2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of high efficiency and wide input / output voltage range power supply circuit with intermittent operation for energy harvesting
Project/Area Number |
20K04597
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
佐藤 隆英 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10345390)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | スイッチング電源 / エナジーハーベスティング / 高効改善 / 小面積化 / チャージポンプ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、数mWから数十mW程度の発電能力を有する発電素子を用いたエナジーハーベスティングに適する電源回路の集積化設計を完了させた。前年度から進めていたレイアウト設計を完成させ、寄生素子の影響を考慮したシミュレーション(ポストレイアウトシミュレーション)を実施した。ポストレイアウトシミュレーションの結果を回路設計およびレイアウト設計に反映させ、より安定性に優れた回路の設計を実現した。 電源回路の基本構成は研究代表者らが発明したスイッチング電源(特許6846762号)としている。このスイッチング電源は主要部分において電流が経由するスイッチが1個であるため、スイッチ導通時の抵抗(オン抵抗)による電力損失が最小であり電力効率に優れる特徴がある。さらに3種類の動作モード(降圧・昇圧・昇降圧)を有するため、入出力電圧に応じて適切な動作モードを選択することで効率の改善が可能である。電源回路は制御回路用の補助電源を要するが、補助電源は以下の特徴を持つ。1.入力電圧源を動的に選択可能。電源回路の主回路部分の入力電圧と出力電圧のうちより大きな電圧を補助電源の入力電圧として用いる。この制御により補助電源を構成するチャージポンプの段数を削減している。2.補助電源を構成するチャージポンプの段数を動的に変更可能。必要最小段数とすることで補助電源部分の効率を改善している。 レイアウト設計後のポストレイアウトシミュレーションにより電源回路は、動作モードの切り替え時に意図しない動作モードに陥り発振状態に陥る場合があることが判明した。これは、昇降圧モードの位相余裕が小さいこととモード移行時に制御信号のデューティ比を直前のモードから維持することに起因する。そこで各動作モードの遷移条件を見直すことで安定性を確保した。設計が完了した電源回路は効率が全条件において80 %以上であることを確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究内容は滞りなく進展しているが、令和4年度に予定していた回路試作をおこなうことができなかった。これは使用を予定していたCMOSプロセスの相乗りシャトルが令和4年度に実施されなかったことに起因する。世界的な半導体不足による生産ラインの慢性的な混雑によるものである。そのため、集積化およびその評価は令和5年度に実施することとした。実験で行う予定であった評価の一部はポストレイアウトシミュレーションにより実施し、その結果は設計内容の性能向上に活用された。先に述べた安定性向上のほか、レイアウト後に効率が低下する要因を明らかにした。 また、MEMSスイッチを用いた電源回路の設計を実施した。電源回路のスイッチに求められるオン抵抗を実現するためには非常に大きなサイズのMEMSスイッチが必要となることが分かった。まず市販されているMEMSスイッチを用いて電源回路の実現可能性を検討した。MEMSスイッチの等価回路を作成し、等価色を用いた回路設計を行い電源回路として動作することを確認した。しかし、十分な耐久性の点で課題を有することが明らかとなった。これはMEMSスイッチには保証使用回数に上限があることと、スイッチング時の電流が許容されないこと(ホットスイッチング禁止)による。今後、MEMSを用いた電源回路を実現する場合、これらの制約の解決が必要となることを明らかにした。 試作した電源回路をウェアラブル装置へ応用する際の課題についての検討も行った。発電素子として現在使用を想定している太陽電池では、発電素子の電圧が低下する時間帯が長くなる。そのため現在の入力電圧の下限値である0.8 Vを拡大する必要があることが分かった。設計した回路において入力電圧の下限を制限している回路は発振回路および補助電源である。これらの回路の入力電圧範囲の下限を拡大した回路を提案しシミュレーションにより動作の確認を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、前年度に実施できなかった電源回路の試作とその評価を行う。これまで予定している試作サービスでは令和5年度中の試作が難しい場合には別の試作サービスの利用も検討する。試作サービスを変更する場合、使用プロセスが変更となるため再設計を行う必要がある。すべての回路ブロックの再設計は困難であるため、主要な回路ブロックのみ試作を行うなどし、実験の実施を可能とする。試作内容が確定した段階で評価ボードを作成し、評価に必要な準備を行う。必要に応じて一部機能は集積回路外部の評価ボード上で実現するなど実験の実施に努める。 電源回路単体での評価として、出力電圧の評価、効率、入力電圧変動時の過渡応答、負荷変動時の過渡応答を予定している。評価はすべての動作モードについて実施する。電源回路の評価に続いて、製作した電源回路を用いて実際にエナジーハーベスティングを実施した評価を行う。発電素子には太陽電池を採用しその際の特性を評価する。これらの実験を通じてエナジーハーベストを実際に行う際の電源回路の課題を明らかにする。また、試作予定の電源回路は動作モードが変化した際に出力電圧が大きく変動することがわかっている。この変動を抑圧する新たな回路構成および制御方法を検討し、より安定性および効率に優れる電源回路の実現の足掛かりを築く。 また、令和4年度に検討を開始した入力電圧範囲の下限の拡大を可能とした電源回路の設計を完成させる。これまでに発振回路および補助電源回路の単体の動作の確認をしているが、電源回路全体の構成した際の制御方法については実現されていない。電源回路を構成した際に優位性が保たれる制御方法を検討し、その回路構成および設計手法を明らかにする。提案する電源回路をエナジーハーベストに用いた際の性能と課題を評価する。
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Causes of Carryover |
令和4年度は当初予定していた回路試作をおこなうことができなかった。これは使用を予定していたTSMC社の5V耐圧の0.18μmのCMOSプロセスの相乗りシャトルが製造会社の都合で令和4年度には実施されなかったことに起因する。世界的な半導体不足による生産ラインの慢性的な混雑が原因である。そのため、集積化およびその評価は令和5年度に実施することとした。そのため回路の集積化に必要な予算が令和5年度に繰り越している。 令和5年度は、前年度に実施できなかった電源回路の試作とその評価を行う。予定している試作サービスを用いた集積回路の製作を予定しているが、令和5年度もTSMC社の5V耐圧CMOSプロセスの相乗りシャトルが実施されるかは確定していない。そのため、同社の令和5年度中の試作が難しい場合には別の試作サービスの利用も検討する。代替試作サービスとしてローム株式会社の0.18μmCMOSプロセスなどの使用を考えている。試作サービスを変更する場合、使用プロセスが変更となるため再設計を行う必要がある。すべての回路ブロックの再設計は困難であるため、主要な回路ブロックのみ試作を行うなどし、実験の実施を可能とする。試作内容が確定した段階で評価ボードを作成し、評価に必要な準備を行う。必要に応じて一部機能は集積回路外部の評価ボード上で実現するなど実験の実施に努める。
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