2021 Fiscal Year Research-status Report
スマートフォンのセンサー性能限界を乗り越えて実現する自転車事故トリアージシステム
Project/Area Number |
20K04729
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
大賀 涼 科学警察研究所, 交通科学部, 室長 (50392262)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
槇 徹雄 東京都市大学, 理工学部, 教授 (20465363)
中山 功一 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (50418498)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自転車 / 交通事故 / 事故自動通報システム / シミュレーション / 機械学習 / トリアージ |
Outline of Annual Research Achievements |
市販のスマートフォンは、各種センサーの性能やデータ処理の仕様がまとめられた資料が存在しない。これは昨今の電子製品は最低要件を満たせば、個々の部品の性能に関わらずに商品化が可能なためである。そのため本研究を遂行するためには、スマートフォンの機種ごとに性能などを把握する試験を独自に行う必要がある。 昨年度は加速度センサーの性能限界を把握するための試験方法として、落下衝撃試験を採用した。今年度はスマートフォンを台車に固定し、衝突子により台車ごと衝撃を与える打撃試験へと変更した。これにより衝撃の入力方向を固定して、XYZ軸のそれぞれを検証することが可能となった。 トリアージ用アルゴリズムにおける性能限界を規定する阻害要因の検証を行った。例えばアルゴリズム内でサンプリング周波数を低く設定すれば、ハードウェアの性能限界より劣ったデータでトリアージを行うことになる。このような阻害要因を検証し、ハードウェアの性能限界を引き出せるアルゴリズムであることを確認した。 今後のCAEのためのモデル作成を目的として、人体ダミーHybrid-IIIAF05による自転車事故再現実験のデータ蓄積を行った。出会い頭事故を想定し、15km/hで走行する普通乗用車を自転車側面に衝突させた。高速度カメラ及び人体ダミー内部の加速度計により衝突挙動及び路上への転倒・滑走の挙動を収集した。また実験時にトリアージ用アルゴリズムをインストールしたスマートフォンを人体ダミーに保持させたところ、衝突を検知しなかった。これは軽傷事故を峻別するトリアージの可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実車衝突実験の実施が低調なため、研究が遅れている。実験では東京都にある東京都市大学から研究協力者を含めた参加者が、実験施設のある千葉県に参集する必要がある。昨年度に引く続き、東京都および千葉県は新型コロナ感染症対策のため、事業の自粛が求められたことから、実験期間の確保が困難であった。実験データの収集の遅れから、後段の各種研究も延期している。 またスマートフォンの性能限界は販売元でも把握されておらず、その計測作業が追加されたため、計画の遅延が発生している。
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Strategy for Future Research Activity |
スマートフォンの性能限界の把握において、計画時に想定されなかった様々な課題が発生している。そのため当面は打撃試験に注力する必要がある。 打撃試験と並行して交通事故再現実験やシミュレーションモデルの作成の習熟をすすめ、スマートフォン側の準備が整い次第、迅速に行えるように準備をする。特に交通事故再現実験では人員7名を必要としたが、計測機材の改良、実験手順の改善により人員5名まで削減することで実験回数の増強を行う方針である。
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Causes of Carryover |
計画に比べ実験実施状況に遅延が発生している。理由は以下の2点である。 1点目は新型コロナ感染症対策である。交通事故再現実験では多くの人員が参加する必要がある。そのため東京及び千葉の感染状況に応じて実験回数を減じる必要があった。 2点目はスマートフォンの性能限界を把握するため、追加の検証が発生したためである。 以上の課題に対して対策を進めており、実験等を進める予定である。
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