2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of RFID using human body communication
Project/Area Number |
20K04593
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 健 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (40178645)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | RFID / ウェアラブル機器 / 人体通信 |
Outline of Annual Research Achievements |
ICカード等で用いられているRFID技術は通信できるデータ量は小さいが,リーダ/ライタ側からカード側(一般にタグと称される)に非接触で電力を供給しながら通信を行うのでカード側に電池は不要である.既存のRFIDは電磁誘導または電磁波を用いているが,本研究では人体通信を利用したRFIDの実現を目標とする.人体通信は人体に接触させた電極を介して人体内部の電流と人体周囲の静電結合によって高周波信号を伝送する技術であり,ウェアラブル機器や使用者が触れる周辺機器との通信に適している.本技術が実現できれば,日常的な充電を行わない腕時計やヘルスケア分野で普及が進んでいる生体情報センサ等において通信電力が不要となる.本研究の課題は,人体通信によってタグ側に動作に必要な電力を供給できること,およびリーダ/ライタ側からタグ側のデータの読み書きができることの2つである. 令和2年度は1つ目の課題について数値電磁界解析と実験により電極形状や配置と受信電力量の関係を評価した.腕時計型機器にRFIDのタグが内蔵され,据置型リーダ/ライタに手で触れる状況を想定した.数値電磁界解析の結果,電極間距離が大きいほど受信電力は大きく,受信電力が最大となる電極間インピーダンスが存在することが分かった.具体的には,タグ側電極として10×30mmの電極を2枚外寸54×30mmに配置し,周波数21MHz,振幅2Vppの信号を出力するリーダ/ライタの電極を指先で触れた場合,受信電力の計算結果は約7μWであった.実験では同じ電極サイズを用い,周波数12.8MHz振幅2Vppの信号を用いて約1μWの電力供給が確認できた.これはRFIDの起動と動作に必要とされる目標供給電力約20μWより小さいが,更なる条件の最適化,リーダ側電圧の増加,受信電力を充電してから動作させる,等の工夫により達成できるレベルと考えている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度の研究計画は,人体通信を利用したRFIDの1つ目の課題である電力供給の可能性を評価することであった.電磁界解析と実験においては,腕時計型機器にRFIDのタグが内蔵され,腕時計を装着した側の手で自動改札機のような据置型リーダ/ライタに触れる状況を想定した.数値電磁界解析においては手首に接触させる2枚の電極の大きさと電極間距離を変化させて受信電力を評価した.その結果,電極間距離が大きいほど受信電力は大きく,また受信電力が最大となる電極間インピーダンスが存在することが分かった.解析した条件の範囲で受信電力が最大となったのは,タグ側は10×30mmの2枚の電極を外寸54×30mmに配置し,周波数21MHz,振幅2Vppの信号を出力するリーダ/ライタの電極を指先で触れた場合で,約7μWの電力を受信できることがわかった.電力が最大となった時のタグの電極間インピーダンスは80Ωであった.実験では共振回路と整流回路で構成されたタグ側の回路に電磁界解析と同じサイズの電極を接続し,ファンクションジェネレータで発生させた周波数12.8MHz振幅2Vppの信号電極を手で触れ,約1μWの電力供給が確認できた.電磁界解析と実験で得られた受信電力は,RFIDの起動と動作に必要とされる目標供給電力約20μWよりまだ小さいが,今後更なる条件の最適化,リーダ側電圧の増加,受信電力を充電してから動作させる,等の工夫により目標を達成できるレベルである.以上により,研究は当初の研究計画に沿っておおむね順調に進展していると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画に大きな変更は無い.令和3年度からは令和2年度の結果に基づき受信電力をさらに大きくする改良とともに,2つ目の課題である負荷変調によるデータ送信と復調の実験を進める. タグ側の電力受信回路の基本構成は比較的単純であるが,高周波回路であるためコイルの浮遊容量の影響など,事前の計算では評価できない設計パラメータがある.今後は昨年度の結果を分析し,より系統的な実験計画を策定し,回路の改良を進めていく.電力受信回路の改良は当初の予定よりやや手間がかかる見通しである. 負荷変調の実験回路は負荷変調と復調に特化した回路として製作する.負荷変調はタグ側回路の一部を切り離したり短絡したりしてリーダ側から見たインピーダンスを変化させるが,インピーダンス変化が最大となるタグ側回路の部分を特定することが最大の課題である.負荷変調の復調の部分は確立されている技術であり,実験回路の製作に特に問題は生じないと考えている.
|
Research Products
(1 results)