2020 Fiscal Year Research-status Report
希土類水素化物半導体から構成される薄膜トランジスタとその1Sバンド超伝導
Project/Area Number |
20K04583
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
中村 修 岡山理科大学, 研究・社会連携センター, 教授 (60749315)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花尻 達郎 東洋大学, 理工学部, 教授 (30266994)
酒井 政道 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (40192588)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 希土類 / 水素 / 半導体薄膜 / 薄膜トランジスタ / 4f電子 / イットリビウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、①希土類水素化物半導体をチャネル層に用いた電界効果型の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下TFT)を製作し、②そのチャネル層に正孔を誘起して(価電子帯に擬フェルミ準位を置き)水素1sバンド伝導による超伝導の実現を図ることを目的として研究をスタートさせた。 研究対象とする希土類水素化物はYbH2膜及びYH3膜である。後者のYH3膜は比較対照とする半導体であり、研究分担者がデバイス化に関して先行した研究をしている。今期は、YH3-TFTの動作が確認される一方で、トランジスタ動作を繰り返しによって水素が離脱することなどが判明した。前者の造YbH2は電子構造に関する情報が不足しているために、2020年度に再評価をおこなった。その結果、4f準位が価電子帯と伝導帯の間にあること、バンドギャップは約1.45eVであることが新たに判明した。又、バンドギャップ以上の吸収はバンド計算との対応から4f準位に起因すると思われる。更に(バンド間遷移ではないので当然のことではあるが)吸収係数の光学エネルギー依存性は、間接遷移、直接遷移でもせつめいできないことが判明した。 YbH2膜に関するこれらの結果を踏まえ、申請時には考慮していなかった4f準位の効果も取り入れた研究テーマに方向性を修正した。すなわち、YbH2の高圧下の輸送特性評価も研究のターゲットに追加した。 又、本研究ではPtキャップ付きYb膜を使用して水素素化物半導体YbH2膜の作製をしているが、ある温度以上(300~350℃)では、PtはYbH2層に拡散し、光学特性においてバンド端より低い波長領域特性に大きな影響を及ぼすことが判明した。YbH2-TFT作成にはPt除去プロセスが必要であるために、PtのYbH2膜への拡散の少ない水素化温度が重要であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
上述するように、本研究では、①希土類水素化物半導体をチャネル層に用いた電界効果型の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下TFT)を製作し、②そのチャネル層に正孔を誘起して(価電子帯に擬フェルミ準位を置き)水素1sバンド伝導による超伝導の実現を図ることを目的として研究をスタートさせている。 研究対象とする希土類水素化物膜はYbH2及びYH3であるが、後者のYH3膜のTFTの評価は研究分担者がデバイス化に関して先行した研究を順調に進めている。一方のYbH2膜のTFTに関しては、上述した電子構造の研究と平行して、TFT製造プロセス開発を本格的にスタートさせた。本研究ではPtキャップ付きYb金属膜を水素化することによって、希土類水素化物半導体であるYbH2膜を得ている。したがって、薄膜トランジスタ(TFT)を作るためには、Ptキャップ層の希土類Yb膜素化後の除去プロセスが重要である。 Pt膜は数nm程度であるために、簡易スパッタ装置改造品を使用しての逆スパッタにより簡単に除去できると当初考えていたが、実は、極めて困難であった。結果的には、問題はほぼ解決したが、この解決に半年ほどの時間を要した。結果的にそれが半年ほどの遅れの原因となった。 ただし、アッシング装置の酸素ガスをアルゴンに変えた程度の装置で数nmのPt膜を除去可能としたことは、画期的でもある。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したPtの除去プロセスがほぼ確立したために、次のステップとして①YbH2膜の輸送特性を評価を行う。すなわち、YbH2膜単体膜で電気伝導度測定、ホール効果や磁気抵抗など評価を行う。ホール効果、磁気抵抗の評価は主として、分担者である埼玉大 酒井教授が行う。これら輸送特性の評価によりエンハンスメント型TFTに好適な水素化処理条件を決定する。 その後②ゲート電極にはSi基板を使用したチャネル長は200μm程度の金属マスクを使用したTFTの試作を行う。2021年度内にTFTの動作確認をする予定。 2020年度の研究からバンドギャップ以上の吸収は4f準位に起因すると思われる。これらの結果を踏まえ、申請時には考慮していなかった4f準位の効果も取り入れた研究テーマに方向性を修正した。すなわち、YbH2の高圧下の輸送特性評価も研究のターゲットに追加した。そのための高圧実験も2021年度内に開始する予定である。
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Causes of Carryover |
一部、抵抗測定用のジグの設計が遅れたため。2021年度より輸送現象評価に使用する予定。
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Research Products
(3 results)