2021 Fiscal Year Research-status Report
消波護岸の波浪による摩耗プロセスの解明とその抑止システムの構築
Project/Area Number |
20K04697
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
木村 克俊 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (70322873)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 消波護岸 / 波浪 / コンクリート摩耗 / 超高強度繊維補強コンクリート / ハイブリッド型防護工 |
Outline of Annual Research Achievements |
直積ブロック式護岸については,国道336号えりも町荒磯海岸を対象として,令和2年度に調査を行い,最下段のブロックにおいて5~8cm/年で摩耗が進行していることを明らかにした.応急復旧としては,欠損した部分にコンクリートを充填し,表面を超高強度コンクリートパネルで被覆する工法が採用された.令和3年度には,施工後4年経過した段階での変状調査を行い,目地部における洗堀の発生メカニズムについて水理模型実験により検討した. スリット式護岸については,国道229号岩内町雷電海岸において,施工後およそ30年経過した施設で,摩耗によりコンクリートのかぶりが消失し,鉄筋が露出している箇所がある.令和2年度は,スリット部の経年変化を整理するとともに,近隣の波浪および潮位の観測データを用いて,摩耗速度を推定した.さらに,顕著な摩耗が発生した断面を水理模型実験により再現し,波浪による粗石の連行メカニズムを明らかにした.以上の結果から波浪によるコンクリート部材の摩耗速度を算定した.令和3年度には,スリット部材の補強に用いる「ハイブリッド型防護工(ステンレス板をゴム部材で被覆した構造)」への粗石の衝突力について水理模型実験により再現した.さらに鋼製桟橋に敷設された同一形式の防護工の変状事例を分析した. 消波ブロック被覆型護岸については,令和2年度に,国道453号支笏湖湖岸道路を対象として,消波ブロックの変状に伴う越波増大による通行障害事例について分析した.さらに現地における代表的な護岸断面を水理模型実験と数値解析で再現し,消波ブロックの被災特性を明らかにした上で,摩耗対策として設置する法先の方塊ブロックの必要質量を明らかにした.令和3年度には,急斜面に続くリーフ地形における消波ブロック被害について水理模型実験により検討し,こうした条件では消波ブロックの摩耗が急激に進行する可能性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で対象とした3種類の消波護岸のうち,直積ブロック式護岸およびスリット式護岸については,当初計画どおり,令和2年度に現地における摩耗事例の分析し,令和3年度に応急復旧工法について検討を行った. 消波ブロック被覆型護岸については,令和2年度に消波工法先部の変状防止を目的とした方塊ブロックの安定性評価を先行し,令和3年度に粗石を連行した波浪による摩耗速度の算定を行った.これらの検討で標準的な海底勾配についての知見は得られたが,急勾配海底条件においては摩耗の進行がさらに速いことが明らかとなった.このため令和4年度に急勾配海底条件に対応した検討を行うこととした. 以上のように年度ごとの研究テーマの一部入れ替えや追加を行ったが,研究全体としては,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は研究最終年度として,スリット式護岸,直積ブロック式護岸および消波ブロック被覆型護岸について,恒久的な摩耗対策工法の提案を行う. スリット式護岸の補強工法については,国道229号神恵内村沼前海岸で採用を予定している「ハイブリッド型防護工(ステンレス板をゴム部材で被覆した構造)」を対象として,その設計外力を求める.さらに摩耗被害を軽減できる構造形式として円柱スリット式護岸の基本的な設計法の提案を目指す. 直積ブロック式護岸については,国道336号広尾町モイケシ海岸の補修工事で使用された「超高強度繊維補強コンクリートを用いた補強工」について変状調査を実施する.さらにこれまで得られた変状調査結果を分析し,当該コンクリートの摩耗抑止効果を検証する. 消波ブロック被覆型護岸については,現地において摩耗被害が顕著となっている急勾配海底条件を対象として,粗石を模した球体による消波ブロックへの衝突を再現し,各種波浪条件に対して摩耗速度を算出する.さらに,消波工法先部の変状防止を目的とした法止めブロックの必要質量の算定法の確立を目指す. 以上の検討結果に基づいて,我が国において主要な3種類の消波護岸を対象として,礫性海岸に建設する場合の費用対効果を分析し,地形条件や波浪条件ごとの最適な構造形式を明らかにする.
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Research Products
(3 results)