2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on Detoxification of Hexavalent Chromium and Strength Enhancement in Cementitious Soil Using Waste Syrup
Project/Area Number |
20K04684
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
吉田 秀典 香川大学, 創造工学部, 教授 (80265470)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地盤改良 / セメント系改良材 / 六価クロム / 無害化 / 廃シロップ |
Outline of Annual Research Achievements |
地盤改良等では,セメント系材料が多用されるが,セメント系材料はその製造過程において六価クロムを含むため,地盤に投入されてから固結するまでの間に,六価クロムが溶出し,地盤や地下水を汚染する可能性がある.近年,自然災害等が増加し,地盤改良のニーズが増えていることに加え,国の六価クロム化合物に係る水質基準が厳しくなる予定であることから,六価クロムをより廉価で無害化でき,かつ,改良される地盤の強度を低下させないという両リクエストを満たす必要が有る. そこで本研究では,糖類には還元能力があること,さらに,わが国では,賞味期限が切れた廃シロップは大量にあることに着眼し,本研究では,廃シロップをセメント系材料に混合することで,低コストで六価クロムを無害化し,かつ,地盤改良に要求される所定の強度を満たす,あるいは強度が増すような配合等を検討すると同時に,六価クロムの無害化と強度増加のメカニズム等も明らかにすることを目的とした. セメント改良土に対する混和材としての廃シロップの有用性を検証するために,強度試験と六価クロム溶出試験を実施した.供試体の作製は,日本セメント協会規格の「セメント系固化材による改良体の強さ試験方法(JCAS L-01:2006)」に従って実施した.強度試験は土の一軸圧縮試験方法(JIS A 1216)に従って,また,六価クロム溶出試験は環境省告示46号の溶出試験の手順を参考に行った.また,溶出した六価クロムの濃度は吸光光度計を用い,ジフェニカルバジド法にて分析した. 強度に関しては,廃シロップを混和した供試体の強度がおよそ40%上昇した.強度増加の要因としては,グルコースの酸化物質であり,減水材としての機能を有するグルコン酸や,廃シロップが有する粘性の関与が考えられる.溶出試験では,廃シロップを混和した供試体からの六価クロムの溶出量は低減していた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では,地盤改良に多用されるセメント系材料に含まれる六価クロムを低コストで無害化すると同時に,土壌汚染の元となるセメントそのものの投入量を減らしつつも必要強度の確保を可能とする手法の開発を目的としている.具体的には,前者の目的を達成するために,糖類の一部(グルコース、フルクトースなど)が還元作用を有すること,かつ,全国の缶詰工場だけでも年間約30,000トンのシロップ液が廃棄されていることに着目し,廃シロップを利用して超低コストで六価クロムを無害化することとした.また,第2の目的を達成するために,廃シロップを添加した改良土等の強度向上を目指すこととした. この2つを本研究の最終目的としているが,初年度において,第一の目標である廃シロップが六価クロムを低減することは明確に確認できており,また,廃シロップを添加した地盤改良土の強度が増していることも,概ね確認している. したがって,現在までの進捗状況としては,「当初の計画以上に進展している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,地盤改良に多用されるセメント系材料に含まれる六価クロムを低コストで無害化すると同時に,土壌汚染の元となるセメントそのものの投入量を減らしつつも必要強度の確保を可能とする手法の開発を目的としているが,強度試験(一軸圧縮試験)の結果,Blank供試体(混和剤無使用供試体)に対し,廃シロップを混和した供試体の強度がおよそ40%上昇した.一方で,糖類を単独で混和した供試体のでは強度増加は確認されなかった.強度増加の要因としては,グルコースの酸化物質であり,減水材としての機能を有するグルコン酸や,廃シロップが有する粘性の関与が考えられる.現時点で,強度増加のメカニズムについては明確に出来ていないことから,今後,さらなる照査が必要である. 溶出試験では,7日養生のBlank供試体(混和剤無使用供試体)からは土壌環境基準値(0.05ppm)を超える六価クロムが溶出しているが,廃シロップを混和した供試体では,Blank供試体(混和剤無使用供試体)に対して50%以上六価クロム溶出量が低減している.これは,廃シロップに含まれるグルコースなどの単糖類(還元糖)が六価クロムが三価クロムに還元したためだと考えられる.単糖類であるプシコースやグルコースにおいても溶出低減効果は確認されたが,廃シロップが最も高い溶出低減効果を示した.今後は糖と六価クロムとの反応における共存物質の影響などの調査が必要である.
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Causes of Carryover |
2020年度は,年度を通してコロナ禍にあり,一度も情報収集等の出張が出来なかったため,そのために計上していた30万円はほぼほぼ未使用ということになったため.
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Research Products
(4 results)