K04577
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
阪東 一毅 静岡大学, 理学部, 准教授 (50344867)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リング共振器 / ウィスパリングギャラリーモード / 有機結晶 / フーリエ分光 / Q値 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の2020年度に有機リング結晶からのウィスパリングギャラリーモード発光のフーリエ分光を行うために、すでに構築済みだった顕微発光分光システムにマイケルソン干渉計を追加構築した。実際に単一の有機リング結晶からのウィスパリングギャラリーモード発光をフーリエ分光測定することによってスペクトルが再現できることを確認した。しかし、干渉計への取り込み強度の効率が不十分のためノイズが多く、またバックグラウンド連続スペクトル発光が大きく乗る問題があり、狭線幅発光を精密に再現するには問題があることがわかった。 このため、2021年度はノイズを減らすため十分な発光強度が検出できるようにシステムの改良を行った。具体的には光学系全体の光学調整を抜本的に見直しシステムの限界まで検出効率を改善することと、さらに計測時間を大幅に伸ばすことで検出強度を上げることを試みた。前者の改善については、光学系を再度組み直し、各光学素子の位置・角度が最適化するように細心の注意を払って調整を行った。後者の計測時間増加について、もともと有機結晶が励起用紫外光源の照射に対して材料劣化が生じることが知られていたため、劣化が生じない程度の短時間で計測を行うことを前提としていたが、試料劣化を防ぐことで計測時間を延ばす試みを行った。実際には大気中の酸素が紫外光励起下で有機結晶を劣化させるため、試料を窒素ガス雰囲気中で計測できる新たなシステムを構築した。 その結果、前者の改善により検出効率が大幅に改善する結果が得られた。さらに窒素ガス雰囲気中で実験を行うことで試料劣化を防ぐことに成功し、計測時間を1桁程度増加することに成功した。これらの改善によって計測ノイズが大幅に低下し、分光器分解能よりも狭い線幅のスペクトルを再現することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度までに判明していたフーリエ分光測定結果のノイズが、二年度目に行ったシステム全体の検出効率の改善と試料劣化の改善により、大幅に減ることが分かり、実際に分光器の波長分解能より狭い線幅のスペクトル取得に成功した。これによりフーリエ分光法の優位性が確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
フーリエ分光システムのS/N比が改善したため、今後は有機リング結晶を多く観測し分光器分解能以下の線幅を持つスペクトルの精密な形状を解析する。その際、単一のスペクトルピークについては、スペクトル形状がローレンツ形状かどうか、あるいは群屈折率による非対称形状かどうか、室温などの環境の時間変動に伴う効果が含まれているかなどを調べる。また複数の異なる横モードが近接し単一ピークに分解できないスペクトルについて、干渉強度に複数ピーク由来のうなりが生じていないか、そのうなりによってピーク間隔を見積もることができないかなどを試みる。
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Research Products
(7 results)