2020 Fiscal Year Research-status Report
進行波型トランジスタ上の散逸ソリトンを用いた短パルス生成制御に関する研究
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20K04606
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
楢原 浩一 神奈川工科大学, 工学部, 教授 (00422171)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 散逸ソリトン / 同期現象 / 進行波型FET |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2020年度はTWFETループ上の散逸ソリトン特性についての解析的・数値的検証結果の実測による動作原理実証を主とする活動を行った。TWFETループをブレッドボードを用いて製作し,内部の任意節点電圧を非侵襲に計測し線路電圧時空間マップを構築する手法により動作原理の疑いのない実証を目的にすすめた。当初FETを始めとして試作に採用する素子を確定するとともに、外部同期実験を実施し外部信号の印加点で散逸ソリトンと外部振動の位相差が一定となるように同期が実現することを確認した。散逸ソリトンの振幅が軽微ながら変化することによって速度が変化しタイミング同期が実現されることを明確にした。この原理の確認はループ間相互同期も現実のものであることを強く示唆するものであり初年度に得るべき優先度の高い成果であると言える。 こうした非線形波動の属性を有効に生かすための予備検討をトンネル効果素子を装荷した伝送線路、発振器格子を用いて並行して実施した。TWFETはドレイン、ゲート線路の結合系であり要素的な議論を行うにあたっても複雑なモード解析を余儀なくされる。トンネルダイオード、共鳴トンネルダイオードといった二端子素子を基調とすればこの複雑さから解放され非線形波動の応用的側面の発展には有意義である。この認識のもと、空間的に展開された発振器系における自己注入同期現象に注目し位相雑音低減作用のあることを具体的に示すことに成功した。また発振器の出力合成の効率化により出力パワーの増大を期待する新しいスキームの構築にも至った。これらはTWFETによる実装も可能である。本来の目的達成を阻害しない限りにおいて、期間中に実装方式の提案ならびに数値的検証まで検討を進めるよう計画を拡張したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のとおりTWFET上の散逸ソリトンに明瞭な相互作用のあることを実測で得たことは計画全体における意義が大きい。これが確立しない場合には引き続く相互同期系の実現は不可能であるためである。一方、初年度には本来、電磁界解析プログラムカスタマイズを完了するとした。非線形容量のモデル化に望外の困難があり完了には至っていない。課題解決を急ぎ遅れの排除に全力を尽くす予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
外部同期系の成功を受けて相互同期系を速やかに実施していく。接続するループのサイズ比により生成される散逸ソリトン数の変化が予想されている。2021年度はループサイズ比1:1のTWFETについて散逸ソリトン相互同期の実測を最優先とする。FDTDモデルの不備に対しては、FDTD解析の可能なスペックの計算機を1台追加する。多くのモデルを並列に解析し、解析結果を得るまでの時間を実効的に短縮し系統化によって最適値を得る設計を進める。動作帯域を緩和することによって回路試作費を減じこれを新規マシン購入費用としたい。原理確認実証は動作周波数によらない普遍的価値を有する。これを優先するものとした。
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Causes of Carryover |
当初予定の計算機の価格が望外に安価であったことが大きい。ちょうどFDTD解析の効率化が課題となっていることから、試作経費を軽減するとともに次年度使用とし計算機購入費用に充当することがもっとも効率的であると判断したため。使用計画はしたがって、FDTD解析を目的とした計算機購入である。
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