2021 Fiscal Year Research-status Report
経験的グリーン・テンソルによる震源過程の推定と強震動予測への応用
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20K04663
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
大堀 道広 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 准教授 (50419272)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上林 宏敏 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (30300312)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 経験的グリーンテンソル / モーメントテンソル / 震源メカニズム / 波形インヴァージョン / 強震動予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
M6クラスの地震は、地震国と呼ばれる日本においてはいつどこで起きてもおかしくないほど発生確率の高い地震であり、その地震動特性を精度良く再現できる地震動予測手法の開発は、地震防災においても大きな意義があり、学術的にも価値のある挑戦的な研究課題である。本研究では、経験的グリーン・テンソル法に関する基礎的研究を発展させることで、M6クラスの地震による広帯域地震動を精度良く予測する手法を開発する。さらに震源過程や地下構造の推定における適用法を提案する。
今年度は、昨年度に収集・整理を行った2005年千葉県北西部の地震の本震(M6)とその余震および震源位置が近い小地震(M3.4~5.3)の地震記録を用いて、余震記録からの経験的グリーン・テンソルの推定と、これに基づく本震のシミュレーションを行った。まだ利用する余震・小地震の選別に関して検討の必要であるものの、本震の波形を精度良く再現できることを確認した。計算波形と観測波形の一致度には観測点近傍の地盤条件も関わっていると推察されることから、現地調査および微動観測を含め地盤情報の収集を行い、考察を深めたいと考えている。
この他、研究代表者の所属先の近くで発生した2地震[2020年9月4日の福井県嶺北地方の地震(M5)、2021年8月16日の滋賀県北部の地震(M4.6)]についても、今後のM6地震による地震動の事前予測につながることや、有感地震が少ない当該地域において関心が高い地震であることを考慮し、観測記録の収集・整理を行い、余震記録に基づく経験的グリーン・テンソルの推定の試解析を実施した。計算波形と観測波形の一致度が観測点周辺の地盤条件とどのような関係性を有するかを考察する必要があり、微動観測を含め地盤情報の収集を行いたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に引き続き、今年度も新型コロナウィルスの感染予防に関連した学内諸事が多発したため、研究活動も大きな影響を受けた。例えば、研究を進める過程において、計算波形と観測波形との一致度が低い観測点における現地調査および微動観測などの必要性が判明したが、学内の行動規範からも実施困難となった。
次年度も同ウィルスへの感染予防は予断を許さない状況が続いているものの、学内外において感染対策を図った上で、社会活動を元に戻そうとする方向に進んでおり、学会や研究打合せにおけるリモート対応も進んでいることから、研究活動を充実できる見込みである。従って、次年度は研究の遅れを取り戻せると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
地震動は、震源特性、伝播経路特性、サイト増幅特性、以上の3つの特性により大きく特徴づけられるとされている。昨年度、多数の地震観測記録を収集・整理する中で、 堆積地盤上の観測点に占めるサイト増幅特性の寄与の大きさを強く感じさせられた。強震動予測には上記の3特性を適切に評価する必要があるが、経験的グリーン・テンソルにはすでに3つの特性が全て含まれており、多様な地盤条件に対して強震動予測を行う上では非常に有効な方法であることを示すことができる。
一方、研究成果を発信する上では、計算波形と観測波形の一致度がどのような地盤条件に依存するか示す必要があり、その点の検討がまだ十分ではないために、研究成果を発信するまでには至らなかった。地震動予測の結果を詳細に検討するとともに、地盤情報を収集するための現地調査および微動観測も行う予定である。また、実際の地震観測記録は限られた地点でしか得られていないため、これを補完するために、3次元有限差分法による数値計算波形を観測波形とみなし、経験的グリーン・テンソルの推定における地盤構造の影響を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度に続き、今年度も新型コロナウィルスの感染拡大により、当初予定していた学会参加がなくなったこと、2020年9月に福井県嶺北地方において57年ぶりの震度5弱の揺れを地震が発生したため本研究課題に関連の深い震源近傍の記録を得るために余震観測を実施したこと、研究を進める過程で研究課題の目的を達成する上で観測点周辺の地盤条件の重要性を認識したこと等々により、当初の研究計画とは異なる予算執行に至った。次年度は、観測記録を解釈するために現地調査および微動観測を含む地盤情報の収集を行い、当初の研究計画を実施するために研究費を使用する計画である。
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