2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K04740
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
宇都宮 浄人 関西大学, 経済学部, 教授 (70334589)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地域公共交通 / 費用便益分析 / 社会的便益 / ソーシャル・キャピタル / 脱炭素 |
Outline of Annual Research Achievements |
地域公共交通の広義社会的便益について、カーボンニュートラルやMaaS(Mobility as a Service)など最近の動きを踏まえつつ、先行研究を整理した「脱炭素社会の公共交通政策」「地方圏の鉄道の役割と課題」を共著書『脱炭素社会に向けた都市交通政策の展開』の2つの章に収録する形で5月に公刊した。また、この著書をベースに令和4年3月には、「カーボンニュートラルシンポジウム 脱炭素社会を目指した都市交通政策」(日本交通政策研究会と関西大学の共催)を実施した。これらの研究を通じて、人々の行動や環境面において地域公共交通がもたらす社会的便益を示すことができた。 また、「LRT再考ーオーストリアの事例分析を踏まえて」『同志社商学』第73巻第2号(同志社大学商学会、9月公刊)では、以前行ったオーストリアの調査結果等も踏まえつつ、地域公共交通の中でも、日本において整備が遅れているLRTに焦点を当てながら、ソーシャル・キャピタルへの影響など、その社会的便益を論じた。 さらに、「公共サービスとしての都市地域交通ーPSO制度導入に向けて-」」『都市と公共交通』第45号(大阪公共交通研究所 6月刊)、「脱炭素社会に向けた交通政策とまちづくり」『国際文化研修』第119号(全国市町村国際文化研修所10月刊)においては、欧州における事例なども踏まえながら、地域公共交通を有効活用する運営制度や政策を整理し、これを紹介することで、日本の今後の地域公共交通政策の方向性も提示した。 このほか、地域公共交通の効果分析の基礎資料として、ひたちなか市の協力を得て、ひたちなか海浜鉄道沿線住民に対し、子供の時間価値に関するアンケート調査を実施した。また、ウィーン工科大学と共同で、オーストリアにおける地域公共交通のサービス水準の実態と詳細な人口や地理情報のデータ整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
第1に、新型コロナ感染症の影響が続き、各地に出向いての沿線住民アンケートにかかる作業が予定どおり進捗しなかった。 第2に、宇都宮ライトレール沿線での調査については、新型コロナ感染症の影響でライトレールのプロジェクト自体が延期になり、開業前後の調査も後ろ倒しせざるを得ず、2年遅れで調査をすることになった。 第3に、海外の調査についても、新型コロナ感染症が拡大する状況を踏まえ、当初の調査内容を変更し、新たな方向性の研究を模索することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
国内のアンケート調査については、新型コロナの感染状況をみながら、再度調査が可能かどうかを現地に打診のうえ、作業を進める。また、社会的便益を測定するうえで重要な時間価値について、今年度実施したひたちなか海浜鉄道沿線の子供の時間価値に関するアンケート調査結果を分析のうえ取りまとめる。 一方、海外における調査も、地域公共交通のサービス水準が地域にどのような影響を及ぼしているかという観点で、オーストリアにおける地域公共交通のサービス水準のデータ整理を開始しており、こちらについても分析のうえ、取りまとめを行う。
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Causes of Carryover |
当該年度においては、新型コロナ感染症の影響によりアンケート調査が一部しか実施できず、海外における調査もできず、学会もオンライン実施、国際会議も延期されたため、これらを次年度に支出することにした。 次年度は、アンケート調査の実施と集計、国内外での学会の参加に使用する予定。
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