2020 Fiscal Year Research-status Report
自然環境要因の変動を考慮した汽水性二枚貝ヤマトシジミの環境ストレス評価手法の構築
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20K04744
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
藤田 昌史 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (60362084)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Corbicula japonica / 酸化ストレスマーカー / 開閉運動 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度の研究計画では、1)ヤマトシジミの開閉運動の評価手法の構築、2)自然環境要因の変動下におけるヤマトシジミの環境ストレス応答の評価の実施を予定していた。 1)については、ヤマトシジミに磁石とホール素子センサを付けて開閉運動を連続測定し、その評価方法を検討した。磁石とホール素子センサの距離と電圧の関係式を個体ごとに準備することにより、開殻距離を求めることができた。ヤマトシジミを都市下水(5倍希釈)に曝露したところ、開殻距離や開殻率には変化は見られなかったが(p>0.05)、開殻頻度は上昇し(p<0.05)、一回あたりの開殻時間は低下した(p<0.05)。つまり、実験期間中に開殻していた合計時間には変化はないが、一回ごとの開殻の時間は短くなり、開殻の回数は多くなることがわかった。ヤマトシジミの環境ストレスを評価するうえで、開閉運動は有用であり、開殻頻度や一回あたりの開殻時間は有効な指標となることが見出された。 2)については、水温T(20, 25℃)、塩分S(5, 20psu), 飼料環境F(0.5, 2.0mgSS/ind/d)として、T, S, F, T×S, T×F, S×F, T×S×Fの各条件にヤマトシジミを曝露し、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)、酸素ラジカル吸収能(ORAC)、過酸化脂質(LPO)の応答を調べた。主成分分析を行ったところ、各条件のバイオマーカーの応答はグループⅠ(20℃)、グループⅡ(20℃, 5psu)、グループⅢ(25℃, 20psu)に分類され、グループⅠからⅡではSOD, CAT, ORACが著しく減少し、グループⅡからⅢではORACとLPOの上昇が顕著であった。つまり、汽水域の水温、塩分、飼料環境はヤマトシジミの環境ストレス応答に影響を及ぼすことから、人為的な影響を評価する場合にはこれらの自然条件を考慮する必要があることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画で予定していた二つの検討内容は問題なく実施することができ、順調に研究が進んでいる。また、審査付論文二編、国際会議論文一編を公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度(二年目)は、当初の計画どおり以下の二つの内容を検討する。 1)ヤマトシジミの成長力と脱水素酵素活性の関係評価 成長力は、研究上では非常に有用な指標ではあるが、ヤマトシジミを採取後にすみやかに試験を実施しなければならず労力も要する。したがって、モニタリング実務での利用は難しい。そこで、個体内のエネルギー利用可能状況の指標となる脱水素酵素活性(NADH)を代替指標として検討する。成長力が抑制されるということは、個体内で利用可能なエネルギーが相対的に少なくなると考えられる。そこで、両者には負の相関があることを想定して、実験データを整理する。そして、脱水素酵素活性の有効、限界を明らかにする。 2)ヤマトシジミの環境ストレスの分子レベル・個体レベルの応答機構の解明 酸化ストレスマーカーや成長力に負の影響を及ぼすことが知られているアンモニア態窒素や生物学的排水処理では除去できない多環芳香族炭化水素類に着目する。そして、分子レベル(酸化ストレスマーカー、NADH)と個体レベル(開閉運動、成長力)の環境ストレス応答機構を明らかにする。また、環境ストレスの限界耐性を別途求め、それに対する自然環境要因、人為環境要因の寄与を推定する手法を検討する。
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Research Products
(4 results)