2022 Fiscal Year Research-status Report
沿岸海洋防災のための高分解能海洋予測・観測に関する研究
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20K04708
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
久木 幸治 琉球大学, 理学部, 教授 (60305183)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 波高 / 波浪気候 / 漂流ブイ / 自己組織化マップ / 東シナ海 |
Outline of Annual Research Achievements |
波浪推算の検証にはブイデータが必要である。特に流れが強い海域では漂流ブイによる観測が有効である。また波浪再解析データは波浪防災の評価にとって有用な資料である。そこでERA5波浪データとブイデータの差の、表面流速依存性を評価した。ERA5の波高は、平均波向に対して対向する流れの場合は顕著に過小評価される。一方、平均波向に対して追随する流れの場合は波高が過大評価される。それらの大きさは最大で20%にも及ぶ。ERA5データと漂流ブイの波の周期も対向流れの場合と追随流の場合で差異があることを示した。 次に東シナ海を対象とした波浪研究を行った。東シナ海は太平洋に面しており、うねりの影響を受ける。ERA5再解析データを用いて、うねり波高と風浪波高分布の変動を検討した。また、EOF解析に加え、SOMにより波高偏差の変動を検討した。 東シナ海でSOMとEOFの両方、あるいはどちらか一方だけで検出できる現象は何かを明らかにした。波高偏差のEOFの第1モードと第2モードの固有ベクトル分布図に対応するSOM配列のパターンが確認された。しかし、うねり波高偏差の主要なSOM配列のパターンには、EOF解析では見いだせなかったパターンも存在した。最も主要な波高偏差の分布は、特に夏季に頻度が高い。うねり波高偏差の最も主要なSOMパターンの頻度とEOFの第1モードはともに、うねり波高の増加傾向を示している。風速偏差パターンの最適領域を、東シナ海のうねり波高偏差パターンと最もよくリンクするように決定した。東シナ海のうねり波高偏差パターンと風速偏差パターンの関係は、季節によって変化する。また一部の気候変動指標と波高偏差のEOF時間係数は相関がある。 特に、夏のENSO指数とうねり高さ偏差EOF第1モードとの間には高い相関がある。これは、ENSO期間中にうねり波高が高くなることを示す。以上の内容の論文を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
漂流ブイデータによる再解析データの評価は本研究の基礎となるものでその点は評価できる。また東シナ海の波浪研究に関して進めたのも評価できる。しかし波浪推算モデルの検証及び海洋レーダによる波浪推定に関する研究はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した海洋レーダによる波浪データの検証に関する成果を論文として出版できるようにする。また東シナ海の波浪再解析データを解析した結果,再解析波高データと現場観測データの長期変化の傾向が異なっていることがわかった。この問題は防災のための波浪再解析データの活用にとって重大であると考える。そこで高分解能な波浪推算モデルによる波浪データの長期変動を検証する。また日本周辺海域を中心とした高分解能海流データの解析も行う。
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Causes of Carryover |
コロナによって予定していた海外学会へ出席が出来なかった。また一部作成が間に合わなかったプログラムもあり、それを動かすには、新しくバージョンアップされた計算機を使用した方が良いと判断した。 2023年度は計算機の購入を予定している。また海外学会で研究成果の報告を予定している。
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Research Products
(8 results)