2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K04654
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Research Institution | Fukushima National College of Technology |
Principal Investigator |
緑川 猛彦 福島工業高等専門学校, 都市システム工学科, 教授 (50249744)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 目荒らし / 吸水調整剤 / 曲げ強度試験 / 直接せん断試験 / 割裂引張試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
プレキャスト部材では部材間の継手の存在は不可避である。構造物の接合部は構造上および耐久性上の弱点となりやすいことから入念な打継面の処理が求められる。一般的に打継面は,コンクリート表面をはつるチッピングや凝結遅延剤の塗布および高圧水の噴射によるコンクリート表面層の除去が行われるが,これらの作業は比較的重労働を伴うものであり,作業の省力化の観点からは出来るだけ少ないほうが望ましい。一方,突起シートや波型を型枠に貼り付ける方法や,塗布するのみで通常の打継ぎ処理と同等の性能を確保できる吸水調整剤が開発され,様々な現場で適用されている。これらの製品は打継面の性能を向上させることは元より,作業の省力化の観点からも歓迎すべきものである。 本研究では,プレキャストコンクリート接合部における打継面処理の軽減化を目的として,目荒し深さを変化させたケースや打継面に吸水調整剤を塗布したケースについて,打継面の定量的評価や接合部のひずみ測定と共に,直接せん断試験,割裂引張試験および曲げ強度試験などの各種強度試験を実施した。その結果,本研究範囲内で以下の知見を得た。 (1)凹凸係数とモルタル部の面積率によってコンクリート打継部の目荒し状態を定量的に表現することが出来た。 (2)吸水調整剤の塗布は,打継部のせん断強度より引張強度に影響を及ぼす。その効果は特に目荒しを行わずモルタル部が多い断面について大きい。 (3)曲げ引張強度に及ぼすせん断強度と引張強度の程度は,目荒しが少ない場合には引張強度の影響が大きく,目荒しが大きい場合にはせん断強度の影響が大きい。吸水調整剤は目荒しが少ない場合の引張強度を増加させ曲げ引張強度を改善する効果がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた実験範囲である,断面の目荒らし量と吸水調整剤塗布量を変数とした,供試体の曲げ強度試験,割裂引張試験,直接せん断試験を滞りなく実施し,その結果を土木学会東北支部研究発表会,土木学会全国大会,セメント技術大会,日本コンクリート工学科技術研究発表会で報告することができている。よって,概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
コンクリート打継部における凹凸の大きさはダウエル効果に影響を及ぼす。吸水調整剤を塗布することで打継部の洗い出し処理の軽減化を達成することができると仮定すると,次はせん断力に対する凹凸度の影響が問題となる。次年度の実験範囲では,吸水調整剤塗布の有無および洗い出し仕上げの有無がダウエル効果に及ぼす影響について検討する。実験は土木学会基準 であるJSCE-G553-2013「鋼繊維補強コンクリートのせん断強度試験方法」に準拠し,打継部の凹凸度を変化させたケースおよび吸水調整剤の有無をパラメータとして直接2面せん断試験を実施することを予定している。
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Causes of Carryover |
令和2年度においては,4月の授業開始当初より新型コロナ感染症対策のための遠隔授業が開始されたことにより,実験計画が大幅に変更する必要があった。また,学会発表が中止になったりオンライン発表に変更になったことや,感染防止の観点から出張が制限されたことから旅費の使用額がゼロとなった。これらのことから令和2年度の予算を令和3年度に使用する事態が生じた次第である。令和3年度においては,実験計画に従い物品を購入するとともに,新型コロナ感染症の状況を見ながら積極的に学会発表に応募し,旅費を使用させていただきたいと考えている。
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