2021 Fiscal Year Research-status Report
液晶の分子間相互作用を活用したテラヘルツ帯で動作する液晶アンテナの高性能化
Project/Area Number |
20K04625
|
Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
伊東 良太 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (20433146)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | テラヘルツ波 / 液晶 / 水素結合 / 分子間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、テラヘルツ波による無線通信の実用化にとって重要となる「液晶アンテナ」に有望な液晶を「分子間相互作用に焦点を当て開発」することが目的である。令和3年度は、分子間相互作用として、電荷移動型相互作用やイオン相互作用に基づく液晶に範囲を広げてテラヘルツ帯で物性評価を行った。 電荷移動相互作用は、分子それぞれが電荷を帯びその結果生じる分子間力であり、液晶相の安定化や出現に深く関わる重要な効果である。本研究では、電荷移動相互作用を示す液晶として、5CB/MBBA混合液晶をターゲットとし、混合比を5CB:MBBA=100:0、75:25、50:50、25:75、14:86、0:100(重量比)と変えてテラヘルツ時間領域分光測定を行った。 その結果、「混合比50%において屈折率の増大する」、「混合比25,75%において吸収係数が減少する」、「混合比25-75%では吸収異方性が大きく」傾向が明らかになった。一方、イオン相互作用は電荷を共有するイオン間に働く力であり、イオン相互作用により発現する液晶も報告されている。本研究では、ポリエチレンイミンとステアリン酸を混合したイオン液晶をターゲットとして測定を行った。固体相、SmA相、等方相においてテラヘルツ時間領域分光測定を行ったが、屈折率、吸収係数ともに大きな変化は現れなかった。 以上の結果から、電子移動型相互作用はテラヘルツ帯での液晶の物性に比較的大きな影響を与えており、この相互作用を制御することで複屈折、損失が変化することが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は当初の計画通り、電荷移動型相互作用やイオン相互作用に基づく液晶に範囲を広げて評価を進めた。電荷移動型相互作用の影響を調べるために、混合比を変えた5CB/MBBA混合液晶を評価した。また、イオン相互作用の影響を調べるために、ポリエチレンイミンとステアリン酸を混合したイオン液晶を評価した。テラヘルツ帯での屈折率および損失はテラヘルツ時間領域分光法により評価を行った。 実験結果から、電子移動型相互作用がイオン相互作用に比べテラヘルツ帯での複屈折、損失に大きな影響を与えることが明らかになった。目的としていた、水素結合以外の分子間相互作用による発現する液晶のテラヘルツ帯での物性評価において新たな知見が得られため、当初の計画通り進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、液晶の混合により複数の相互作用を組み合わせた液晶についてテラヘルツ帯および可視光域で物性評価を行う。複数の液晶を混合することで様々な物性値の制御が可能であり、ディスプレイ開発でも混合液晶が用いられている。この手法は、分子間相互作用に基づく液晶でも有効であると考えられ、液晶の混合により複数の相互作用を巧みに組み合わせることでテラヘルツ帯の複屈折や損失が改善される可能性がある。 そこで、前年度までに得られた知見を基に様々な分子間相互作用の混合液晶を作製し、令和3年度と同様の測定法テラヘルツ帯と可視光域で評価を行う。得られた結果から、最終的に複屈折と損失が最も良い条件を見出し、液晶アンテナへの利用を目指す。
|
Research Products
(1 results)