2020 Fiscal Year Research-status Report
Probabilistic analysis of buckling of continuous welded rail considering stochasticity in track
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20K04661
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
阿部 和久 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40175899)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 座屈確率 / 軌道座屈管理 / 初期通り変位 / ランダム波形 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,軌道の座屈温度(強度)を支配する初期通り変位波形と道床横抵抗力とを,不確実性を有する確率変数として捉え,それらのバラツキを考慮した座屈温度の確率分布を求め,座屈確率に基づいた管理値設定法を構築することを目的としている. 令和2年度の研究では,まず,座屈温度の確率分布をモンテカルロシミュレーション(MCS)により求めるための効率的解析手法を構築した.具体的には,多数生成したランダムな初期通り変位に対する軌道座屈解析より確率分布を求める計算過程を,並列計算用にコーディングし,高速化を図った. 続いて,所定の距離相関に従う定常ランダムな初期通り変位波形をKarhunen-Loeve展開により生成して,当該波形の分散および相関長を変化させつつ,MCSにより座屈温度の確率分布を求めた.なお,飛び移り座屈および最低座屈温度の確率密度関数は,有限な分布域を持つ非対称形状を有するため,当初はベータ分布を用いた近似を試みた.しかし,当該関数の次数や分布域の最適化を図っても,十分な適合度を得ることができなかった.そこで,任意の密度分布を近似可能なカーネル密度推定法による評価法を採用し,それに基づき座屈確率を求めることとした. 軌道初期通り変位波形の分散と相関長とが確率特性に及ぼす影響を調べた結果,特に飛び移り座屈温度は分散に対して鋭敏に変化し,軌道座屈管理の際にはその適切な評価が重要であることがわかった.次に,道床横抵抗力の不確実性が座屈温度に及ぼす影響を調べ,その空間変動については,座屈モード波長程度の成分が確率特性に大きく影響することがわかった.また,軌道拘束力の終局値である最終道床横抵抗力の不確実性については,その分散が座屈確率に大きく影響を及ぼすものの,飛び移り座屈温度と最低座屈温度との差にはほとんど影響しないことがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に計画していた内容を,ほぼ当初計画どおり実施することができた.なお,当初は,一般に広く用いられている確率密度関数を対象に座屈確率の適合度を評価して,最適な関数の推定を行う計画としていた.しかし,「研究実績の概要」にも述べたとおり,確率密度関数の良好な近似が得られなかったため,カーネル密度推定による方法を採ることとした. 最終道床横抵抗力が座屈確率に及ぼす影響の検討について,当初はその空間変動は影響しないものと考えられたため,検討対象としていなかった.しかし,初期通り変位波形の相関長が座屈確率に少なからず影響する結果を得たことから,空間変動の効果を確認することとした.その結果,分岐座屈時の理論モードが有する波長程度以上のサイズの変動成分が座屈温度低下に影響することが明らかとなった.また,最終道床横抵抗力の分散が,座屈確率特性に及ぼす影響について,当初計画では,確率分布の詳細な評価は次年度実施予定としていた.しかし,当該年度の研究が概ね順調に進捗したため,前倒しで実施できた. 上述のとおり,一部については当初計画から方針を変更せざるを得なかったものの,全体には順調に進めることができた.さらに,次年度計画の一部に着手・実施することができた.よって,令和2年度については「おおむね順調に進展している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に実施予定としていた最終道床横抵抗力の不確実性が軌道座屈確率特性に及ぼす影響の検討に関しては,令和2年度に既に完了した.よって,令和3年度では,当初予定していた他の課題を中心に取り組む.具体的には,一般に実施されている通り変位の10m弦正矢測定データに基づいた軌道波形管理を想定して,波形修正がなされた場合に,それが軌道座屈確率に及ぼす効果を,MCSを通して検討する. なお,10m弦正矢値が規定値以下となる様に通り変位波形を修正する際,一箇所の修正が他の箇所の10m弦正矢値にも影響するため,所定の区間全域の修正には効率的修正法が望まれる.そこでまず,当該問題を10m弦正矢の最大値に制約を課した最適化問題として定式化し,区間全体の修正量を一度に決定する効率的修正法を新たに構築する. 次に,本修正法を所定の確率特性を有するランダムな通り変位波形に適用し,その結果得られる通り変位波形を対象にMCSを実施する.さらに,最終道床横抵抗力の不確実性も考慮した場合の座屈確率を求め,10m弦正矢に基づいた軌道保守が座屈管理温度の緩和にもたらす効果について定量的に検討する. なお,令和2年度の研究を通して,1/1000程度の座屈確率の適切な評価に必要となるMCSでのサンプル数についても検討した.サンプル数増加に伴う計算負荷の軽減について,当初計画では並列計算による高速化のみで改善を図る予定としていた.しかし,より低い座屈確率を評価対象とする場合,当然より多くのサンプル数が必要となり,解析上のさらなる工夫が望まれる.そこで,特定の座屈確率以下における条件付き確率のみを適宜MCSで求めるサブセットシミュレーション法の適用を試み,計算手法のさらなる効率化を図る.
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Causes of Carryover |
令和2年度は,新型コロナウイルスの影響で,当初参加予定していた学会等が中止,またはオンライン開催となり,参加費や旅費が不要となった.ただし,その他予定していた計算機や付随するソフト等を購入した結果,次年度への繰り越し額は比較的小額なものとなった.本年度も,参加予定していた学会等がオンライン開催となるため,昨年度同様に旅費は殆ど不要と考えられる.よって,それを前提としつつも,極力当初計画に沿った使用に努める.
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