2021 Fiscal Year Research-status Report
Impacts of High-speed Rail Development on Regional Innovation
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20K04717
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 浩徳 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (70272359)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高速鉄道 / 地域イノベーション / 特許出願数 / 日本 / ケーススタディ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,高速鉄道を対象とし,その整備が地域イノベーションに与える影響の有無とその因果効果を分析するとともに,その因果が生じるメカニズムを解明することにより,今後の我が国における新幹線整備ならびに新幹線技術の海外展開に向けて政策的示唆を得ることを目的とする. 今年度は,昨年度の国際比較分析に続いて,高速鉄道の地域イノベーションに与える影響把握を目的に,我が国を対象とした事例分析を行った.ここでは,1976年から2016年までの過去40年間を対象に,我が国の1,741市区町村をカバーするパネルデータを用いて,実証分析を行った.この分析では,市区町村レベルの特許出願件数が各地域のイノベーションを表すものと考え,市区町村の特許出願件数が負の二項分布に従うものと仮定した.高速鉄道の新規導入が地域のイノベーションに与えるインパクトを,複数年を対象とする差の差分析(Difference-in-differences analysis)を適用して統計的に推定した.その結果,高速鉄道開発が開発地域のイノベーションに統計的に有意に正の効果をもたらすことが示された.ロバストネス分析のため,傾向スコアマッチングを活用した差の差分析や操作変数法を用いた分析なども行い,分析結果の頑強性が確認された.また,分析の結果より,人口規模の小さい地方部における高速鉄道の地域イノベーションに与えるインパクトは,大都市部におけるインパクトよりも有意に大きいことも示された.これは,高速鉄道整備による地域間コミュニケーションの機会増加が、労働者数の少ない地方部において地域イノベーションを促進する上で重要な役割を果たす可能性のあることを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,高速鉄道の地域イノベーションに与える影響を多様な観点から分析することを目的としているが,今年度は,高速鉄道導入によるイノベーションへのインパクトについて,我が国を対象とした事例分析を行った.その結果,有益な分析結果ならびに政策的示唆を得ることに成功した.その知見は,タイのコンケン大学(2021年11月開催)やインドネシアのインドネシア大学(2022年3月開催)における海外招待講演でも披露され,高速鉄道整備に関心のある現地専門家から大変高い評価を得た.また,関連する知見は,高速鉄道導入を検討中のインドでもHigh Speed Railways Innovation Centreの主催するセミナーでの特別講演(2022年1月開催)で発表され,出席者から強い関心を集めた.さらにその後,成果の一部は,交通分野の一流国際誌であるTransportation Research Part A: Policy and Practice誌(IF=5.594)にも掲載された.以上より,二年目の成果としては,当初予定通りの成果が得られたと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,2021年度の成果をもとに我が国のデータを用いて,新幹線駅の設置や新幹線によるアクセシビリティの変化が地域イノベーションに与えた影響に関して,より詳細な分析を行う予定である.特に,産業種別によるイノベーションへのインパクトの違い等に着目した分析により,高速鉄道のイノベーション向上メカニズムの解明を目指す予定である.2021年度までは,新型コロナウィルス感染対策のため専門家へのインタビューや,学会等の参加において不便が生じていたが,オンラインでの会合等を通じてなんとか工夫していた.2022年度はそのような問題が改善されるものと期待している.
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Causes of Carryover |
今年度は,研究成果の発表と最新の研究動向収集のため米国等で行われる国際学会への出席を想定していたが,新型コロナウィルス蔓延のため,国際学会への参加を断念せざるを得なかった.次年度は参加することで研究成果の発表および情報収集を行うことを予定している.
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