2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K04740
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
宇都宮 浄人 関西大学, 経済学部, 教授 (70334589)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地域公共交通 / 費用便益分析 / 社会的便益 / ソーシャル・キャピタル |
Outline of Annual Research Achievements |
地域公共交通の広義社会的便益について、費用対効果の考え方を整理のうえ、「交通まちづくの費用対効果-費用便益分析の意義と限界」『ていくおふ』No.160(ANA総研)を公刊し、費用便益分析の限界を指摘した。また、地域公共交通のソーシャル・キャピタルへの影響に関する従前の実証結果を踏まえ、'The impact of regional railways on travel behaviour and social capital' Research in Transportation Economics, を公刊し、ソーシャル・キャピタルへの影響が大きいこと等を述べた。さらに、そうした自身の研究成果も中心に、これまでの議論や実証結果を整理して、『地域公共交通の統合的政策:日欧比較からみえる新時代』(東洋経済新報社)を公刊し、地域公共交通政策における社会的便益の重要性と現時点での政策の方向性を述べた。このほか、「都市と公共交通の統合的政策のために~公共交通にPSO制度の導入を~」『新都市』75巻2号 を公刊し、地域公共交通の広義便益の存在を前提とした場合の、政策の方向性を述べた。 一方、関西鉄道協会都市交通研究所の委員会での研究成果の一部も「沿線住民の鉄道事業に対する期待と満足」(共著)『交通学研究』第64号として公刊し、地方圏においても、鉄道が沿線住民にとってまちの魅力に影響があるものと期待され、移動手段に止まらない価値があることが示唆されることを述べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
第1に、新型コロナ感染症の影響により、各地に出向いての沿線住民アンケートにかかる作業がほとんど進捗しなかったほか、当初調査を予定していた沿線住民の行動自体が、特殊な状況の下では結果が歪む可能性もあり、調査内容そのものも見直しが必要となった。 第2に、宇都宮ライトレール沿線での調査については、新型コロナ感染症の影響でライトレールのプロジェクト自体が延期になり、開業前後の調査も後ろ倒しせざるを得ない状況になった。 第3に、海外の調査についても、新型コロナ感染症が拡大する状況を踏まえ、調査の是非も含め再検討が必要な状況となった。
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Strategy for Future Research Activity |
引続き文献調査を行う一方、国内のアンケート調査については、新型コロナの感染状況が落ち着くと見込まれる3年度後半以降に実施する方向で準備を進める。また、当初の本研究の具体的な調査は、人間的なつながりや接触に重点を置いたソーシャル・キャピタルに重点を置いていたが、児童の時間価値をアンケート調査に組み込むことで、従来の計測で把握できていない地域公共交通の社会的便益を計測することを試みる。また、そうした調査を踏まえ、同様の調査が海外において可能かどうかの検討も進める。
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Causes of Carryover |
当該年度においては、新型コロナ感染症の影響によりアンケート調査の準備等ができなかっため、これを次年度に実施するため、次年度使用額が発生した。 次年度には、アンケート準備のための旅費、アンケート通信費に使用する計画である。
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