2020 Fiscal Year Research-status Report
Realization of low-magnetostriction and low-magnetic noise in Heusler alloy based giant magnetoresistive sensors
Project/Area Number |
20K04588
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
中谷 友也 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, 主任研究員 (60782646)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 恭 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50335379)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 巨大磁気抵抗 / ホイスラー合金 / 磁歪 / 磁気センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代ハードディスクの再生ヘッドへの応用が期待される、ホイスラー合金を用いた面直電流巨大磁気抵抗(CPP-GMR)センサ素子において磁歪の低減を試みた。 まず、Co2MnGe, Co2(Mn0.6Fe0.4)Ge, Co2Mn(Ga0.5Ge0.5)の3種のホイスラー合金の多結晶薄膜をシリコン基板上に作製し、磁歪定数を光てこ法で測定した。いずれの合金も20-25ppmの正の磁歪定数を示した。この値は、一般にゼロ磁歪が要求される、再生ヘッドの自由層としては大きすぎる。 そこで、これらの合金のなかで最大の磁気抵抗比を示す、Co2(Mn0.6Fe0.4)Geの上部に、負磁歪をもつNiを積層した構造の磁歪定数を測定した。Niの積層により自由層の合計の磁歪定数を低減できることが分かった。その効果はNi 1 nmごとに-5ppmであった。しかしながら、同時に磁気抵抗比が大幅に低下してしまう問題に直面した。これは、ホイスラー合金層にNiが拡散することによる効果であると思われる。そこで、CoFeBTaなどアモルファス材料をCo2(Mn0.6Fe0.4)GeとNiの間へ挿入することで、磁気抵抗比を維持したまま磁歪定数を低減することに成功した。この成果により、再生ヘッド応用への重要課題を一つクリアできるものと考えられる。 また、ホイスラー合金を用いたCPP-GMRセンサのみならず、より広い磁気センサ応用の観点から、面直巨大磁気抵抗(CIP-GMR)センサにも研究を展開した。CIP-GMRにおいては、Fe-Co-Ni/Cu多層膜にNiFeCr合金を下地層に用いることで、GMR比が改善されることが知られているが、その微視的メカニズムの一端を解明し、論文を投稿した。また、実用センサへの展開が見込まれる系について特許を出願した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁気センサ構造における磁歪の低減のための実用的な手法を見出し、CIP-GMRについての磁気センサへの展開については計画以上に進んでいる。一方、ホイスラー合金そのものの磁歪定数と組成・構造の関係、および磁気ダインピングとの関連については今後の課題であり、総合的には順調に進展していると評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
負磁歪材料の積層というエンジニアリング的手法によらず、ホイスラー合金の磁歪を本質的に低減する合金の開発を目指す。磁歪は理論的に予測困難(磁化による格子定数の変化がppmオーダーであり、第一原理計算の誤差範囲となってしまう)であるため、実験によって探索するほかないが、現在までの様々な強磁性体の磁歪の知見から、磁歪コントロールの何らかの指針を得ることができると予想される。それに基づいて、薄膜試料を作製し、系統的な実験をおこなう。合わせて磁気ダンピングの評価をおこない、ホイスラー合金系における磁歪と磁気ダンピングの決定要因を解明することを目指す。
|