2021 Fiscal Year Research-status Report
硼素イオン注入による絶縁性GaN結晶層を用いた超低損失パワー素子の高破壊耐量化
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20K04590
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
三浦 喜直 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (90828287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沈 旭強 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 総括研究主幹 (50272381)
中島 昭 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (60450657)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 窒化ガリウム / 縦型パワーデバイス / 高耐圧 / 終端構造 / 電界緩和 / イオン注入 / 硼素 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に試作した一様なアクセプタ濃度を持つ単純な終端構造(single-JTE)を改良し、終端部の外側に近づくほどアクセプタ濃度が減少するgraded-JTE構造に発展させることで、電界緩和設計およびアクセプタ濃度制御性のマージン拡大を試みた。シミュレーションにより、終端耐圧のアクセプタ濃度依存性が小さくなるメリットを確認できた。実用性のあるプロセスとするため、硼素イオン注入領域を分割して終端部外側に近づくほど開口幅を拡げるレイアウトとし、一回のイオン注入でgraded-JTE構造を形成できるようにした。チップ試作で硼素ドーズ振りをした結果、本構造の耐圧の硼素ドーズ量依存性は、single-JTEに比べて顕著に小さくなり、本構造による設計マージン拡大の効果を確認できた。繰り返し電圧掃引によるアバランシェJ-V波形(J~3 A/cm2)の安定性を確認できた。 次に4インチ自立GaN基板上にgraded-JTE構造のpnダイオードを試作した。ウェハ内全面で正常動作し、最大耐圧はウェハ中央部でVb=1450Vであった。ウェハ面内の耐圧Vbおよび実効ドナー濃度Ndは円対称に分布し、VbはNdで決まることがわかった。Vb-Nd相関プロットは、1次元の理想pnダイオードのVb-Nd理論カーブに近く、本終端構造の耐圧がGaN本来のアバランシェ機構で決まることが示唆された。 一方、本終端構造を持つpnダイオードではC-V特性の周波数依存性が観測され、硼素イオン注入に伴う欠陥が素子の特性安定性に及ぼす影響が懸念された。そこでイオン注入したn型GaN表面に形成したショットキー障壁ダイオード(SBD)を評価したところ、Poole-Frenkel機構による電流特性が観測され、その温度依存性解析から欠陥準位は電子トラップを形成し(Et~0.6 eV)、欠陥準位密度低減が課題となることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画記載の項目のうち①と②は初年度に完了しており、2021年度は③(高抵抗化した硼素注入結晶層の評価)をほぼ完了することができたため、「概ね順調に推移している」とした。 研究実績の概要で述べた内容のうち、下記に述べる3点は、項目③の記載事項の内容とほぼ重なっている。すなわち、(i)硼素注入によるpエピ層の高抵抗化によりpn終端構造の耐圧を大幅に向上した点、(ii)graded-JTEの試作・評価により硼素注入によるアクセプタ濃度制御性のマージン拡大を実証できた点、および(iii)チップ試作・ウェハ試作によってアバランシェJ-V波形の安定性を含む十分に高耐圧なpn終端構造が達成できた点、の3点である。よって項目③はほぼ完了できたと考える。ただし、項目③の硼素注入したpエピ層中の実効的なアクセプタ濃度の推定は課題として残っている。 なお、研究実績の概要で述べた、素子の特性安定性に影響する可能性のある硼素注入起因欠陥の評価は、JTE効果を引き出すpエピ層の高抵抗化機構にも関連している可能性があり、内容的に項目④(絶縁化~高抵抗化のメカニズム検討)に含められる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度までの研究は、上記に述べたように概ね順調に進んでいる。現時点では大きな計画変更はせず、項目③のうち課題として残っている実効的なアクセプタ濃度の推定、および項目④(絶縁化~高抵抗化のメカニズム検討)を進めていく予定である。2021年度の研究から特性安定性に課題があることがわかったため、硼素注入プロセス条件の補正または改善をしながら、電子物性評価によるメカニズム検討を進める方針である。
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Causes of Carryover |
昨年度中に使用を予定していた役務(イオン注入工程の外注)が、試作ロットプロセスの進捗遅延により急遽実施できなくなったため、繰り越し額が発生した。繰り越した助成金と新年度に請求した助成金を合わせた額は、昨年度と同様に、役務(外注工程、外注分析)および消耗品の購入に充てる計画である。
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Research Products
(5 results)