2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K04611
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
服部 淳一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (80636738)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フォノン / 熱伝導 / デバイスシミュレーション / TCAD |
Outline of Annual Research Achievements |
半導体デバイスのシミュレーションにフォノン熱輸送を取り入れるために、今年度は、p型Geナノシート・トランジスタにn型Siナノシート・トランジスタを積層した相補型トランジスタを題材として必要な要素技術について研究を進めた。 これまでは専らSiを扱ってきたが、Geについてもフォノン熱輸送をTCADシミュレーションできることを確認した。すなわち、原子論的手法によってフォノン状態を計算し、得られた各モードのエネルギー、群速度などの情報を使って各モードのフォノンの伝搬をシミュレーションすることでフォノン熱輸送のシミュレーションを可能にした。 また、ナノシートにおけるフォノンはバルクのそれとは異なる。あるモードのフォノンが境界に侵入して反射される場合、モード変換が起こり、反射波は入射波とは異なるモードになることが知られている。このモード変換の繰り返しによってナノシート独自のモードが形成される。したがって、界面におけるモード変換を再現できれば、ナノシートをはじめとする種々の低次元材料におけるフォノンも再現できる。開発したシミュレータではこのモード変換に対応した。ただし、入射波と反射波のモード対応表の作成には、別途、膨大な原子論的計算が必要であることに注意されたい。 以上によって、任意の半導体材料におけるフォノン熱輸送のシミュレーションを可能にした。実デバイスに対しては絶縁体などの別種の材料との界面についても考える必要がある。これにはモード変換に加えて透過を考えることで対応した。開発したシミュレータをもって冒頭の相補型トランジスタのシミュレーションに取り組んだが、系が大きく、全面的なフォノン熱輸送のシミュレーションの実現には至らなかった。それでも、過程において相応の成果が得られ、国際会議、論文誌等にて発表することができた。
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