2021 Fiscal Year Research-status Report
アルカリ骨材反応を生じたコンクリート構造物の水分除去による再劣化抑制技術の開発
Project/Area Number |
20K04645
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
伊藤 始 富山県立大学, 工学部, 教授 (10553133)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コンクリート / アルカリシリカ反応 / 劣化抑制対策 / 除湿 / 湿気移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、コンクリート内部の除湿による水分移動ならびに湿度低下による膨張抑制の関係性を定量評価することである。そのために3つの課題を設定して下記のことを実施している。 【課題①(ASR膨張抑制の評価)】では、ASR膨張が内部除湿することで、どれほど低減するか、また力学特性が回復するか、の問いを設定している。ASR膨張供試体を、様々な湿度環境に置いて長さ変化率試験と強度試験を実施し、湿度・経過時間が膨張ひずみの低減や静弾性係数の回復割合に与える影響を検討した。現在までに、ASR促進劣化させ、初期膨張量を0.05%(ひび割れなし)~0.20%(あり)とした角柱供試体を、湿度環境は40、60、80、100%に置き、ひずみと質量を測定した。同環境に円柱供試体を置き、圧縮強度と静弾性係数を測定した。その結果、湿度100%を除き、ひずみと質量に減少がみられた。圧縮強度とヤング係数は、初期膨張量が0.15%程度、60%で効果的に回復した。加えて、ASR促進用のNaClが圧縮強度に与える影響を検討した。 【課題②(除湿法の確立)】では、どのような除湿法を用いれば効果的に除湿が可能か、収縮によってひび割れ幅が縮小するか、の問いを設定している。除湿孔を削孔した供試体に対して、湿度60%の乾燥空気を送風する除湿条件で、湿気移動試験を実施している。除湿孔の直径と送風の有無をパラメータに試験することで、条件ごとに除湿時間と除湿孔からの距離が内部湿度の低下に与える影響を検討した。また吸水材を封入する除湿条件の試験も実施している。 【課題③(湿度管理法の確立)】では、湿気移動と膨張挙動の予測のために解析法をどのように連携させ、入力物性値を改良すればよいか、の問いを設定している。課題②の角柱供試体と、のと里山海道の橋脚モデルの湿気移動解析を実施し、実験と解析の関係から入力物性値や解析の再現性を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況として、3つの課題が次のようであるため、全体では「おおむね順調に進展している」に区分する。 【課題①(ASR膨張抑制の評価)】については、おおむね順調である。2021年度の実験も継続している。また、2022年度に追加パラメータで実験をスタートさせる予定である。 【課題②(除湿法の確立)】については、若干遅れている。2020年度に乾燥空気による除湿法を先行し、2021年度に吸水材による除湿法を実施している。コンクリート内部の湿度低下の速度が想定よりも遅く、時間を要している。 【課題③(湿度管理法の確立)】については、当初計画以上に進展している。角柱供試体の結果を用いて拡散係数を算出した。また、仮の入力物性値を用いて、のと里山海道の橋脚モデルの解析に着手し、解析結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、3つの課題に対して次のことを実施する。 【課題①(ASR膨張抑制の評価)】では、2021年度の実験を継続するとともに、配合条件の粗骨材の最大寸法を3水準、水セメント比を2水準に変化させた角柱供試体の試験を計画している。試験では初期膨張量を0.15%、湿度60%とする予定である。これらにより、初期膨張量と除湿時湿度、配合条件の関係から、収縮ひずみ量、力学性能の回復度合い、適用範囲などを明らかにする。また、回復のメカニズムの検討をX線CT法やラインセンサスキャナ法を用いて検討する予定である。 【課題②(除湿法の確立)】については、2020年度の乾燥空気による除湿法を継続するとともに、2021年度の吸水材の試験を継続する。あわせて、2021年度に平面的な湿気移動やひずみを計測するための平板供試体(2次元)を作成したため、その計測を開始する。 【課題③(湿度管理法の確立)】については、(a)湿気移動解析と(b)応力解析を連携させた解析法を確立し、次に(c)除湿設計法と(d)湿度管理法を構築する。(a)の湿気移動モデルは2021年度までの結果の精度を向上する。(b)の入力物性値は【課題②】試験の湿度とひずみの動きを解析で再現することで決定する。(c)除湿設計法は、目標値(湿度、年数、除湿範囲、ひずみ低減量)に応じ、(a)+(b)の解析法を用いて吸水位置や吸水方法、表面被覆の有無を選定する仕組みを作る。(d)湿度管理法は、吸水孔や観測孔の予想湿度を算出する仕組みを作る。吸水材の水分量の定期的な計量も導入する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、【課題②(除湿法の確立)】において、2021年度に平面的な供試体(2次元)の計測を開始する予定であったが、吸水材による除湿法の試験で、コンクリート内部の湿度低下の速度が想定よりも遅く、時間を要したため、その着手が遅れたためである。 2021年度に平面的な供試体(2次元)の作製を完了したため、2022年度の初めに計測に着手する計画である。
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