2021 Fiscal Year Research-status Report
Improvement of radiation efficiency of the wideband terahertz-emitter using the spintronics device
Project/Area Number |
20K04599
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
北原 英明 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 特命助教 (20397649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷 正彦 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 教授 (00346181)
郭 其新 佐賀大学, シンクロトロン光応用研究センター, 教授 (60243995)
中嶋 誠 大阪大学, レーザー科学研究所, 准教授 (40361662)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スピントロニックエミッタ / テラヘルツ分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
磁性金属と非磁性金属のヘテロ構造(スピントロニック素子)をフェムト秒レーザーで光励起することで誘起される超高速のスピン流を起源とするテラヘルツ(THz)放射は、超広帯域特性や広い励起波長で利用可能なことから、新しいTHz波放射機構として注目を集めている。しかし、その励起パワー当たりの放射効率が低いため、実用的なTHz波放射素子として利用されるまでには至っていない。本研究では、高効率なスピントロニックアンテナを開発するため、(a)高スピン流ー電流変換効率の得られる金属の組み合わせの探索、(b)金属ヘテロ構造の最適化と作製技術の開発、並びに(c)高効率なTHz放射器の作製を念頭に研究 を進めてきた。(a)については磁性金属/非磁性金属の組み合わせについての議論を行ったが、既に多数の金属元素の組み合わせが提案されている状況であることから現状で独自の組み合わせ提案は難しく、現状では打開が難しい状況である。(b)についてはスピントロニックエミッタの動作原理からの考察で磁性金属層を極めて厚くして反射型放射器を構成すると、放射される電磁波すべてが一方向へ放射されるので放射強度を倍に増強できそうであることから、このアイデアに従い(c)として昨年度試験的なサンプルを作製した。またこの構造は大きな励起パワーに耐え得るので、再生増幅アンプのレーザー光源を用いると放射強度を一桁以上増強できる可能性がある。本年度、作製した放射器のオッシレーターによる動作実験を行ったがTHz波の放射を確認できなかった。これにはバルク鉄表面の状態が大きな影響を与えていると考えられ、表面状態の改善が必要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本プロジェクト初年度の社会情勢により多大な遅延が発生し、その影響が本年度にも与えられている。しかし、本年度は作製した交流磁場印加式のアンテナマウント作成や試料の動作試験などを行い一定の進展が見られた。鉄バルク試料の実験ではテラヘルツ波の放射を観測することができなかったが、これはバルク鉄表面の状態がスピントロニックエミッタの物性に大きな影響を与えていると考えられる。この実験に伴い、実験環境の整備を行いスピントロニックエミッタ計測用の新たな分光器を構築中である。アンテナマントに関しては、放射波の検出感度を向上させる為に交流磁場印加が可能なアンテナマウントを設計製作し動作確認を行った。変調周波数が上限500Hzまで使用できるアンテナマウントが完成し、実験に使用している。金属の組み合わせに関しては多数の報告が既になされている事も有って決め手を欠いており、検討をしてみたが具体的な候補を挙げることができていない。 予算執行に関しては初年度の遅延分を除き概ね計画通りに執行されている。
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Strategy for Future Research Activity |
スピントロニックエミッタの作製や実験については今後共進めて行く。バルク鉄試料に関しては表面状態が大きな影響を与えていると考えられるので、光学研磨など表面状態の改善を図った上で再度試験することを検討している。初年度に作製試験した厚膜アンテナ構造の試料は厚膜部がプラチナであり、鉄などと同程度の導電率を持つ。従って、テラヘルツ領域では良導体と言い難い素材であるため、依り放射強度を増加させるには金などの良導体に変えることも検討している。 金属種とその組み合わせについては継続して探索する所存である。特に、強磁性体元素の数には限りがあり、非磁性良導体元素も同様で選択肢が多くなく、何らかの異なるアイデアにより打開する必要があると考えられる。
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Causes of Carryover |
本研究は当初大阪大学レーザー研にて研究を遂行する計画で進めていたが、研究代表者が令和2年6月に福井大学遠赤外領域開発研究センターに移籍したため使用機材や研究環境の構築など状況が変化し必要とされていた機材の変更、或いは購入する必要がなくなるなど研究計画の前提その物が変わってしまった。また、コロナウイルスの流行で大学のロックアウト等が発生し、令和2年度以降の学会がキャンセル或いはネットワーク上での開催となった。これに伴い学会参加費用が発生しなかったため計画されていた予算執行ができなかった。これら予想外の状況により大幅に予算執行計画が変化遅延することとなった。上記影響は現在にも及んでおり、研究自体の進行も遅れ気味である。 今後の社会状況にもよるが、研磨費用だけでも15万円以上かかる、追加で作製する表面状態を改善したスピントロニクスエミッタの製作費用に余剰分の予算を振り向けたいと考えている。
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