2021 Fiscal Year Research-status Report
災害時フレキシブル無線電力伝送用受電デバイスの研究開発
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20K04594
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
石川 亮 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (30333892)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高周波 / マイクロ波 / 無線電力電送 / 整流器 / 広ダイナミックレンジ / トランジスタ大信号モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、頻発化・激甚化する自然災害に伴う電力供給の寸断に対して、それを補う技術として期待されるマイクロ波無線電力伝送技術に関し、マイクロ波電力を直流電力に変換するために用いられる整流器の共通課題である電力変換効率の入力電力変動による大幅な効率低下を解決すべく、電力供給量に応じて能動的に変換効率の最適化を行う新たな構成を有する高効率整流器デバイス開発を目指すものである。 研究2年目である今年度は、初年度に実施した、GaAs HEMT素子の整流動作に最適化させた大信号モデルを構築するための問題点の洗い出しの結果を踏まえ、既存の高周波増幅器用のトランジスタ大信号モデルをベースに、新たに高出力動作が可能なGaN HEMT素子に対して整流動作用大信号トランジスタモデル構築を実施した。低電力高周波入力時の動作を再現するために重要となる直流電流・電圧特性の原点付近の特性の再現性と、入力電力増加時の特性の再現性との両立を、既存の非線形電流源モデルを非線形抵抗モデルに変換しつつ簡単な関数を追加することで実現し、また、増幅動作時用のトランジスタモデルでは含まれていなかったゲート・ドレイン間順方向ダイオード電流成分を追加することで、高入力時に効率が急激に低下する現象を再現することができた。以上より構築した大信号モデルを用いて実際に整流器を設計・試作し、2.35 GHzにおいて、高周波入力電力22 dBm、ゲートバイアス電圧-3 V の条件に対して82%の高い高周波/直流電力変換効率を達成し、さらに、ゲート電圧を-2.5Vから-3.5Vの範囲で調整することで、7 dBmから30 dBmの高周波入力電力範囲で60%以上の高周波/直流電力変換効率を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、これまでに試作した低電力で高効率となるように設計したGaAs HEMT整流器において確認された、高周波入力電力の増加に伴いゲートバイアス電圧を低下させることでインピーダンス整合条件が維持され、高効率動作が広い入力電力範囲で維持されるという効果が、高出力動作が可能なGaN HEMT素子でも成立するかを確認すべく、大信号トランジスタモデルの抽出から実施した。使用したGaN HEMT素子は高周波増幅器用にベンダーがモデルを提供しているが、ドレイン電流・電圧静特性において、増幅器が第一象限でしか動作しないのに対し、整流器は第一および第三象限で動作し、第三象限での精度が良くないという問題点があった。さらに、低電力動作では原点近傍の精度が必要であるが、増幅器の動作点は通常原点から離れた位置となるため、原点近傍での精度が良くないという問題点があった。そこで、概要で記したように、既存の高周波増幅器用のトランジスタ大信号モデルをベースにしつつ大信号回路シミュレーションの収束性への影響を抑えるために比較的簡単な関数を追加することで、フィッティング精度を向上させることに成功した。また、GaN HEMT素子は大信号動作が可能であるために寄生容量の非線形性が回路の整合に影響を与えることが予想されており、整流動作の範囲内でフィッティングを行うことで、関数を複雑化せずに非線形特性を組み込むことに成功した。この構築した大信号トランジスタモデルを用いて整流器の設計した。整流器はこれまで試作した整流器と同様のゲート・ドレイン間帰還容量を介したセルフスイッチング構成であり、高効率動作を実現するために、基本波周波数に加え、2次高調波のインピーダンス調整をゲート側およびドレイン側に対して施し、概要に記した良好な性能を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題としては、今回試作したゲートバイアス調整でダイナミックレンジ調整可能であるGaN HEMT整流器に対し、高周波入力電力の大きさに応じて適切なゲートバイアス電圧を供給する専用の整流器の開発を実施する。 今回試作したGaN HEMT整流器では、ゲート電圧が-2.5Vから-3.5Vの範囲と、負の値でかつ絶対値が比較的大きい値の電圧を生成する必要がある。そこで、これまで行ってきたトランジスタ整流器以外に、ダイオードを用いた整流器に関しても検討を行う。ダイオードを用いる構成では、ダイオードを複数用いた倍電圧発生回路等の直流出力電圧を増加させる手法があるため、今回の周波数帯に対して適切な構成を探し出し、なるべく小さい入力電力で所望の負電圧を発生させる整流回路の実現を目指す。その後、今回試作したGaN HEMT整流器と組み合わせて、セルフアダプティブ動作が可能な広ダイナミックレンジGaN HEMT整流器の実現を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響で学会等がリモートになり旅費がかからなかったことが原因の一つである。 また、消耗品において、一部、既存のものを使用したため、想定よりも少なくなった。 一方で、今後、試作・評価を積極的に行うことを予定しており、それにかかる消耗品を予定よりも増強して購入する。
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Research Products
(1 results)