2020 Fiscal Year Research-status Report
WPT Design Challenges for Wide Dynamic Range Operation
Project/Area Number |
20K04624
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
西川 健二郎 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (80610245)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 無線電力伝送 / 整流回路 / ダイナミックレンジ / GaN / 変調信号 / パルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,マイクロ波を用いた無線電力伝送(WPT)システムにおける主要な課題の1つである整流回路の入力電力分散特性を解決し,耐伝送環境変動に強いWPTシステムを構築するための,整流回路技術を新たに構築することにある.本年度は,上記課題を解決するために,1)回路設計技術,2)入力信号波形,3)デバイスレベルでの最適化の3つのアプローチから取り組んでいる. 1)では,簡略化した等価回路モデルから動作原理,最適負荷条件を明らかにするとともに,市販のショットキーダイオード非線形モデルを用いた整流回路を回路シミュレータを用いて解析した.また,使用するデバイスの組合せとダイナミックレンジの関係をモデル化し,ダイナミックレンジ特性の限界値を明らかにした. 2)では,各種変調信号の生成モデルを構築するとともに,シングル・シャント型整流回路を用いて,それら変調信号特性と整流回路特性の関係を明らかにした.回路シミュレータを用いてQPSK等変調信号の伝送レートと整流回路変換効率の関係を明らかにした.また,パルス変調信号(パルス波形)と整流回路動作・変換効率の関係を明らかにし,パルス変調信号に含まれる高調波信号の振幅,位相が変換効率に影響を及ぼすことを明らかにした. 3)では,GaNダイオードのデバイスモデルを用いて,デバイス構造とシングル・シャント整流回路のコシミュレーション環境を構築した.コシミュレーションにより,整流回路特性に最適なデバイス構造を明らかにすることを可能となった.最大変換効率を実現するダイオードのアクセス層の幅と厚さの最適値を明らかにするとともに,そのダイオードを用いた整流回路において,世界最高性能のダイナミックレンジ特性実現した. 本年度の研究成果はレター1報,国際会議5報(招待講演1件),研究会1報,全国大会1報である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標に対して,初年度の解析・シミュレーションモデルを構築することと,それぞれのアプローチにおけるパラメータと整流回路特性の関係を明らかにすることである.具体的には以下のような成果を得た. 1)ドハティ型,シーケンシャル型に代表される並列接続型整流回路において,両パスで使用するダイオード特性(ダイオードの閾値及び耐圧)と整流回路全体のダイナミックレンジ性能をシミュレーション,等価回路モデルを用いて明らかにし,所望ダイナミックレンジ特性を得るための回路設計指針を示した. 2)QPSK等の変調信号における信号帯域と整流回路変換特性の関係を明らかにし,入力電力に対して,変換効率がCW信号に対して改善される変調帯域幅があることを示した.また,パルス変調信号においては,パルス信号に含まれる高調波成分,特に3次高調波成分の振幅,位相が変換効率に最も影響を与えることを明らかにし,パルス波形の制御により変換効率をコントールできることを示した. 3)ダイオードのアクセス層を最適化することにより,耐圧150Vを実現するGaNダイオードにおいてRF-DC変換特性90%以上を実現できることを示した.整流回路とのコシミュレーションにより,5.8GHz帯整流回路において,ダイナミックレンジ幅30dB,最大入力電力44dBmを実現した.また,整流器のダイナミックレンジ特性を比較評価するFOMを提案した.
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Strategy for Future Research Activity |
各アプローチの解析,シミュレーションを進めるとともに,提案モデル等のプロトタイプ回路の試作・評価を実施し,提案モデルの妥当性を明らかにする.また,試作測定からフィードバックを行い,モデルの高精度化,整流回路の高性能化を進める.
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Causes of Carryover |
1)回路設計からのアプローチ,2)入力信号波形からのアプローチについてはR2年度に回路試作予定であったが,コロナの影響により,設計に遅延が生じたため,次年度回した.回路試作はR3年度に集中して行うことにより,効率的に研究を進め提案モデルの実証をR3年度中に実施できる.これにより,モデルの高機能化を当初計画より前倒しで実現できる.また,試作品の測定評価に必要な機器の調達も合わせて実施するため,前倒しの理由の一つである.
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