2020 Fiscal Year Research-status Report
Si基板上のCdTe成長層を用いたX線画像検出器の性能と信頼性向上に関する研究
Project/Area Number |
20K04619
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
Niraula Madan 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20345945)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | CdTe 厚膜成長層 / 放射線画像検出器 / 暗電流 / 検出器特性 / 安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は有機金属気相成長法によるSi基板上の厚膜単結晶CdTe成長層を用いて作製するX線検出器の感度、エネルギ―識別能力の向上と共に検出特性の長期安定化を図ることである。本年度は検出器特性の向上に妨げとなる検出器の暗電流発生機構の解明と暗電流の低減に関する検討を行った。 Si基板上でのCdTe成長では、両者の格子不整合の原因により、成長層中に高密度の転位が存在する。これらの転位は様々な準位を形成し、検出器暗電流の増加及び検出特性を劣化させる。本検討では p-CdTe/n-CdTe/n+-Siのダイオード型構造を持つ異なる膜厚の試料を用いて、成長層中の転位密度と検出器の暗電流の関連を調べた。ここではn-CdTe層膜厚は5μmと一定にし、p-CdTe層の膜厚を変更した複数の試料を作製した。その結果、10 μm以下の試料では暗電流を非常に多く、また暗電流には温度依存性も見られなかった。 一方、10 μm以上の試料では膜厚の増加に伴い暗電流は低減されると共にいずれの試料でも暗電流の温度依存性は確認できた。さらに、試料表面を化学融液でエッチングし、表面に形成されるエッチピット密度による転位密度評価を行った。その結果、 10 μm以下の試料では転位密度10~7cm~-2以上あり、試料の厚さを45 μmまで増加されると1桁以上減少することが確認できた。以上の結果から、膜厚の薄い試料ではトンネル電流が支配的であることが分かる。これは高転位領域に空乏層が広がり、貫通転位が介して流れる電流であることが考えられる。検出器の暗電流の低減のためp-n接合は転位密度の多い領域から離すことが重要である。これは、n-CdTe成長層の膜厚を10 μm 以上にすると共に成長条件の最適なにより成長層内の転位密度の低減により可能となることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で明らかにしようとしていた3つの課題の内、一つについておおむね達成できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は昨年度と引き続き、成長条件の最適化によりCdTe成長層の厚膜化、低転位化、に関する検討を行う。低転位化に関しては低温バッファ層と高温成長層に分けて2段階成長や成長中の熱処理検討を行う。さらに、n-CdTe成長層の厚膜化や高電子密度化に関する検討を行い、 空乏層面内への転位密度の低減を図る。これらの検討結果を用いて検出器を作製し、暗電流特性、放射線検出特性や特性の安定性に関する評価を行う。
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Causes of Carryover |
コロナの影響で予定していた学会参加ができなかったため。余った金額を次年度消耗品として使用予定
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