2020 Fiscal Year Research-status Report
Control of random laser emission using optical trapping
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20K04622
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡本 卓 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (40204036)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横井 直倫 旭川工業高等専門学校, 機械システム工学科, 准教授 (60353223)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ランダムレーザー / 光トラッピング / 多重散乱 / レーザー発振制御 / 空間光変調器 / モンテカルロ・シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
光トラッピングを用いたランダムレーザーの発振制御の実現を目指し、まずは従来用いられているランダムレーザー媒質用の微粒子を光トラッピングする実験を行った。レーザー媒質として、ローダミンBを溶かしたエスミール(エタノール68%、水32%)溶液中に粒径180 nmの酸化チタン粒子を分散させた懸濁液を用意した。これをスライドガラス上に0.2 mmの厚さで薄膜状に形成したものを試料とし、その下面より波長405 nmのCWレーザー光を40×、NA 0.5の対物レンズを通して集光・照射した。その結果、理論上トラップが難しい10 mWの弱強度でも集光点に粒子が移動し、捕捉されることが分かった。これは、微粒子凝集により大きな粒子となっていたことが原因と思われる。 次に、上記試料に波長532 nm、パルス幅10 ns、パルスエネルギー 6~7μJの励起光を連続パルス照射し、トラップ光のありなしでランダムレーザー発光がどのように変化するかを調査した。まず、酸化チタン粒子の体積充填率を0.1%に固定し、トラップ光強度を5, 10, 30 mWと変化させたときの発光特性の変化を調査した。その結果、いずれの光強度でも、トラップ光を照射したときに発光スペクトルの最大スパイク強度は高くなり、スペクトル中のスパイク数は増加することが分かった。また、トラップ光を消すと、徐々に元のスペクトルに戻った。次に、トラップ光強度を10 mWに固定し、酸化チタン粒子の体積充填率を0.1, 1, 10%と変化させたときの発光特性の違いを調査した。その結果、体積充填率0.1%のときはトラップ光照射により最大スパイク強度は高くなったが、他の充填率では有意な差がなかった。しかし、スパイク数はすべての体積充填率で増加した。 以上の結果より、光トラッピングを用いてランダムレーザーの発光スペクトルを制御可能であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、スペックルパターンを用いて微粒子を強度の高い部分に捕捉する実験を行う予定であった。しかし、まずは既存のレーザーでランダムレーザー媒質中の微粒子の捕捉が可能なのか、また可能であった場合、微粒子の捕捉によってランダムレーザー発光が変化しうるのかを知ることが必要と考え、スペックルパターンの複数点ではなく単一点での微粒子捕捉を試みた。結果として、微粒子の捕捉は可能であり、かつ発光特性も変えることが可能であることが示された。 シミュレーションについては、研究室保有のランダムレーザー発光シミュレータに合わせた微粒子捕捉のシミュレーションを行い、シミュレーション用媒質の作成は可能であることを確認した。ただし、実際の媒質パラメータとのすり合わせについては今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
単一集光点での微粒子捕捉、およびランダムレーザー発振制御の可能性が確認できたので、今後は微粒子捕捉パターンによる発振特性の違いに焦点を当てていく。空間光変調器 (SLM) を用い、試料面に照射するレーザー光のパターンを変化させる。複数の集光点を任意の位置に配置するためにSLMに与える位相パターンを計算機で求める。集光点の数が増えると、1点当たりの光強度が減少するため、微粒子の捕捉ができなくなる可能性がある。微粒子のサイズを大きくすれば捕捉は容易になるが、ランダムレーザー発振が起こらなくなる可能性がある。このため、どのくらい大きな粒子サイズまでランダムレーザーの発光が可能かを調べる必要がある。また、レーザー色素の濃度が高いと、トラップ光の吸収量が多くなり、余計な蛍光成分が増えることになる。最適な色素濃度を求めることも必要である。 同時に、発光シミュレーションにより、実験結果を検証するとともに、効率的にレーザー発振が起こる微粒子分布パターンを探索する。
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