2020 Fiscal Year Research-status Report
道路構造物に埋設された金属補強材の腐食状況を磁気で探る研究法の開発
Project/Area Number |
20K04639
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
竜田 尚希 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 助教 (30521314)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 英男 富山大学, 理学部, 客員教授 (30134993)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 補強土 / 金属腐食 / 磁気 / 維持管理 / 探査 |
Outline of Annual Research Achievements |
道路構造物に埋設された金属補強材の腐食状況の研究は,従来,一部を現地構造物より取出して行われてきた.この方法は時間も費用もかかり,また現状を変えることになるので,新たな非破壊の調査が望まれていた.本研究では,金属補強材の土中での腐食を,磁性の変化で探ることを考えた.具体的には,金属補強材の磁性の腐食による変化を実験で調べ,そして材の磁性変化に伴い,金属補強材が周囲に及ぼす磁場の大きさの変化を非破壊の磁気探査法で探る.室内実験と現地での研究から新規の研究法を開発する. 本年度は,金属補強材の室内での磁性研究のための実験法と装置の整備を中心とした.磁性研究では帯磁率測定が有効とわかったので,その装置を本研究のために整備し,有効な測定法を検討した.上述の磁性研究の道路構造物や土木分野での適用は,国内外で殆ど例はないが,類似の先行研究として,遺跡の土中に埋設されていた鉄製遺物の帯磁率調査を申請者等は行っていた.その実験データを入手でき解析を行った. また本研究の試料として,腐食による補強土壁の崩壊が報告されていた現場で,腐食した金属補強材を複数採取できた.これらは本研究の貴重な試料となる.また同補強土壁のメーカ加盟協会の協力を受けて,未使用の金属補強材を試験体として提供頂いた.防錆処理の亜鉛メッキが施されたものと,未処理のものの2種類があり,それらを室内試験用と屋外試験フィールド用に寸法加工した.以上の様に,腐食実験として,室内研究のための試料は揃い,また室内実験では第一段階の実験を行えた状況にある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述の様に,本研究のオリジナルな方法としての室内実験の準備は順調に進めることができた.実際の試料での実験・試験は行えなかったが,これはコロナ禍の移動制限等もあり使用する試料の打ち合わせと入手が滞ったことも理由である.本年度の研究期間の後半で,腐食で補強土壁の崩壊が報告されていた現場において,実際に数10年間の埋設により腐食した貴重な金属補強材を採取できた.本研究での重要な試料になる.更に,民間会社の協力で当初の予定より多くの供試体を入手できた.今後,室内と共に大学構内で予定している腐食実験も十分行える状況にある. また本研究の磁性による金属(特に鉄製品)の腐食調査として,古墳遺跡の土中に埋設されていた鉄剣等で行っていた先行研究が参考になるとわかり,その磁化データの解析も行うことができた. 以上の様に本研究は順調に進められているが,総合的に考えて計画よりやや遅れていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
野外での金属補強材の腐食実験は大学敷地で行うが,研究に適する磁場勾配の少ない地域をまず決める.磁場測定で使用するセシウム磁力計の整備は行ったが,磁気センサの高度固定や不純物付着を防ぐ工夫を今後行う.そして大学敷地の調査範囲において,磁場を測定し(標準データ取得),その後,ユンボで掘り,金属補強材(供試体)を数mの地中に複数埋める.その磁場を測定し,標準データとの差を求めて,腐食前の磁場データとする.その後,定期的に磁場測定を行い,また一部の金属材を採取して材の腐食を調べて,磁場測定の変化を対照しながら実験を進める. また室内実験では,金属補強材(供試体)の養生実験を時間や各種条件を変えながら行い,腐食金属材の試料を作る.そして,その材試料の帯磁率を1cmメッシュで測定し,帯磁率の面分布を得る.養生での腐食の進行に伴う変化を,帯磁率で継続的に調査する.腐食が進行する材は,富山大・機器分析施設(共同利用)所有のX線・金属分析装置により,一般的な腐食調査も行う.また同施設の力学強度試験器も利用して,磁性変化と力学特性の関係も調べ,定量的な検討の為の基準データの策定も試みる. 古墳遺跡の数m土中に千年以上の間,埋設されて,かなり腐食していた鉄剣等の磁化研究と,古墳表面から実施された磁気探査の結果は,本研究で非常に参考になる.このデータを精査して利用し,また研究結果の学会発表と論文による公表も行う. 今後,室内実験と大学敷地での実験・試験を併行して行い,研究を円滑に進める.
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Causes of Carryover |
当初,実施を予定していた室内試験が,コロナ禍による準備の遅れで次年度に行うことになった.その為,実験装置に用いる試料固定の持具作成やデータ解析のソフト,消耗品類の購入は次年度予算として繰り越した.また室内の腐食実験で使用する消耗品・薬品類の経費および,金属補強材の供試体を大学敷地の土中に埋設するための掘削・試料埋設の経費も繰り越した. 室内および大学敷地の土中に埋設して行う実験・試験に使用する試料は十分に収集できており,次年度は,室内と屋外フィールドの試験を同時進行で行って,研究をスピードアップして進める.
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Research Products
(3 results)