2023 Fiscal Year Research-status Report
強度輸送方程式法による空間直交振幅変調信号光の非干渉検出に関する研究
Project/Area Number |
20K04608
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
文仙 正俊 福岡大学, 工学部, 教授 (50412573)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ホログラフィックメモリ / 強度輸送方程式法 / 畳み込みニューラルネットワーク / 部分コヒーレント光 |
Outline of Annual Research Achievements |
小型・シンプルな光学系による複素振幅変調型のホログラフィックメモリを実現するために必要な諸要素技術の開発を進めた. まず,シングルショット強度輸送方程式法による複素振幅変調信号光の非干渉検出技術について実験的検討を行った.強度輸送方程式法を利用して光波の複素振幅分布を検出するためには,異なる距離を伝搬した少なくとも2枚以上の回折光強度を取得する必要がある.本実験では信号光をビームスプリッタで分岐し,透過側のカメラは信号光のインフォーカス位置に,反射側のカメラはデフォーカス位置に設置し,これらを同期して撮像することでシングルショット撮像を実現した.この方法で検出される光波の位相分布には,通常の強度輸送方程式法で得られる位相分布と比較し,雲状の分布を有する大きな位相ノイズが重畳する.そこで,畳み込みニューラルネットワークを利用した分類器を用いると,たとえ大きな位相ノイズが存在する場合でも信号光中のデータページの高精度な復号が可能であることを実験により確認した.実験的に得られた強度および位相データページから学習およびテストデータセットを生成し,データページの復号精度を検証した.ホログラム記録再生を行わず空間光変調器により生成された信号光を直接検出し得られたテストデータセットを用いた場合は100%,フォトポリマを用いたホログラム記録再生を経た信号光を検出し得られたデータセットを用いた場合は87%の復号精度が得られ,本技術の有用性が示された. 記録ホログラムの部分コヒーレント再生法については,複素振幅変調された部分コヒーレント信号光を強度輸送方程式法により検出可能なことを実験により明らかにし,また,コヒーレント記録されたホログラムを部分コヒーレント光で再生し得られた信号光も強度輸送方程式法により検出可能なことを数値シミュレーションにより明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単一位相空間光変調器による信号光の複素振幅変調,シングルショット強度輸送方程式法を用いた信号光複素振幅の非干渉検出,複素振幅変調信号光に与えられた強度および位相データページの畳み込みニューラルネットワークによる高精度復号に関しては,数値シミュレーション,光学実験の両面から有効性が明らかとなり,順調に進展していると言える.記録ホログラムへの部分コヒーレント参照光照射による複素振幅変調信号光の再生とその強度輸送方程式法による検出についても,空間光変調器により生成された複素振幅変調信号光の強度輸送方程式法による検出が可能であることは数値シミュレーションおよび実験から明らかとなった.またホログラム記録再生された部分コヒーレント信号光の強度輸送方程式法による検出も数値シミュレーションによりその実現可能性を示すことができた.R06年度には部分コヒーレント信号光検出の更なる性能向上やホログラム記録再生を含む実験によりその有効性を示す予定である.以上より,本実験課題は概ね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
コヒーレント光により記録されたホログラムを,部分コヒーレント参照光の照射により再生し,これをシングルショット強度輸送方程式法により検出する技術について更に検討を進める.ホログラム記録再生過程も含んだ数値シミュレーションにより,部分コヒーレント信号光検出の性能向上を可能とする諸パラメータや光学配置を明らかにする.さらにフォトポリマ材料中へコヒーレント光によりホログラム記録された信号光を,スーパールミネセントダイオードを光源とした部分コヒーレント参照光により再生し,シングルショット強度輸送方程式法により検出する実験を計画している.この際,これまでに開発した畳み込みニューラルネットワークを用いた再生データページの分類復号器を利用する予定である.また,これまでの研究成果を国内・国際学会および論文誌へ発表する予定である.
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Causes of Carryover |
<次年度使用額が生じた理由> 研究進捗と参加予定学会日程等の相違により,未使用の成果発表旅費が生じたことが主な理由である. <使用計画> R06年度における学会発表や論文投稿費用等の研究成果発表費用等として主に使用する予定である.また,より精緻な研究結果を得るための実験に必要な消耗品等費用として使用する予定である.
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